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ソロの決意

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 スっと手に持っていた紙切れを頭上に翳す。

 この券は見覚えがある。

 六桁の番号が書かれた本当の紙屑だ。

【欲しい物が必ず当たる】を謳い文句にリアルにあるぼったくりなお店も真っ青のショボイ物しかでないアイテム引換券。

 この券が出るガチャボックスをひっくり返す程に回さないとお目当ての物は出ない仕様になってる。

 欲しい物の十倍の金額を出してやっと欲しい物が手に入る。

 誰もやらないだろうクソガチャ。

 こんな物を渡して俺との縁を切るとはサクヤも随分と仲間想いな奴だ。

「クソッ!」

 地面を蹴り言葉を吐き捨てる。

 クランを大きくする為に足手まといと言われた俺だって頑張ってきた。

 愚痴を聞き、時には鼓舞し、クランバトルに勝利して笑いあった数なんか数え知れない程にある。

 そこら辺の奴よりも寝る間も惜しんでプレイヤースキルを磨いてきた。

 小級の頃からクランを組み何年も……アイツらと一緒にいた。

 仲間の絆やらを熱く語った事すらあったな。

 なのに残ったのはこの紙切れ。


 フフっと乾いた笑いが出る。


 グシャッと紙切れを握りつぶす。


『覚えてろよ』


 俺のちっぽけなプライドなのか。

 何度も何度も何度も心に刻む。

 このやるせない自分の中の何かが壊れそうになるのを必死で堪え、楔の様に言葉を刻む。


 そして思い切り紙切れを地面に叩き付けた。


【ランダム転送を試みます】


 円状のリングが無数に下から上へと俺を囲む。

 困惑する俺はハッと紙切れを見つめる。

 国から国に移動するには莫大な金が必要だ。

 それは頭の中にあるがそれを簡単に成立させる最悪なレアアイテム。

【片道切符】

 目を見開き、どうやってこのリングから脱出を試みようかと周囲を見渡す。

 嘘だろ、嘘だろ、嘘だろ。

 このゲームで良く使われる手だが嫌な奴の為に大金を払ってこの片道切符を買う奴はいる。

 そして強制的に国から追い出すのだ。

 クランに属せなくても新しく俺がマスターのクランを作れば良いだけだが。

 国を移動するのには一ミリもメリットがない。

 ここで使える金はこの国しか使えない。

 もちろん手持ちの金は全てこの国でしか使えないし、その国の金でしかリアルに換金も出来ない。

 だからこそ国移動する奴はまず行きたい国の金を交換するのだが、俺にもうそんな時間はない。

 今までこのゲームに注ぎ込んだ時間は全て無に返す。


 ここまでするのか。

 足を引っ張った俺の顔を見たくないし、リアルでも死ねよと。

 カタンと全ての力が抜けて膝をつく。

 下を見るとポツポツと片道切符が濡れている。

 今日は晴天なのに可笑しいな。そんな奇天烈な事まで頭をよぎる。

 歯を食いしばり、拳を握りつぶす。




 目を瞑り瞬く間に見慣れない街並みに変化した。

 どこかも分からない国。

 這いつくばって涙で顔を濡らす俺を、誰もが遠目から見ている。

 地面を再度見るとスゥッとチリチリになるエフェクトを残して役目が終わったと消える紙を見ながら思う。


『こんな事になるなら最初から一人の方が良かった』


 俺は地面を殴りつけた。

 ゲームなのにと拳を見ると赤い粒子になったエフェクトがチラチラと目に入る。

 痛みも感じる程の再現度だが。

 今は拳の痛みよりもダメージを受けてないはずの胸の中心をズキズキと抉られる痛みを感じた。

 

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