今日もひとりぼっちの能力者は憧れだった空奏の魔術師を殺す

くらげさん

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第1話 空奏の魔術師

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 響き渡る声は空夜に溶けて。

 青の頂きを白と金の装飾が彩る。

 人々は争い、誰かが助けを乞うた。

 その誰かじゃなく、誰もが救済される。

 そんな魔法を実現する人達を、皆はこう言った。


『空奏の魔術師』


 僕が憧れて目指した頂き。

 世界各国の有名な空奏の魔術師が勢揃いだ。

「反逆者! アレを何処に隠した」

 僕が憧れた空奏の魔術師に視線をぶつけられている。

「人を物扱いか? そんな奴らに彼女を渡せる訳ねぇだろ」

 ピリつく雰囲気に時が止まる。

 仕掛けてきたと思う瞬間には遅い。

 時止めはレアスキル。

 僕は一歩も動けず、刀で斬られた事を認知する間もなく。

 目を開けると斬り飛ばされた事実だけが残る。

 痛みを残して傷から大量の血が流れる。

 凄く痛いな。痛いよ。

「お前が勝てる可能性は何処にもない、大人しく投降しろ」

 その物言いに笑いが込み上げる。

「何がおかしいんだ」

「お前の次の言葉が分かりすぎて笑いが出てくる。命だけは助けてやる……か?」

「あぁ」

「お前らが物扱いした奴が笑えねぇ世界で生きてたって意味がねぇだろうが!」


「なら死ね反逆者が」


 未来に起こる全てを帳消しに出来る程のスキルを持つ彼女。ノーマルスキルからアブノーマルに転換しただけでこうも人生が変わるのか。

 周りから妬まれ、国から恨まれ、世界から狙われる。

 僕はただのノーマルスキル所持者。レアスキル持ちで、空奏の魔術師と持て囃されるコイツらとは強さの次元が違う。持って生まれた才能がここまで優劣をつける世界。

 悔しい想い、悲しい思い、希望は重い。

 僕に世界が変えられるのか。

 変えられるのは昼ごはんのランチのメニューと、道端の石ころを蹴るぐらいしかこの世界を変えられない。

 反逆者? 僕は空奏の魔術師に憧れていただけのタダの一般人だ。

 大した事ない、僕が見える世界をただ救うだけだ。ビビるな。

 また君は僕の姿を見て泣くんだろうか、僕は笑って欲しいな。

 生きて帰れる可能性すらもゼロ。

 どうせバレなければいいんだろ?



 パキパキと周りの風景が一瞬でガラスに覆い尽くされる。

 世界の時が止まったかのように風景はピタリと止まる。

 僕が指を鳴らすと、ガラガラと音を出してガラスが崩れ、草原も地面も風も、何も無くなった風景が現れた。

 何も無い風景だが、星の灯りだけは上下左右に沢山あって。

 その異様な光景に空奏の魔術師達が困惑している。


「さぁ、行こうか」


 可能性の裏側へ。


開発限解放スキルアジャスト

 
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