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物語
しおりを挟む『貴様は何の為に戦っているんだ?』
魔王が俺に問いかける。
「何の為? 何の為か……」
最初は期待なんてされてなかったんだ。
俺に対して人々が口々に言うセリフは決まっていて。
『歴代の勇者の中で最弱だ、世界は終わった』
くだらない、なんで俺がこんな奴らを助けないといけないんだって思ったこともある。
今では俺がその場に現れるだけで、人々の絶望の色に染まった瞳に希望の光が差し込む。
そんな光景を見て思うんだよ、勇者ってのも悪くないかなって。
見捨てようとしても……。
『ユウ様はそんな事しないですよね?』
俺に笑顔を向けて見捨てるという選択肢を消す厄介な仲間もいる。
なんて世界に転移したんだよ……。
俺は魔王の問いに答える。
「俺が何の為に戦ってるかなんて、どうでもいいじゃねぇか」
俺は黄金に輝くオーラを纏う黒剣を魔王に向ける。
最弱と呼ばれた俺はもう既に何処にもいない。
最強と呼ばれた存在としてこの世界を救う。
これが俺の……最後の戦い。
世界の終わりを体現したような圧倒的な存在感を放つ魔王を倒したら俺の物語が終わる。
俺の物語が終わるって事なら勝っても負けても一緒か……。
どこまでも続いていく草原で俺はニヤリと笑い、呟く。
『手加減してやるからかかってこいよ』
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