36 / 201
虹の石
しおりを挟む休憩は三時間もある。
長すぎじゃないかと思うだろうが、朝昼晩の三回だけだ。
俺がバトルフィールドにいた時間は二時間ぐらいだったと思う。
今はご飯を食べる為にコロシアムの食堂エリアに来て、順番待ちをしている。
ここに来るまでに結構迷った。
迷路かと思った程だ。
モニターが復活する。
休憩中は森のステージに固定されていたが瞬時にキツい傾斜と岩が目立つ山岳地帯というのだろうか? そんなフィールドにチェンジした。
リリア達は何を喋っているのか分からないが、盛り上がってるらしい姿が映っている。
モニターに映っているリリア達の中にフィリアはいなかった。
お、俺の番か。
モニターを見ている内に自分の番が来たらしい。
ここは学校の学食みたいに列に並び、自分の番が来たらメニューにある食べたい料理を言うだけ。
「何になさいましょうか?」
学校の食堂みたいにおばちゃんがやっているのではなく、若いお姉さんが注文から料理までやってくれるらしい!
いいな!
しかもこれは! メイド服だ!
おばさんのメイド服なんて見たくないからな。
「え~と、ソバ! じゃなくて」
俺はリリアから教えて貰った料理名を上にぶら下げられたメニュー板を見ながら思い出す。
おっ! あった!
「ミナルディーを1つ」
そう俺はリリアに作って貰うから料理名には疎いのだ! しかも馴れない。
昔の異世界では肉を焼いて食う、味付けは塩をつけるか、最初から塩を塗り込まれた最早塩の味しかしない肉しか食ってなかった。
戦場の最前線なんてそんなものだ。
安全地帯の貴族達が何を食ってたのかは知らない。知ってしまったら俺は人族最大の敵になってたかもな!
「かしこまりました」
俺が注文するとメイドのお姉さんがテキパキと料理を作ってくれる。
日本と違うところは番号札とか配らずに十人のお姉さん達が一人一人につき、注文を受けてから料理を作る。それを繰り返している。
料理も凄く早かった。
俺はソバに似た物をお盆に乗せてテーブルに運ぶ。
空いているテーブルに座るとソバを食べ始める。
ズルル、ズルルと麺を綴る音が心地いい。
「うるせぇー!」
「ん?」
俺は大声を出した人物に目を向ける。
「食事中に汚い音を立てるな」
浅黒い肌を持ち、茶色の髪をオールバックにしていて目つきが鋭い大柄の男が突っ掛かって来た。
「これは俺の国の食べ方だ! これがこの食べ物を食べる時の礼儀だと俺は思っている!」
俺は胸を張り自慢気に話す。
「礼儀とか知ったことか!」
大柄の男がいきなり殴り掛かって来やがった!
俺はそれを受けるか避けるかを考える。
よし避け……。
「なにをしているのだ? 貴様は」
すると大柄の男の太い腕をフィリアが小さな腕で難なく受け止めていた。
「じゃ、邪神様!」
大柄の男はすぐさま腕を引き、頭を下げる。
「すぐ手を出すな! 貴様のような奴のせいで魔族は敬遠されるのじゃ!」
邪神は人族との共存を受け入れているらしいな。
「ところで貴様は何故このような所におるのじゃ?」
フィリアは大柄の男に疑問を投げ掛ける。
「それが……」
大柄の男が説明を始める。
横から聞いてた俺が訳すと。
バトルフィールドの中で俺とフィリアが戦っていた時に近くにいたコイツはわけもわからずに大ダメージを受けて退場させられたらしい。
しかもコイツだけではなく数十人が同じように巻き込まれたと話している。
俺が戦闘中に注意していたのは俺の後ろだけ、それ以外の範囲は知らない。
「そうか、それは残念じゃったな。もう行ってよいぞ」
フィリアの言葉に大柄の男はすぐさま帰っていく。
「じゃあ次は何でお前がここにいるんだ?」
フィリアは向かいの席に座る。
「我は負けた。退場するのは当たり前じゃろ? ルールでは負けた事にはなっておらぬが負けは負けじゃ。弁当を一緒に食べ、少し話した後に我は負けを宣言したのじゃ」
ラグナロクの負けは魔力と物理が関わり、戦闘不能状態に陥ると負けになり、強制的にバトルフィールドの外へ転移させられる。
簡単に説明すると相手から攻撃されて気絶したら負けになる。
ユウカとミミリアは魔力切れと無理な戦いをしたために気絶。これは相手から攻撃されてそうなった訳ではないので強制的に転移はされない。
戦闘不能状態の時に少しでも相手から攻撃されるとすぐに転移だが。
フィリアの身体は無傷で精神的なダメージの蓄積による気絶だからこれもセーフみたいだな。
負けを宣言しても転移の対象となる。
「精霊神の事は悪いと思っておる」
「そこだよ気になってるのは、何でお前達が精霊神を持っていた?」
ズルル、ズルル。
「それがな、我もこの学園に入ったのはつい最近なのじゃ。そして精霊神を貰った。剣の勇者がこの世界におるかも知れないと噂に聞いていたから精霊神はどさくさに紛れて逃がそうと思っておったのじゃが」
フィリアは俺が精霊神と仲が良い事は知っているからな。剣の勇者の実力を知っているならすぐに逃がすだろう。
「ホーリートレースの剣の勇者にビビって無理に力を使ってしまったと?」
「そういうことじゃ。あんな風になるとは思っていなかったが、あとには引けない状況まで行ってしまったのじゃ。本当にすまぬ、リリア達には許しを貰った、精霊神にも謝りたいと思っておる」
「気持ちは受け取った。精霊達は気にしてないと思うが、伝えといてやる。こっちも精霊神が帰ってくれば何も言うことはない、次はないがな」
俺は脅しを掛けておく。
「貰ったと言ったが、誰からだ?」
俺は精霊神を最初に捕まえた人物が気になる。
ズルル、ズルル。
「顔はわからぬ、何時もフードを被っておる連中でな、精霊神の力はもう必要ないとも言っておったな? 精霊の勇者にもそのようなことを言っておったらしい。たしか虹の石が見つかったと言っていたか?」
「虹の石だと! そんな物で何をしようとしてるんだ?」
「我にもわからぬ、それに虹の石とはなんじゃ?」
「虹の石はな、優れた者たちを封印して、魔力を何百年と奪い蓄積させた物だ。全部壊したと思っていたんだがな」
最近まで知らなかったが、そこにいたのが闇の勇者なユウカだったんだよな。
ズルル、ズルル。
「ふむ、それで何をしようとしているのじゃ?」
「俺にも分からん、なんせ虹の石一つで大陸を消せる程の威力を発揮するからな~。まぁそれを扱える奴がいればの話だが。昔はそれを悪用しようとした人族も魔族も、虹の石が強大な力になりすぎて扱えなかった程だ」
「扱えるとしたら元の力を取り戻した我か精霊神ぐらいか」
「あぁ、嫌な予感がするな」
「同感じゃ」
ズルル、ズルル、ズルル。
「クレスよ、嫌な予感がするとか言っていたが全然、緊張感が伝わってこないぞ」
「なにを言っている! 俺は真剣だ!」
ズルル、ズルル、チュルル、ズズズ、はぁ~。
「もうちょっと真剣になれぇぇぇええ!」
フィリアの叫びは食堂に響き渡るのだった。
その頃、フードを被った怪しい集団達は。
『なに! 精霊神がもう奪われただと! 女神様のお告げと全然違うじゃねぇーか!』
リーダーのように椅子にふんぞりかえっている奴が偉そうに吠える。
『はい、女神様のお告げは絶対外さないと言われていますが、唯一外しまくった時期があります』
『どういうことだ?』
『それは剣の勇者がいた時代の話だそうで、剣の勇者の行動は女神様でも予測が出来ないらしいのです』
『やはりあの中に剣の勇者がいたと言うことだな』
『はい、噂に聞くところによるとミミリア・リル・ミリアードが怪しいかと』
『剣の勇者と縁があるらしいなミリアード! 監視しとけ、妙な動きをしたら奥の手を使っても構わん! それほどに剣の勇者は危険だ』
『はっ!』
敬礼のような仕草と返事を返すと報告しにきた黒フードが退室する。
『ラグナロクが終わったら最終段階に移すか』
椅子にふんぞりかえっている黒フードが怪しげな独り言を呟く。
0
あなたにおすすめの小説
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
S級冒険者の子どもが進む道
干支猫
ファンタジー
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた
砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。
彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。
そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。
死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。
その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。
しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、
主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。
自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、
寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。
結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、
自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……?
更新は昼頃になります。
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる