天才な妹と最強な元勇者

くらげさん

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「クレスよ、うまそうに食べるな」

「そうか?」

 さっきまでフィリアは真剣に話していたが、俺の不真面目な調子にあてられてバカらしくなったんだろう。

 最後の一口を食べ終わり、俺は箸を置く。

「剣の勇者は魔法が使えないと聞いていたが、本当は魔法が使えるんじゃな」

「いや、俺は魔法は使えない」

「ん? 我を助けてくれた時に使っておったじゃないか?」

「あれは精霊が使ってくれてたんだよ、だから俺じゃない」

「ふむ、だがあれほどの力を出せるのだから使えばよかろう?」

「自分が禁忌指定した魔法を自分で使えと? まぁ、あれはフィリアみたいな奴を出さない為に禁忌指定したんだがな」

「うっ!」

 俺の指摘にフィリアは顔を伏せる。

「精霊を使えば限定精霊化オーラル・フォーゼは誰でも出来るが、危険すぎる物だ。だから俺も使わないし使い方も教えない。あと魔法を使えると思ってたら、まさかの人任せなやり方しか出来なくて、自分の手から魔法が出るのに自分で出してないっていう複雑な俺の気持ちがわかるのか!」

「わ、悪かったのじゃ」

 少し熱くなりすぎたな。

 限定精霊化を初めて使って魔法を出した時の感想は、コレじゃない感がすごいと言えばわかるだろうか? 

 自分の手から魔法が出たことには素直に嬉しいが、自分で操っていない魔法が手から出てくる違和感。

 なんと言えばいいかな、自分でペットボトルの蓋を開けて飲むのと、他人がペットボトルの蓋を開けて飲ませて貰う。水を飲むという結果は一緒だが全然違うだろ。

 そういうことだ、俺の蓄えた魔法知識も全部精霊がやってくれるから意味をなさなかった。

「いや気にするな、今では割りきれている」

 俺が魔法を使えないことは。

「そういえばお前、勇者達に負けたんだってな」

「ぐっ、痛いとこを突いてくるな」

「あんなに強かったのにな~」

「いや、剣の勇者の方がよっぽど化物じゃった! 我と戦う前に何百人と魔王クラスの実力者達がいたと思っておるのじゃ! それを一人だけで全滅させて我の所に無傷で来る化物がおるか! そして剣の勇者はその時なんていったか覚えておるか?」

 疑問を投げ掛けてくるフィリアに俺は。




「なんて言ったかな?」


 全然覚えていなかった。

「忘れもしない」

『手加減してやるからかかってこいよ』

「と言ったんじゃ! 神達でさえ逃げる我の力を前に、そんな事を言った人族は初めてじゃ」

「いや~強かったぞ邪神」

「さっきから軽いぞ!」

「それよりあんなに人族を憎んでたお前が何で今ではそんなに乗り気なんだ?」

「それも剣の勇者のせいじゃ」

「えっ! また俺?」

 何かしたかな? 覚えてない。




『お前って復活できるんだろ? なら復活した後にでも人族の住む場所を見て周れよ。そしたら魔族と一緒なんだなと共感できる所が絶対にあるから、そこだけは俺が保証してやる! 暴れまわるなよ、今は何言っても無駄だろうから復活の間に考えて置いてくれ』

 クレスが邪神を倒した時に言った言葉だ。

「我も復活の長い時間の中で考えてな。復活した後は人族の住む場所を見て周った。剣の勇者の言った通り、魔族も人族も同じだと言うことに気づいただけじゃ」

「だから今も昔も完全に復活してないのに出てきてるのか! 見て周れとは言ったと思うが、お前ももうちょっと待てなかったのか? だから勇者達に負けるんだよ」

「うっ! 剣の勇者が真剣に話していたから我も人族とは何かが気になって来てな。そして人族の生活を見て周ってる時に見つかって話も聞いて貰えずに倒されたが、我はもうその時には人族を憎めんようになっておった。剣を向けられたから攻撃はしたがな」

「そうか、俺の言った事がわかったならいいんだ。なぁ、リリア達は優勝できると思うか?」

 クレスは唐突に話を変える。

「優勝は間違いないと思うぞ、知らぬのか? ユウカは勇者達の中でも飛び抜けて強いのじゃぞ。我が勇者達に倒されたと言ったが、ユウカに倒されたと言っても良いほどじゃ。しかもリリアとミミリアも才能は天武の才があるように思うぞ」

「なんか仲良くなったみたいだな、名前で呼び会うまでになったのか?」

 恥ずかしくなったのかフィリアは俯く。

「う、うぬ。こんな我でも受け入れてくれたのじゃ」

 クレスは視線をフィリアからモニターに移す。

「まぁ、問題は勇者達だよな、魔力が少ない状態の今、戦って勝てるかどうか」

「そうじゃな」

 フィリアはクレスに同意する。





「呼びました?」

 俺は誰かの声がした方を振り向く。

 そこには二人の人物が。

 誰だ?

「光の勇者と反発の勇者じゃな」

 俺の反応を見てフィリアがフォローする。

「はい、俺が光の勇者です。そして」

「俺が反発の勇者だ」

 どちらも黒髪黒目のイケメン君だ。

「チッ!」

 俺はイケメン君をみて舌打ちする。

「舌打ちするなんて無礼だな君は」

 光の勇者が俺に指摘をする。

「俺は剣の勇者だ、何をしても許される」

「「なに!」」

 勇者達の顔が一瞬で険しくなる。

「冗談だ、そう身構えるな」

「君の目を見て信じそうになったよ、まだ子供じゃないか、そういう冗談は止めた方がいいよ」

「ところでそこの勇者君達は何でここにいるんだ?」

「勇者って言えば皆んな敬語になるのに君は本当に無礼だな。俺達にも分からないよ、気づいたら大ダメージを受けて強制転移させられていたからね」

 俺はコイツらに哀れみの目を向ける。

「おいガキ! 俺達はこの世界を救ったんだぞ、ちょっとは敬え!」

 反発の勇者が吠える。

「よさぬか、我の連れじゃ無礼は許せ」

「誰だ? どこかで見たことあるな?」

 反発の勇者が疑問を口にする。

「我は元邪神じゃ、争う気はないから安心しろ」

 勇者達は一瞬腰の剣に手を添えるが、フィリアの言葉に構えをとく。

「こっちは冗談ではないようだね」

 小さくはなっているが顔は変わっていない。

「ガキ! 邪神の連れだと言うから許してやるが、次はないからな」



『雑魚が』

 俺がボソッと呟く。

 勇者だからなんだ? 偉いのか?




「ガキ! こっちは勇者なんだぞ、舐めるのも大概にしろ」

 反発の勇者が剣を抜き、クレスに振るう。

 それをフィリアが黒い刀をだして受け止める。

「我の連れだと言ったじゃろ。無礼は許せ、子供の戯れ言じゃ」

「そうだぞイトウ、子供の戯れ言だと聞き流したらどうだ?」

 光の勇者が反発の勇者に言う。

「クソっ! 命懸けで救ったこの世界の奴に雑魚呼ばわりされてるんだぞ!」

 イトウと呼ばれた反発の勇者はそれでも煮え切らない様子だ。

「君も態度が良くないよ、それじゃお邪魔したね」

 光の勇者は一言クレスに告げると反発の勇者と一緒に消えていった。



「態度が悪いぞクレス」

 フィリアはクレスを注意する。

「ちょっと癇に障ってな。フィリアが間に入ってなかったらボコボコにしてた所だ」

「だから反発の勇者の為に止めてやったのじゃ」

「俺達の被害って結構デカかったんだな」

「うぬ」

「これでもうリリア達が優勝だな」

「そうじゃな」

 食堂に設置されているモニターを見ながらクレス達は確信するのだった。



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