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召喚
しおりを挟む女神の話が終わる。
「それは本当のことなのですか!」
マクロードが叫ぶ。
「本当のことよ、剣の勇者が獣族の英雄」
「その話は剣の勇者が獣族の村に来たせいで起きたことじゃないか!」
「剣の勇者は私の予言から外れています、予言通りの結末を教えてあげましょう」
女神は語る。
『魔族や人族の奴隷として今も生きることになっていた』
「奴隷!」
獣族達がざわめく。
「もし剣の勇者が関わらなかったらの未来だと思えばいいよ、自由に生きれるように昔の獣族達はその権利を貴方達に託したんでしょうね」
「そしたら獣族の言い伝えに『剣の勇者は獣王を殺し、剣の獣王は獣族を救った』とある」
「それもこの話を聞いて分からないの? 言葉の通りでしょ、剣の勇者は獣王を殺して、剣の獣王は獣族を救った。獣王だけでいいのに剣のまで付けて、剣の獣王なんて伝えると思うの? 剣の勇者が獣王と分かるように伝えてるじゃない」
「救われてないじゃないか!」
マクロードの言葉にも熱が入る。
「剣の勇者が獣族を皆殺しにしたと伝えたから貴方は命を狙われることもなく生きて来られた、そして抗う力も残した」
「抗う力?」
「恩でしょ? 獣王に返せない莫大な恩を獣王は返せと言った、その意味が分からないの? 獣王様の為と思えば貴方達はいつでも獣族本来の力『獣化』を発動できる」
獣族達は何度もその力に救われて来た。
「じゃあなぜ剣の勇者は嘘をついたんだ、獣族を殺したと」
「不器用な勇者が考えた精一杯の答えなんでしょうね、助けられなかった獣族達を殺したのは自分だ、恨むなら俺を恨めと言いたかったんでしょう」
「結局、人族と魔族が悪いんじゃないか!」
『甘えるんじゃない!』
女神の怒りの声。
「まだ分からないのですか! 自由をつかみとった昔の獣族達の想い、恨まれることが分かっていながら自分が傷ついてまでも守ろうとした剣の勇者の想い、それを踏みにじろうとする行いを今、貴方はやっているのですよ!」
マクロード達はそれでも引き返せない。
「恩には恩を伝えるという獣族の誓いはもう存在しないのですか?」
「もう私達は引き返せない」
マクロードは顔を伏せる。
「いいえ、引き返せます。恩を返しにいきませんか? 獣王に剣の勇者に恩を伝える事が貴方達獣族のあるべき姿です」
マクロードは顔を上げる。
「貴方がやったことの償いをしなければなりません、力を貸してください奥の手が必要なのです」
女神の声に獣族達は立ち上がる。
「「「剣の勇者様と剣の獣王様の為に今こそ恩を返す時」」」
獣族達は声を揃えて誓いを言うのだった。
「獣族って本当にいたんですね」
ミミリアが呟く。
「僕も噂ぐらいしか聞いたことなかったよ」
「遅れた理由はこの位にして」
『準備は出来ましたか?』
『はい』
テレパシーで女神はマクロードと連絡を取る。
「準備が出来ました」
女神は世界中にテレパシーを広げる。
『私は女神、最狂の勇者を倒すために貴方達一人一人の魔力が必要です、力を貸してください、空に向かって魔力を送るのです』
全ての人が女神の声を聴き、空に魔力を流す。
すると真上にある太陽の光が歪むほどに魔力が貯まっていく。
「神の舞踏、ラグナロクを再現します」
女神は呟く。
「結界に剣の勇者を閉じ込めるというのが獣族達の奥の手だったみたいですね、それをアレンジしてコロシアムにします」
「誰が倒すのですか?」
ミミリアが疑問を口にする。
「勿論剣の勇者に倒してもらうよ」
「「「剣の勇者!」」」
女神の言葉にその場の全員が声を出す。
「お兄ちゃんは生きてるの!」
リリアが大きな声を出す。
「呼び戻すのに大きな賭けをする必要があります」
「大きな賭け?」
ミミリアは女神が言う賭けが分からない。
「アリアス・リル・ミリアードの力が必要なのです」
「ですがアリアス様はもうこの世にはいない」
アリアス様はいない、それは誰でも分かるだろうとミミリアは思う。
「だから大きな賭けをします、アリアスを召喚します」
「「「召喚?」」」
リリア達の声が被る。
「その前に全ての最狂を閉じ込める」
女神は歪んだ空を見上げて魔法を呟く。
『エターナルフィールド』
空間を想像する魔法。
歪んだ空は形を変え、虹色に輝く箱が出現する。
「あれは別次元に作ったコロシアムを見えるようにしてあります、そして」
対象を転移させる魔法を女神が発動する。
『テレポート』
最狂を封じ込めている箱が大きく揺れると何も無かったように魔法の粒子を残して箱が消えた。
「それでは召喚します、私はラグナロクの維持で魔法の発動しか出来ません、魔法の構築と魔力を貴女達で補ってください」
リリア、ミミリア、フィリア、ユウカの四人は女神の言うとおりに魔法を構築して魔力を送ると大きな魔法陣が出現する。
それを見た女神は魔法を発動する。
『パラドックス・タイムテーブル』
魔法陣が大きな光を放つと。
「「「ッ!」」」
その場にいる全員が目を見開く。
そこには誰もいなかった。
「やはり無理ですか……」
女神は知っていたかのように言葉を漏らすのだった。
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