天才な妹と最強な元勇者

くらげさん

文字の大きさ
70 / 201

召喚

しおりを挟む






 女神の話が終わる。

「それは本当のことなのですか!」

 マクロードが叫ぶ。

「本当のことよ、剣の勇者が獣族の英雄」

「その話は剣の勇者が獣族の村に来たせいで起きたことじゃないか!」

「剣の勇者は私の予言から外れています、予言通りの結末を教えてあげましょう」

 女神は語る。



『魔族や人族の奴隷として今も生きることになっていた』



「奴隷!」

 獣族達がざわめく。

「もし剣の勇者が関わらなかったらの未来だと思えばいいよ、自由に生きれるように昔の獣族達はその権利を貴方達に託したんでしょうね」

「そしたら獣族の言い伝えに『剣の勇者は獣王を殺し、剣の獣王は獣族を救った』とある」

「それもこの話を聞いて分からないの? 言葉の通りでしょ、剣の勇者は獣王を殺して、剣の獣王は獣族を救った。獣王だけでいいのに剣のまで付けて、剣の獣王なんて伝えると思うの? 剣の勇者が獣王と分かるように伝えてるじゃない」

「救われてないじゃないか!」

 マクロードの言葉にも熱が入る。

「剣の勇者が獣族を皆殺しにしたと伝えたから貴方は命を狙われることもなく生きて来られた、そして抗う力も残した」

「抗う力?」

「恩でしょ? 獣王に返せない莫大な恩を獣王は返せと言った、その意味が分からないの? 獣王様の為と思えば貴方達はいつでも獣族本来の力『獣化ベルセルク』を発動できる」

 獣族達は何度もその力に救われて来た。

「じゃあなぜ剣の勇者は嘘をついたんだ、獣族を殺したと」

「不器用な勇者が考えた精一杯の答えなんでしょうね、助けられなかった獣族達を殺したのは自分だ、恨むなら俺を恨めと言いたかったんでしょう」

「結局、人族と魔族が悪いんじゃないか!」



『甘えるんじゃない!』



 女神の怒りの声。

「まだ分からないのですか! 自由をつかみとった昔の獣族達の想い、恨まれることが分かっていながら自分が傷ついてまでも守ろうとした剣の勇者の想い、それを踏みにじろうとする行いを今、貴方はやっているのですよ!」

 マクロード達はそれでも引き返せない。

「恩には恩を伝えるという獣族の誓いはもう存在しないのですか?」

「もう私達は引き返せない」

 マクロードは顔を伏せる。

「いいえ、引き返せます。恩を返しにいきませんか? 獣王に剣の勇者に恩を伝える事が貴方達獣族のあるべき姿です」

 マクロードは顔を上げる。

「貴方がやったことの償いをしなければなりません、力を貸してください奥の手が必要なのです」

 女神の声に獣族達は立ち上がる。

「「「剣の勇者様と剣の獣王様の為に今こそ恩を返す時」」」

 獣族達は声を揃えて誓いを言うのだった。





「獣族って本当にいたんですね」

 ミミリアが呟く。

「僕も噂ぐらいしか聞いたことなかったよ」

「遅れた理由はこの位にして」


『準備は出来ましたか?』

『はい』

 テレパシーで女神はマクロードと連絡を取る。

「準備が出来ました」

 女神は世界中にテレパシーを広げる。


『私は女神、最狂の勇者を倒すために貴方達一人一人の魔力が必要です、力を貸してください、空に向かって魔力を送るのです』

 全ての人が女神の声を聴き、空に魔力を流す。

 すると真上にある太陽の光が歪むほどに魔力が貯まっていく。

「神の舞踏、ラグナロクを再現します」
 
 女神は呟く。

「結界に剣の勇者を閉じ込めるというのが獣族達の奥の手だったみたいですね、それをアレンジしてコロシアムにします」

「誰が倒すのですか?」

 ミミリアが疑問を口にする。

「勿論剣の勇者に倒してもらうよ」

「「「剣の勇者!」」」

 女神の言葉にその場の全員が声を出す。

「お兄ちゃんは生きてるの!」

 リリアが大きな声を出す。

「呼び戻すのに大きな賭けをする必要があります」

「大きな賭け?」

 ミミリアは女神が言う賭けが分からない。

 「アリアス・リル・ミリアードの力が必要なのです」

「ですがアリアス様はもうこの世にはいない」

 アリアス様はいない、それは誰でも分かるだろうとミミリアは思う。

「だから大きな賭けをします、アリアスを召喚します」

「「「召喚?」」」

 リリア達の声が被る。

「その前に全ての最狂を閉じ込める」

 女神は歪んだ空を見上げて魔法を呟く。

『エターナルフィールド』

 空間を想像する魔法。

 歪んだ空は形を変え、虹色に輝く箱が出現する。

「あれは別次元に作ったコロシアムを見えるようにしてあります、そして」

 対象を転移させる魔法を女神が発動する。

『テレポート』

 最狂を封じ込めている箱が大きく揺れると何も無かったように魔法の粒子を残して箱が消えた。

「それでは召喚します、私はラグナロクの維持で魔法の発動しか出来ません、魔法の構築と魔力を貴女達で補ってください」

 リリア、ミミリア、フィリア、ユウカの四人は女神の言うとおりに魔法を構築して魔力を送ると大きな魔法陣が出現する。

 それを見た女神は魔法を発動する。

『パラドックス・タイムテーブル』

 魔法陣が大きな光を放つと。

「「「ッ!」」」

 その場にいる全員が目を見開く。




 そこには誰もいなかった。



「やはり無理ですか……」

 女神は知っていたかのように言葉を漏らすのだった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた

砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。 彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。 そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。 死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。 その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。 しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、 主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。 自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、 寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。 結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、 自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……? 更新は昼頃になります。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

処理中です...