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剣聖の在り方
しおりを挟むワーグナリアという海に近い国。
俺達は毎日通っている行きつけのお店で色とりどりの海の幸を堪能していた。
「うまいな! この赤紫の貝。こっちの黄緑の貝と、赤と青の斑点が気持ち悪い蟹もうまいな!」
そう本当に色とりどりなのだ、ほとんどが蛍光塗料で塗られたようにピカピカで日本人の食文化がある俺としてはどうしても食欲がそそられない。
だが食べてみるとそんなの気にならないぐらいに箸が進む。これも日本人の食文化があるお陰だろう。
納豆みたいな臭い物から火を通さない生食文化、外国人からしたらビックリな食べ物だ。
腐っていても納豆よりヨーグルトの方がよほど品がある。だが納豆は庶民の生活には欠かせない! 時には主役のおかずよりも輝きを放つ脇役なのだ。
なんの話?
「は~美味かった!」
俺は腹を擦りながら高級食材を堪能した。
そうこんな見た目でも高級食材なのだ!
「キュイ!」
「ソーダも美味かったか~」
俺はアリアスをよしよしと撫でる。
「トウマも結構食べるな」
「久しぶりの温かい飯だったからな」
トウマの顔に影がちらつく。
「湿気た顔すんなよ! 今は俺達がいるからな」
「そうだな」
トウマは俺とアリアスを交互に見ると影が消え失せた。
『はっ? ビブルコーレットがない?』
『はい、申し訳ございません』
やたらとデカイ声が聴こえる。
ビブルコーレットってなんだよ!
「彼処のお客様が全て食べてしまって……剣聖様が来ると知っていたら取り置きをしていましたのに」
店員が俺達の方をチラチラ見ながら話す。
おい店員! 俺達に罪を擦り付けるな!
たぶんこの山のような残骸の中にビブルコーレットという物があったのだろう。
剣聖と言われた青髪の強気な雰囲気が特徴のイケメンが俺達の方に歩み寄る。
禿げろ!
「貴様達か? 俺様のビブルコーレットを食べた奴は!」
「この残骸の中にそのビブルコーレットがあるならそうだろうな」
「口には気を付けろよクソガキ!」
コイツ、キレやすい奴なのか?
しかも俺のって……お前はさっき来たばっかりだろうが!
ギルドの受付のお姉さんは心配を含んだ悪口、無闇に命を捨てるなと訴えるようだったのに対してこの剣聖の悪口には殺気を含んでいる。
俺は大人の対応というのを長年の経験から学んだのだ。
「あとから来といて、先に食べた物をどうしろと言うのですか」
「今すぐに取ってこい!」
「俺達がですか?」
「三十分以内にな!」
腰に下げてる剣に手を当てて断れば斬ると行っているような物だな。
「わかりました! 大急ぎで取ってきます!」
俺達は会計を済ませ、店から。
「待て、そのドラゴンを置いていけ」
俺達は剣聖の声に振り向くことなく、店から全速力で出るのだった。
「別に逃げなくても半殺しにしたらよかったんじゃないか?」
トウマは少し殺気を放っている。
確かにイラッとはしたが半殺しまではしなくてもいいんじゃないか。
「いいじゃないか」
「クレスがいいなら俺は……」
剣聖を撒いた俺達は今、ワーグナリアをぶらぶらと探索していた。
トウマは俺に殺気を飛ばした剣聖に怒っているのだろう。
俺のために想って怒ってくれるのは嬉しいと感じる。
「キュイ!」
人が誰も通ってない路地を進んでいた時に肩に乗っていたアリアスが重くなる。
「ユウ様! やっと戻れました」
アリアスが人化したようだ。
「乗るのはやめてくれないか」
アリアスは全体重を俺に預けている。
「す、すいません」
俺の背中から離れると胸の柔らかな感触の余韻が残る。
「いいぜ!」
アリアスはドラゴンの時には魔法を使えないらしく魔法創造は使えなかったのだと言う。
人化にも色々な制限や時間があり、トウマとの戦いで無理矢理人化を維持したため今までどうやっても人化出来なかったらしい。
アリアスが人化しても俺のプランは変わらない。
数時間ワーグナリアをぶらぶらとしていた時に気づく、俺達に視線が集まってる事を。
『アイツじゃないか?』
『間違いない!』
『いたぞ~!』
辺りの人が俺達を指差しながら大声をあげている。
「逃げるか?」
『おい、やっと見つけたぞ』
逃げるを選択した時に後ろから低い声で話しかけられた。
無視して逃げようとするが俺達の前方に氷で出来た巨大な壁が出現した。
「逃げれると思うなよ」
「俺達が何したって言うんだよ」
逃げることを諦めて青髪イケメンに話しかける。
「お前達は俺様の権限で指名手配中だ」
だから周りの人達が俺達を見てたのか。
「許してくれよ~」
俺は大人の対応をすることにした。
「俺様に恥を欠かせたんだ! ユリウス・ルーナ・ウィルブランドの剣聖の名で命じる、死ね」
普通に考えて可笑しいだろ! 食い逃げをした訳でもなく、ただ飯を食ってただけで死ねとは。
「どうか助けてください」
大人の対応を心がける。
無闇な殺生はダメなんだよ!
ユリウスはアリアスを見ながらニヤリと笑う。
「その女を置い……」
ユリウスは言葉が出ない。
『なんて言おうとしたんだ? 続けろよ』
全ての者が押し黙るような殺気がクレスから放たれ、ユリウスは指先一つ動かすことが出来ない。
『緊急! 緊急! 魔物の群れが攻めてきました! 旧クラスの神級多数! 直ちに剣聖様……』
「旧クラスだと!」
直ぐにアナウンスに反応したユリウス。
キレやすい剣聖でも仕事はするようだ。
すぐさま報告とは違う方向に走り出す。
「ちょっと待て! お前剣聖だろうが、この国がどうなってもいいのか?」
「旧クラスだぞ! 勝てるはずがない! 俺様の命の方がこの国よりも価値がある」
走り去っていく剣聖を見ながら思い出す。
俺が知ってる剣聖とは違う。
アイツはいつも国の事を想い、身を削って国を守る事をしていた。
銀髪でイケメンで民に優しく、自分に厳しく。
俺をただ一人の親友と呼んだアイツ。
『魔物の群れが攻めてきたみたいだな』
『ユウちょっと倒して来てくれ』
『お前、ちょっとって上級でも千匹はいるんじゃないか? 神級も混ざってんぞ』
城からでも見える魔物の大群。
『じゃあ言い方を変えよう。アリアスがさっき大急ぎで何処かに向かってたな、魔物の大群に襲われる前に助けに行ってくれないか?』
『マジで?』
『マジで』
時には俺を利用して……しかもアイツは報酬の話には全然触れて来なかったしな。
「なんかムシャクシャしてきた」
「ふふ、お兄様の事でも考えていたのですか」
「そんなわけないだろ」
俺はアナウンスで行っていた方角に向かって走るのだった。
『ちょっと魔物を倒しに行ってくる』
「そっちじゃないですよ」
アリアスの案内で俺達は魔物の群れに向かうのだった。
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