天才な妹と最強な元勇者

くらげさん

文字の大きさ
92 / 201

飛剣

しおりを挟む


「なんで貴方が!?」

 リリアは突然の乱入者に声をかける。

「大丈夫そうだな」

 その乱入者はリリアをみると安心したような顔をみせる。

「ブラッドまだやれるか?」

 乱入者はリリアの言葉を無視して竜王に声をかける。

「俺に言ってるのか友よ」

 竜王は乱入者がユウ・オキタという事を一目で見抜いた。

 竜王は膝をついていた状態から立ち上がりクレスの横に並ぶ。

「君は誰かな?」

 闇の女神も乱入者に興味を持ったらしい。

「俺はクレスだ」

「キマイラのブレスを無力化した力は素直に褒めてあげるよ、それじゃ」

 キマイラが口に魔力を溜める。

 それは今までのが嘘のような莫大な魔力を。

「いけ」

 闇の女神の声と共にキマイラのブレスが放たれる。

「いくらやっても一緒なんだよ!」

 そのブレスをクレスは透明な剣で斬り裂く。

「ッ!」

 さすがの女神も斬り裂かれるとは思ってなかったのだろう。

「これはあの時と似てるよね、君はまさか……」

 女神は口を紡ぐ、そしてニヤリと笑みをみせると。



『殺した人間が復活してるとは思わなかった』



 小さく呟くと新しいオモチャを見つけた子供のように目を輝かせる女神。

「私はもう帰るよ、準備が必要になったからね」

「おいおい、魔物を焚き付けといて簡単に帰れると思うなよ」

「冗談だよね? 君と私が真正面から戦って私が勝てるはずないじゃない」

 女神はおどけてみせるが女神の頬を何かが掠める。

「当たったと思ったんだがな」

「こわいよ、今のが黒剣なら確実に死んでたね」

 クレスは透明な剣を女神に向かって投げていたのだ。

「ここにいたら本当に死にそうだから、遊ぶのはまた今度だね」



 女神はそこに最初から何もなかったかのように消え去る。

『剣の勇者』

 女神は誰にも見えていない睨み付けるような瞳と誰にも聞こえることがない一言を残して。




「ブラッドはここで皆んなを守ってくれ」

「わかった」

 リリアには分からなかった、あの竜王が人族の頼みを素直に聞いている理由が。

 竜王の盾が人とキマイラの間の境界線のように燃え広がる。

 クレスは金色のオーラを纏う黒剣を使う事は出来ない。

 揺れる炎からコチラを伺うような無数の視線があるなか剣の勇者たらしめる黒剣を使うことは出来ないのだ。

 自分から世界を滅ぼそうとした勇者ですよ~と宣伝するようなもの。

「トウマ頼んだぞ」

 クレスは武器も持っていない状態でキマイラに突っ込む。

 そんな無謀な者を見逃す訳もない、容赦なくキマイラはクレスにブレスを放つ。

 ヒュッとクレスの真横を虹色のオーラを纏う剣が飛んでくる。

 それをクレスは掴みキマイラのブレスを斬り裂く。

 役目が終わったかのように虹色のオーラを纏う剣が姿を消す。

 ヒュッヒュッヒュッヒュッ。

 竜王が張った境界線に穴を開けながら無数の剣がキマイラに向かい飛んでくる。

 その剣が今にも消えそうにキラキラと粒子をばらまいている。

 キマイラは俊敏な動きでその剣を避けるが。

「遅いな」

 飛んできた剣を握ったクレスがキマイラの前足を斬る。

「ギャガァァァァ!」

 圧倒的な防御力を自負していたキマイラは前足が両断された事で雄叫びをあげる。

 動きを止めたキマイラにざくざくと無数の剣が刺さっていくがどれも浅い。

 消えた剣の変わりに飛んできた剣を掴むクレス。

 一撃、一撃とキマイラを斬る度に消える虹色のオーラを纏う剣。

 キマイラも負けないとブレスをクレスに向けて放つが全て飛んできた剣でクレスが斬り裂く。



「しまった」

 最後の悪あがきとキマイラはクレスに狙いを定めて撃とうとしたブレスをリリアに向けて放ったのだ。

 クレスが斬り裂こうと剣を振るがその剣は制限時間だったのか消えてなくなる。

「やらせんぞ!」

 クレスとキマイラの戦闘の衝撃を緩和していた竜王の出した炎の境界線が一ヶ所に集まるとキマイラのブレスを飲み込むように大きくなっていく。


「うぉぉぉぉぉ!」

 竜王はブレスを受けきった。

 最後の攻撃も防がれたキマイラはクレスの大事な者を傷つけようとした報いを受ける。

 キマイラの懐に踏み込んだクレスの横に虹色に染まる剣が飛んでくる。

 その剣を瞬時に掴み。



飛剣ひけん



 下から上段に向けて振り抜くと。

 キマイラの身体は切り裂かれ、地面をえぐり、周りの木々も粉々に砕け散る。

 キマイラの身体は粒子になって消え去り大きな魔法石を残していった。

「ふぅ~必殺技叫ぶのって痛いよな、威力かわんねぇのに」

 クレスは心の中に飛剣を封印するとその場で座り込む。

「ユウよ、久しぶりだな」

 横に来ていたブラッドも座り込む。

 そして二人は拳を付き合わせると。

「ありがとな」

 クレスは感謝を示す。

「ユウの妹と聞いたからな、助けるのは友として当たり前だ」

 ブラッドは炎を纏う。



『友が無事だと知ったら用はない、また遊びにでも誘ってくれよ』



 ブラッドはクレスに笑みを見せると炎が消えると共に消え去った。

「あぁ」

 クレスも旧友との再開に笑みを見せる。



『約束だよね』



「……」

 後ろからの声に振り返らないクレス。

「お前はどこにいたんだ?」

「クレス君が来たから巻き添えを食らわないように避難したんだよ」

 ユウカはクレスが見えるように回り込む。

「そんな約束なんかした覚え……」

 ユウカはクレスの声を遮る。

「じゃあ約束ね、もし約束を破ったらリリアちゃんに昔の僕の集めたユウ君の真実の歴史をちょっとだけ教えちゃうよ」

 クレスはすぐさま立ち上がる。

「おいおい、約束は守るに決まってるだろ!」

 ユウカの脅迫にクレスは戦慄するのだった。




『どこまで知ってるんだ?』

 クレスはフィーリオンの傍まで戻りながらユウカに尋ねる。

『どこまでかな~』

 意味深なユウカの言葉にまたしてもクレスは戦慄するのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた

砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。 彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。 そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。 死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。 その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。 しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、 主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。 自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、 寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。 結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、 自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……? 更新は昼頃になります。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

処理中です...