天才な妹と最強な元勇者

くらげさん

文字の大きさ
93 / 201

嫌な奴

しおりを挟む


 ユウカに戦慄させられた俺は今ものすごい視線の中で立っている。

 その中でもぐいぐいと近寄ってくる人物がいた。

「貴方の事を私のお兄ちゃんとか言う人がいるけど、本当の事なの?」

「いや嘘だな、俺に妹は居ない。人の事をあんまり信じない方がいいぞ」

「むっ!」

 リリアは俺を睨み付ける。

「別に貴方の事をお兄ちゃんだなんて思ってない、聞いただけだよ!」

 リリアは明らかな怒気を見せながら俺から離れていった。



「いいのかい? そんなこと言っても」

「リリアの為だ」

「それを本人が望んでいなくてもかい?」

「あぁ、これは俺の勝手だ。リリアには幸せを手にしてほしい」

「リリアちゃんの幸せは君の隣に居ることだと僕は思うけどね」

 ユウカの言葉は俺の心を抉る。

「俺の傍に居れば危険が降りかかる、リリアには危険もなく幸せになって欲しい」

「わがままだね」

「お兄ちゃんだからな!」




 俺はトウマ、アリアスと合流して。

 フィーリオン剣士学園に先生として入る事になった。

 ユウカとの約束だからな。



 フィーリオン剣士学園に入ると、ユウカから職員室に案内されて粗方の自己紹介も終わり今。

 他の先生達は歓迎ムードとは程遠い邪魔くさい者を見るような目を俺に向けていた。

 まぁトウマには歓迎ムードだ。

「ユウカ様と王様の頼みだからアンタを入れるんだから! 遊びが済んだら帰ってもいいわよ」

 俺の事を忘れているミントも歓迎ムードではもちろんない。

 ユウカはなんで俺をこの学園に入れたいんだよ!

「リリアちゃんの剣聖適性の教員はクレス君にやってもらいます」

 ユウカの声に先生達からの否定的な声が響く。

「いくらユウカ様の頼みでも、そんな低ランク冒険者にリリアさんの担当を任せられるはずないですよ」

 ミントがユウカに反論する。

「これはもう決まったことです」

 ユウカが何かを言う度に俺を睨み付ける先生達。

 なんで俺なんだよ!

「剣聖適性ってなんだ?」

 俺は話題の中心に居るはずなのにそれを知らない。

「剣聖適性っていう剣聖になるための試験があるんだよ」

 ユウカは俺に説明してくれる。

「それで?」

「その剣聖適性でリリアちゃんはメディアル出身だからメディアルの剣聖希望者と戦って、希望者の一位だけがメディアルの剣聖と戦うことが出来るの」

「勝てる為に指導するのが担当の役目と」

「まぁ、そういうことだね」

 俺の疑問にユウカは答えてくれる。

 全力で拒否したいが……ユウカは俺の弱味を握ってやがる拒否するという選択肢は俺にはなかった。

 リリアの担当をどうせならトウマにという声が多数の中、俺とトウマが教えると妥協点を出すと当たり前だろみたいな顔をされたが揉めるよりいいだろう。

 話も纏まった次の日。



「嫌です!」

 俺はリリアと学園にあるコロシアムで向かい合っていた。

 俺はユウカに手抜きなしで取り組めと釘を刺されたので先生としてリリアが剣聖適正に勝てるように指導することにした。

「教員に逆らうのか?」

「むっ!」

 最愛の妹に嫌がられるというのは兄の心を抉るのに充分だ。

 嫌われる事を覚悟した身ではあるが、辛い。

「魔物襲来で見ただろ、俺の剣技は完全にお前の上位互換だ」

「そうですね」

 リリアは手を強く握りしめ悔しがっている。

「それを俺が教えてやるというんだ、感謝しろよ」

「はい」

 キッと俺を睨むリリア。

 言い過ぎなんだよ! 俺!

「トウマ! まずコイツに魔力コントロールと質の向上、剣技を指導してくれ」

「わかった」

 後ろに立っていたトウマが俺と入れ替わるように前に立つ。


 俺はコロシアムから出ることにする。

「ちょっと貴方じゃないの? 私の指導は」

「指導するのは俺がいいのか?」

「ち、ど、どうせならトウマさんがいいです」



『そうか、まぁ今お前とやったところで手加減も出来ないからな、せいぜい強くなってくれよ』



「むぅ!」



 俺はリリアの怒りの視線に振り返らずにコロシアムから出る。

 リリアから見られない場所まで来た俺は両膝、両手を地面につき後悔する。

「なんて事をしてしまったんだ!」

「きゅい」

 肩に乗るアリアスは俺を慰めるように声を出す。

「もっと優しくしてあげればいいんだよ」

「見てたのか?」

 そんな俺に何処からか現れたユウカが話しかける。

「リリアは俺の事をどう思ってる?」

「尊敬は出来るけど、嫌な奴ってところだね」

「ぐはっ!」

 辛い。

「でもクレス君が考えてる通りなら間違ってない判断だけどね、僕の考えてる通りなら完全に間違ってるよ」

「あぁ、わかっている」

「これ以上関わりがないようにしたいんだよね」

「ユウカがそれを邪魔するけどな」

「僕はクレス君の考えを間違っていると思っているからね、邪魔するのは当たり前さ」

 俺は壁に手をつき立ち上がる。

 精神的にボロボロになりながら俺は寮に帰ることにした。




『そんな辛そうなクレス君を見るのが僕はとっても辛いんだよ』


 消え入りそうで泣きそうなユウカの呟きはクレスの耳には届いていなかった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた

砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。 彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。 そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。 死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。 その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。 しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、 主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。 自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、 寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。 結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、 自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……? 更新は昼頃になります。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

処理中です...