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宣言
しおりを挟む俺はトウマのプレートを首にかける。
アリアスが食い止めていた闇の女神の魔法が消える。
寝ているリリアを抱えると俺はユウカの傍まで運ぶ。
フィリアも俺達の傍まで下がる。
幸せの未来の為にか? ならコイツは俺が道連れにしないとな。
「ユウカ、フィリア、リリアを頼む」
二人は無言で首を縦に振り承諾する。
俺は闇の女神を睨み付ける。
『茶番は終わったようだな』
闇の女神の姿が変わる。
「それは俺の身体か?」
「そうだよ、私が殺して奪った戦利品」
その姿は剣の勇者ユウ・オキタだった。
あぁ、思い出した、あの時俺は殺されたのか。
「なんで忘れてたんだろうな」
それは俺が元の世界へ帰る反転召喚魔法陣を発動した後のことだ。
身体が動かない。
ここはどこだ?
『ようこそ、私の世界へ』
周囲が闇に呑まれた世界。
「誰だ!」
『ユウ様なのですか?』
「アリアスなんでいるんだ!?」
闇の中からアリアスの声が聞こえる。
『剣の勇者よ、私はお前が嫌いだ』
ぽうっと視界が明るくなる。
アリアスが魔法で明るくしたようだ。
そこにはどんよりと虹色のオーラを纏った女がいた。
『お前は幾度となく絶望を希望へと変えてきた、私の楽しみは絶望に染まる姿を見ること、お前が居ることで周囲が希望に満たされる』
何を言ってるんだコイツは。
『私の憂さ晴らしにお前の絶望を見せてくれ』
女はアリアスに向けて虹色に輝く光を出す。
その光はノロノロと確実にアリアスに向かって進んでいく。
「アリアス逃げろ!」
俺は力の限り叫ぶ。
『身体が動きません』
闇がアリアスの足に絡み付き動きを拘束していた。
俺も身体を動かそうとするが一歩も動けない。
だから俺は本気を出すことにした。
『リミテッド・アビリティー』
俺は何もない空間から金色のオーラを纏った黒剣を召喚する。
『お前はいつも私を驚かせるな』
「はぁ、はぁ、褒めてくれてありがとよ」
俺はアリアスを庇うように立ち、絶対の攻撃力を持っているだろう光の玉を斬り裂く。
女は虹色に輝く光の玉を斬られる度に光の玉を出し続ける。
だがついにその時は来た。
呪いの魔法を張られているであろうこの空間で俺が本気を出すということは自分で自分の首を絞めているのと同じだ。
心ではまだ戦えると思っても呪いを無視した動きが出来なくなり、壮絶な痛みと共に地面に片膝をつく。
『絶望したか?』
女の楽しそうな声が耳に残る。
あぁ、俺はそんな強い奴じゃない。
絶望を希望に変えた? この世界で希望を見たことより絶望を見たことの方が多い。
今も俺の弱さに絶望してるよ。
『無様に死ね』
ノロノロと俺に向かってくる光。
もう俺に抗うすべはない。
『弱いな、俺は』
光りが剣の勇者とアリアスを食らう。
剣の勇者を飲み込んだ光を見つめながら女は高らかに笑っていた。
俺達は闇の女神に殺されて転生したみたいだな、それなのに忘れていた。
「あの頃の俺じゃないぞ」
闇の女神は再現するかのように弱体化の魔法を全力で張る。
『力を貸してくれ』
俺の声に共鳴するように精霊の指輪が光る。
『ユウ様遅いですよ』
水の精霊神アオイの声が心を通して響くと、俺の周りに六本の精霊の柱が降りてくる。
精霊達は姿を現し光の玉に変わると俺の周りをクルクルとまわる。
「呪いの魔法を防ぐのに精霊達も精一杯で限定精霊化も出来ないよね」
闇の女神はそれでも笑みを崩さない。
「アリアス、ミリアードの誤解を解いとかないとな」
『ホーリークリエイト』
ブゥンと大型スクリーンが四方を囲むように展開される。
今は世界中に大型スクリーンが現れていることだろう。
『闇の勇者様、邪神様、維持を頼みます』
アリアスがユウカとフィリアにスクリーン魔法の維持を頼む。
「僕たち雑用ばっかりだね」
「そうだな、我やユウカには荷が重い」
ユウカ達の横に虹色の光が集まる。
『間に合いましたか』
ミミリアが虹色の光から現れる。
「ミミリア何しに来たんだ?」
「クレスにはグランゼルが必要だろうと思ってな」
ミミリアは全部思い出したようだ。
「お前は意味を理解できたらしいな」
「全部理解できたから私はここにいる」
ミミリアも女神が転移するのを手伝ったらしい。
「剣聖適正は終わったのか?」
「剣の勇者の剣術を会得している私が遅れを取ると思うのか?」
ミミリアが腰にかけているグランゼルを鞘ごと俺に投げる。
『次はクレスの番だ! 今度こそリリアを悲しませるような事はするな』
俺はグランゼルを受け取ると腰にかける。
俺はバカなお兄ちゃんだからな、リリアを幸せにしようと思ってしたことは何時も悲しませる事だった。
今からすることも全てリリアを悲しませる事だと思う。
ミミリアの答えに俺は自信を持って返すことができない。
だが自信を持って言える事もある。
『リリアが幸せになるだろう未来は俺が奪い返してやるよ』
闇の女神を野放しにすればいずれ世界が滅ぶ。
抗う者が居なくなれば、それは決定した未来。
この世界は本当に理不尽だな。
俺の姿を形作る闇の女神に金色のオーラを纏う黒剣を向ける。
神を超えた存在を前にして、一歩も退かない剣の勇者は全世界に向けて宣言する。
『俺が剣の勇者だ! 今から俺が世界を救ってやるよ』
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