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最初で最後の
しおりを挟む俺は全世界に向けて宣言する。
「俺が剣の勇者だ! 今から俺が世界を救ってやるよ」
そう言うと闇の女神は大地を揺るがす程の魔力を吐き出す。
俺の身体全体が震えている。
武者震いだろうか、勝つビジョンが全然わかない、死ぬ気で足掻いたら見えるだろうか。
コイツに勝つビジョンが。
「私はお前の力を使えるんだぞ、これが終われば世界を滅ぼすというのも面白いかもしれん、光の女神の絶望した様を見るのが今からでも楽しみだ」
「その中にリリアは入ってるのか?」
「勿論だ」
女神は虫けらを見る目でリリアを見る。
俺の目の前でそんな事をする奴を見逃せる筈がない。
俺の中でグツグツと煮えたぎる怒りが、頂点に達する。
「ミミリア、お前はグランゼルと俺の剣術を全部理解したと言ったな」
急に話を振られたミミリアだったが真面目に答える。
「あぁ、全部理解し……」
俺はミミリアの声を遮り答えを出す。
『いや、全部は理解できない筈だ』
その意味は俺しか理解出来ない事だからだ。
「ユウ様やめてください!」
アリアスは俺の答えの意味が分かったはずだ。
だから必死で俺を止めようとする。
精霊達は俺の出した答えを受け入れているのか一言も声を出さない。
俺はグランゼルに手を添える。
死ぬ気で挑まないとコイツには勝てない。
身体の中で血が逆流するかのように苦しく、血が高速で巡っているかのように熱く。
『俺は剣の勇者、その名はユウ・オキタ。グランゼルお前の力を俺に貸せ!』
俺の叫びと共に俺の身体から赤いオーラが滲み出る。
右手に持っていた黒剣も金色と赤のオーラが混じり合う。
力強く黒剣を握るとパリンと音が響き黒剣の姿が消える。
「何をした! 剣の勇者!」
相対して挑発的な笑みを崩さなかった闇の女神が初めて後退する。
『悪いな、手加減は出来そうにない』
俺は何も持っていない状態から闇の女神に突っ込む。
『リミテッド・アビリティーフルオート』
無数の黒剣が闇の女神を囲むように召喚される。
そのどれもが赤と金色のオーラを纏う。
手元に現れた黒剣を握りそのまま闇の女神を斬りつける。
その衝撃で地面が割れ空間が歪む。
「ぐはっ! お、まえ! 自分の命を削ってるのか!」
使い捨てのように理不尽を切り裂く壊れない筈の剣が壊れていく。
「そうだ、俺の妹に手を出した奴は絶対に許さねぇ」
言葉を交わしても止まることはない斬撃。
苦しい、苦しい、苦しい!
だけど止まることは出来ない、コイツを道連れにするまでは。
身体が燃えるように熱い。
止まっているかのように遅い空間で闇の女神も抗おうと虹色に輝く剣を出す。
黒剣と虹色に輝く剣が交差する。
全ての力を黒剣に集めるが一撃必殺の剣でも闇の女神には届かず押し返される。
「面白い、面白いぞ、だが私には届かん、絶望したか? 剣の勇者!」
絶望にはまだ早くないか?
『なぁ、アリアス』
アリアスは前もって詠唱をしていたのか絶対の魔法を発動する。
『絶対召喚』
一瞬だけ俺の姿が消えるとアリアスも赤と白銀のオーラを纏う。
「ユウ様の無茶に付き合うのはいつも私ですよ」
一言呟くとアリアスは詠唱に移る。
『私の想いを力に』
アリアスの姿が消え、想いだけが俺の中に入る。
『ホーリークリエイト』
それは精霊になる魔法。
『付き合わせて悪いな』
『いいえ、貴方の隣に立つのは私だけですよ』
『あぁ』
二人だけの想いが溶け合う。
『限定精霊化』
蒼の瞳が金色に変わる。
『これでお前は俺に追い付けるか?』
黒剣が無数に浮遊するこの世界で俺の握る剣は。
透明な剣。
「私は絶望を見たいんだよ!」
四方に囲まれたスクリーンは元の世界の映像を闇の女神に見せつける。
その写る人物達、全員が何を想っているのか。
「嘘だ!」
その全ての人物が剣の勇者が勝つことを疑わない、希望に満ちた目でスクリーンを眺めていた。
『俺の妹に手を出した事を後悔しながら死んでいけ』
無慈悲にも闇の女神の周りに召喚された黒剣が全て闇の女神に降っていく。
虹色に輝く剣で闇の女神は弾き返そうと剣を振るが少しづつ黒剣が掠り始める。
「終わってたまるか! 私は死んでも復活出来る!」
「それは無理だ」
「なぜだ!?」
闇の女神はそれでも足掻き続ける。
「剣の勇者が持つ剣は何を切り裂くか知っているか?」
「まさか!」
『そうだ、理不尽を切り裂く』
俺は闇の女神にゆっくりと近づき透明な剣を振り下ろす。
黒剣を弾き返している闇の女神はその一振りを弾き返す事なく受け入れるしかなかった。
『どうだ? 絶望したか?』
「剣のゆうしゃぁぁぁぁぁ!」
透明な剣は空間ごと切り裂き、絶望の声を残しながら闇の女神は消え失せた。
「先に行きますよ」
終わった戦いの中でアリアスは俺に少しの力を与えて粒子になり俺の中から、この世界から消えた。
俺にはまだやらないといけないことがある。
金色の瞳も蒼色に戻り、赤いオーラも透明な剣も無数に召喚されていた黒剣も消える。
眠っていたリリアの頬を風が撫でる。
「んっんん」
イタズラ好きの風のせいでリリアは目覚めたようだ。
「お兄ちゃん!」
リリアの俺を呼ぶ声に嬉しさが込み上げてくる。
だけど俺にはそれを喜んでいる時間はない。
「リリア剣を出せ!」
「えっ?」
目覚めたリリアに俺は最後の陳腐な演技をする。
『最初で最後の兄妹喧嘩だ』
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