天才な妹と最強な元勇者

くらげさん

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少女

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 ここはどこだ?

 意識がある?

 辺りを見回すが真っ暗な場所。

 俺は死んだはずだが。

 転生か?

 突然に意識が戻った俺の目の前に光が現れる。

 真っ白な光が。

 俺はなんとなく小さな光に手を伸ばす。

『私の大事な希望をどうか助けてください』

 触れたと同時に声が聞こえた気がした。



 真っ暗な場所から火の海が周りを囲むように燃え盛る場所に視界が切り替わる。



『倒れた少女に止めを射すのは俺の趣味なんだよなぁ~』



 俺の目の前に少女を今にも殴り殺そうとする男がいた。

 急な展開に何も分からない俺だが......これだけはわかる。

 俺は足を進めながら男に声をかける。

「ほう、それは随分と気持ち悪い趣味だな」

 月明かりが俺に当たると男は俺を視界におさめる。

「誰だ?」

「頭悪い奴等はそれしか言わねぇな」

「きゅい!」

 俺の肩にかかる重さと鳴き声を聞いてアリアスもいると初めてわかる。

 俺と同じように転移させられたのか?

 情報の整理はいいか、まずはこの気持ち悪い奴を消す。



『俺は剣の勇者だ』



「剣の勇者がこんな所にいるわけねぇだろ!」

 男は少女に興味を無くしたかのように俺に殴りかかろうとするが。

 今さっきまで俺が誰と戦ってたと思ってんだコイツは……見てないの?

 邪神とお前じゃ動きが違いすぎるんだよ。

 俺は黒い炎を纏った拳を容易く避ける。



「ちょこまかと鬱陶しいんだよ!」

 一発も当たらない事に男は苛立ちを見せている。

「お前はこんな所で何してたんだ?」

「何してたって? 俺の通り道に家があった邪魔だから全て壊した! 文句あるか?」

 久し振りにそんな横暴を聞いた気がする。

 俺が勇者やってた時の魔族達がだいたいコイツみたいな感じだったな。

 まさか過去に戻ったか? それとも今さっきじゃなく、時が経ってるとか? 別の異世界とか?

「次は俺からの質問だ! お前は剣の勇者と言ったな、何故こんな所に剣の勇者がいる!」

 俺は何故か腰に掛かっているグランゼルを引き抜く。



『助けを求められたからだ』



 一瞬。

 グランゼルは男を切り裂く。

 切り裂かれた男は、声を発すること、息をすることのない物へと変わる。

 魔法石を残して消えていった。

「やっぱり魔族だったのか」

 グランゼルを鞘に戻し状況を整理する。

「おい、アリアス、これはどういうことだ?」

 優しい光が肩に乗っているチビドラゴンから発せられると人の形に変わる。

『人化』

「私にもさっぱりです。真っ暗な場所で真っ白な光に触れたらユウ様の肩に乗ってました」

 ふむ、全然わからん。

「さてだ、コイツをどうするかだけど」

 俺は気を失った少女を見ながらアリアスに考えを任せる。

「この状況を見る限りですが……」

 屋敷の現状を見る限り、生き残りはこの少女だけ。

 ここに残して行くという選択肢は。

「ユウ様はそんなことしませんよね」

 アリアスの微笑みと共に消え失せる。

「どうすっかな~」

 俺達は少女が目覚めるまでは何も始まらないと待つことにした。



 アリアスはチビドラゴンに戻り、数時間が過ぎる。

 空も明るくなり始めると屋敷の全体が段々と見えてくる。

 元は立派だっただろう屋敷が残骸になると、その場で起こった無情さを際立たせる。

「う、ううん」

 お姫様はやっと目覚めてくれたようだ。

 明るくなった視界で俺は少女を見て固まった。

 あまりにも俺と雰囲気が似ている。

 銀髪の長い髪に蒼色の瞳。

 小さい頃のリリアに似てると言った方がいいのか?

 しいて言うならリリアはふんわり系の美少女でこの少女は学級委員とかしてそうな美少女の違いだ! わかる?

 そんな事はどうでもいい!
 
「……大丈夫か?」

 大丈夫な訳がないと思いながらも無難に声をかける。

 俺を視界に捉えた少女は俺に問う。

「お母様は?」

 少女は怖い夢を見ていたかのように怯え、ただ母を呼ぶ。

「昨日の事を覚えてるか?」

「お、母さ、まが……怖い、人に……お屋敷も」

 ポツポツとその少女は涙を流す。

「お母様、がね」

「あぁ」

「助けて、くれるって、剣の勇者、様がね、助けてくれるって!」

「あぁ」

 俺は相槌を打つぐらいしか出来ない。

「うっ、なんで、助けてくれなかったの? 剣の勇者様は、ピンチの時に助けてくれるって!」

「そう、だな」

 俺は拳を握りしめる。

「全部剣の勇者がやったことだ」

「剣の勇者様が?」

「剣の勇者は助けに来なかったなら、守れなかった剣の勇者が全部悪いに決まってるだろ」

「お母様は剣の勇者のせいで死んじゃったの?」

「……あぁ」

 少女は大声を出す、屋敷に向かってなのか死んだ母に向かってなのか。

 俺はそれを見守る事しか出来なかった。

 守れなかった事実、そこには間違いはないからだ。

 辛そうに泣く少女の顔を見た俺には、どうしようもなかったという言葉だけは使いたくなかった。



 泣きわめいた少女が落ち着いた頃にポツリと呟く。

「私は一人なの?」

 少女の瞳には薄暗い闇が巣くっていた。

「寂しいか?」

 俺はその呟きに答える。

「寂しいよぉ」

 俺を見ながら涙を浮かべる少女。

 少女に近づいた俺は強く抱き締める。

 ビクッとなる少女の頭を撫でると安心してくれたのか少女の身体から少しずつ力が抜けていく。

「名前を教えてくれないか?」

「フラン」

「家の名前はわかるか?」

「お母様が教えてくれなかった」

 家名を教えなかった?



『そうか、フランは今から俺が守ってやる、もう辛い想いはさせないからな』



 ぎゅっと抱き締め返すフラン。

「貴方の名前は?」

「クレスだ、こっちがソーダ」



 俺に見捨てるという選択肢は。

「きゅい!」

 ないよな。


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