天才な妹と最強な元勇者

くらげさん

文字の大きさ
105 / 201

英雄は俺です

しおりを挟む






 俺はフランの面倒を少しのあいだ見ることにした。

 フランが言うには山を二つ越えた辺りにルナリアという国があるそうだ。

 ルナリアの王様には色々と世話になっていたと言うのでそこまで連れていけば俺達の役目は終わりだろう。

 家名を子供に教えなかったというのはどういう事なんだ? 王様と知り合いで世話になるほどだからフランの親は相当に地位が高いよな。

 魔族が突然に現れた事も何かあるとしか思えない。

「ソーダちゃんは可愛いね~」

 歳は六歳と言っていたから今はチビドラゴンのアリアスと二人で戯れている。

 周りは何処を見渡しても木、木、木。

 馬車が通れるギリギリの道を今進んでいる。

「こっちで合ってんのか?」

「はい、お母様はいつもこの道を真っ直ぐ行ってました」



 永遠と続く森を進み、暗くなってきたので夜営の準備に取りかかる。

 枯れ木拾いだけだが……布団とかないし。


 拾い集めた枯れ木にソーダが炎を吐いて火をつける。

 屋敷の残骸から僅かに残っていた食料を食べながら俺は疑問に思った事を聞いてみた。

「フランは母親と二人で暮らしてたのか?」

 あの魔族が一人一人丁寧に焼き殺していたなら不自然ではないが、あの魔族の性格上そうとは思えなかった。

 そして屋敷の残骸は不自然なほど綺麗だったのだ。

 生臭い死の臭いが全然しない。

「お母様と私の二人だけですよ」

 こんな辺境で二人暮し?

「そうか、ルナリアには王様に会いに行ってただけか?」

「ルナリアは凄く静かな所なんだよ~私は王様と騎士さんしか見たことないですけど」

 俺の考えが正しければ胸糞悪い。


 食事も終わり、俺は枯れ木を火に放り投げながら火を消さないようにする。

「クレスさん、隣で寝てもいいですか?」

 向かい合ってたフランが一度はその場で寝ようとしていたみたいだが起きて俺に尋ねてきた。

「いいぞ」

 嬉しそうに微笑むフランはせっせと俺の左隣に来て木にもたれ掛かっている俺の横に座る。

「眠れないのか?」

 あんな事が起きた後だ、眠れと言われても眠れるはずがない。

 ポテッと俺の左肩辺りにフランが身体を預けてくる。

 突然の事にちょっとだけ動揺したが顔を覗いてみるとすーすーと寝息をたてて眠っていた。

 フランはずっとアリアスと遊びながら山を進んでたんだ俺より体力を使っていただろう。

 それを考えれば眠れないって事はないのか。

 俺の膝の上はアリアスが独占していて、そのアリアスも今は眠りの中だ。

 俺は眠っているフランを起こさないようにしながら地面に寝かせる。

 そしてアリアスもフランの傍に寝床を移させる。

 今日は寝れそうにないな。

 俺はグランゼルを引き抜くと気配を頼りに近寄ってくる魔物達を倒しまくった。



「クレスさん!」

 遠くから俺を呼ぶ声が聞こえる。

 もう朝か。


「悪いな、ちょっと川で顔を洗ってたんだ」

「そうですか」

 安心したような顔をするフラン。

 また不安が押し寄せて来たのかもしれない。

「よし行くか~」

「きゅい!」

 アリアスも俺の左肩の定位置に乗ると鳴き声を出す。



 朝はフランとアリアスが戯れながら歩き、夜は野宿。

 そして俺は一睡もせずに魔物を倒す。

 狙われすぎだろ、魔物達も毎晩働かなくても一日ぐらい休んでもいいんだよ。

 こんな日が一週間続いた。



「クレスさんは眠れないのですか?」

「いや、今日もぐっすりだ」

 俺を心配そうに見つめるフランにアクビをしながら答える。

 山を二つ越えた所なんて嘘だよね?

 マジで遠いんですが。

 そんな事を思いながらも坂道を進む。

 坂道を登りきった所でようやく国が見えた。

「あれがルナリアか?」

「はい!」

 内心ガッツポーズ。

 やっと眠れる。

 俺の後ろには森が生い茂っているのに。

 坂道を境に草原が広がっている。

 その広大な草原の真ん中に高い壁に囲まれた国が見える。

 ここは山の頂上みたいなとこがあるからな、国の全貌を見ることができる。

 目的地が見えた今、自然と足が速くなる。



 そこから数時間で門に到着。

 見えたからって近いとは限らない。

「身分証を見せろ」

 門を潜ろうとすると騎士に止められた。

「わかった、わかった」

 まぁそうだろうなと思いながらも俺は首に下がっているネームプレートを……。

 な、ない。

「悪いな、魔物との戦闘の最中に無くしたみたいだ」

 なんでグランゼルは持ってきてネームプレートだけ持ってきてねぇんだよ!

 今更ながらに気づいたわ!

「そうか、なら一人一ゴールドだ」

「ゴールドって高いな」

 入場料一万円。

「身分証がないからな国に入るだけでも金が高くなるんだよ」

 入場料は普通十シルバーらしい千円ぐらいだ。

 冒険者プレートがないなら仕方ないよな。

「この魔法石があれば足りるか?」

 俺は騎士に袋にいれておいた魔法石を投げる。

「こ、これは」

 袋を開けると騎士は驚く。

「名のある冒険者様ですかね、名前を聞いても大丈夫ですか?」

 さっきまでの態度とは違う手のひら返しに俺が驚くわ!

「クレス・フィールドだ」

「その人の名前を口にするとは冗談がお好きなようだ、これ程質が高い魔法石を取れる腕は確かです」

 冗談?

 すると騎士は魔法石を俺に返す。

「そんな御方から金を取るなんて俺には出来ません、どうぞ」

 結論騎士は良い奴だった。


 国に入るとフランから聞いていた静かな国というのが嘘のように賑わっていた。

「フラン、これはどういう事だ?」

「わかんないです」

 身分証はフランも屋敷と共に無くしたというし、家名がわからないなら再発行も出来ない。

 俺達は冒険者ギルドに向かうことになった。

 フランもないと困るだろ。

 俺のは再発行出来る筈だ!





 そして俺は再発行も出来なかった。

「嘘ですよね」

「えっ? クレス・フィールドで登録したはずなんだけど」

「はい、クレス・フィールド様なら一人居ます」

「なら再発行も問題ないだろ、その中から手数料は引いてくれればいいから」

「貴方の何処をどう見たらレジェンド級の冒険者に見えるのですか?」

 えっ?

 確か中級だった気がするんだけど。

 冒険者には初心者、中級者、上級者、マスター、レジェンドという階級がある。

「まてまて、レジェンドって嘘だろ? 魔力で確認とか取れないのか?」

「取れますが、無駄な事はしたくないので検査にもそれなりの経費がかかるのですよ?」

 本人だから!

「あまり調子に乗っているとリリア様に連絡いたしますよ」

 ……リリアだと! 

 俺がリリアにびびったと思ったのかお姉さんは続ける。

「リリア様のお兄さまは世界を救った英雄です。そこに居合わせ皆様からの証言で中級だったクレス様の冒険者ランクがレジェンドへと変わりました」

 なんて事をしてくれたんだ。

「残念ながら私達がみた英雄の姿は鮮明にとは程遠く貴方みたいな輩はたまに現れるのですよ、世界を救って貰った英雄に礼儀という物がないのですか! 貴方は!」

 なんで怒られてんの?

 リリアに連絡されたら困る! 俺の死を乗り越えて成長したリリアに会いたいが俺の事が大好きなリリアの事だ! 俺がいたら女の幸せという奴が逃げてしまうかもしれない。

 いや、もしもリリアの傍に男の気配がしたら、俺はリリアが好きになった男を殺しかねない。

 自制心で止められる気がしない。

 俺の殺気が少し漏れたようだ、お姉さんがビクッと肩を揺らす。

「すいません、嘘です。でもクレス・フィールドというのは本当なので新しく作って貰えませんか? ここに魔法石もあるので換金してください」

「次に英雄様の名を借りて悪いことをしたらリリア様に連絡が行きますからね!」

「もう一人登録したいんですが」

 俺はギルドの前に待たしていたアリアスとフランを連れてお姉さんの所に戻る。

「名前はなんですか?」

「私の名前はフランです」

 フランが名前を言った瞬間にお姉さんは動揺して持っていた魔法石を床に落とす。

「フラン・フィールドです、俺の妹!」

「そ、そうですか、少し取り乱してすいません」



 やはり何かあるなこの国とフランの関係には。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた

砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。 彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。 そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。 死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。 その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。 しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、 主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。 自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、 寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。 結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、 自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……? 更新は昼頃になります。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...