天才な妹と最強な元勇者

くらげさん

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兄妹

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 精霊神達は近くに居るが近くに居ることを疑うぐらいに完璧に魔力と姿を隠している。

 ルナリアを出ると出来る限り遠くへ行くように走る。

 俺はヴェルドが言っていた最凶の娘と言うのが引っ掛かっていた。

 フランを背負いながら走る俺にユウカは声をかけてくる。

「クレス君はなんでフランちゃんが皆んなから遠ざけられていたか知ってるかい?」

「知らないな、フランの能力が関係しているんだと思うが」

「それはね……」



 俺はルナリアで重なった不幸をユウカから聞いた。

 それはあまりにも理不尽。

「なんだそれ? 普通じゃないのか? 逆に何故そんな事があってルナリアが無事なのかは謎だけどな」

 俺が勇者していた時はもっと酷い不幸が重なっていた国も沢山ある。

「あの国は勘違いしたんだよ……親が良かったのかな、まだ自意識がない赤ちゃんが国を守るために自分の能力を使った」

 赤ちゃんは親を見て何が良い事か、何が悪い事か無意識に自覚するって言うもんな。

 フランは今国を守ることが良いことだと思ったんだろう。

「干からびた大地が広がる国に、謎の病がある国に、魔物の襲来が絶えない国に、誰が足を運ぼうと思う? それだけの事がありながら不思議と国は普通に回っていたんだよ、運が良いとしか思えないよね」

 確かに運が良い。

「俺がここに来たのもフランがやった事かもな」

「きゅい!」

 アリアスも思い当たるようだ。

 あの謎の光と声。

「俺は誰かに召喚されたんだよ、あれはたぶんフランの母親だ」

「相当に運が良いねフランのママは消えたはずの勇者を復活させる事が出来たなんて奇跡としか思えないよ」

 不特定多数の魂から俺達を見つけ、不可能に近いが自分の命を犠牲に俺とアリアスを生き返らせた。

 だけどフランの母親が俺達に言った言葉。



『私の大事な希望を助けてください』



 微塵も失敗なんかしないと思っている声音だった。

 フランの能力を母親は知っていたのか? 

 たぶん知っていたな。


 ユウカは話題を変えるように声音も変える。

「と言うことでクレス君も見つけたし、リリアちゃんの所へ帰ろうか」

 だがその申し出に俺は立ち止まる。

「い、いやだ!」

「なんでだい?」

「俺が消えて何年経ってるんだ」

 ユウカも走るのを止める。

「八年だよ」

「ユウカ変わらなすぎじゃないか? 少し身長が高くなったぐらいか……」

 月明かりで下から上までユウカをマジマジと見る。

「……その視線は不快なんだけど」

 俺は咄嗟にユウカの胸元から視線を外す。

 全然成長してな……。

『神化』

 ユウカは虹色のオーラルを纏った。

「それ以上考えたらダメだよ」

 やべぇよ、ガチじゃん。

「でっ? なんでリリアちゃんに会いたくないのかな?」

「俺がリリアの周りの男を全て殺しかねないからだ」

「その目は本当にしそうだから! そうだね、リリアちゃんに言い寄ってくる男の人は多いよ、その男の中でも特に危険なのはアクア君だね、今は剣聖になってるから」

 よし、殺そう。

「いやダメだよ!」

「何も言ってないけど?」

「殺気がダダ漏れなんだよ、隠す気もないってぐらいに」

「これでわかっただろ、俺はリリアには幸せになって欲しいからな! でもそれ以上にリリアを取られたくない」

「それならもうリリアちゃんと付き合っちゃえばいいのに、僕もおまけでついてくるよ?」

 いや、それはダメだろ。

「リリアちゃんには承諾済みだから」

「ちょくちょく俺の心の中を読むのやめないか!」

 しかも承諾済みって。

「きゅい!」

「アリアスちゃんも賛成ならこっちに来なよ、リリアちゃんはクレス君を好きならしょうがないって言ってたよ」

 アリアスは俺から離れユウカの肩に乗る。

 裏切ったな!

「リリアと俺は兄妹だし」

「この世界では関係ないよ」

「俺はリリアの幸せを望んでるだけなんだよ」

「絶対にクレス君がリリアちゃんを幸せにした方がいいんだけど……それならクレス君の考えが変わるまで保留で」

 俺はリリアの新婚生活を見て、しゅうとめみたいに愚痴を言いながら食っては寝るの生活を繰り返して、新婚の二人の時間を極限まで減しながら毎日を過ごすのが俺の将来の夢なんだ。

「いやいや、それはそれでウザいよ!」

「リリアを男に取られたら俺はソイツの愚痴を永遠と繰り返すことしか出来ない」

「リリアちゃんにウザいって言われるよ」

「その時は潔く死にます」

「さ、さすがシスコンだね」

 当たり前だろ、好きな人からウザいって言われるんだぞ。生きてる方が辛い。



「……クレスさん?」

 フランが起きたようだ。

「わ、私……おじ様を……」

 俺はフランをその場で降ろす。

「大丈夫だ、おじ様は助かった」

 まぁ、助かってるだろ。

「ほんとに?」

「あぁ」

 フランは涙を流す。

「よかったぁぁぁ、よかったよぉぉぉ」

 フランは自分の事より先に王の事を心配した。

 酷い事をされたのにだ。

 俺はフランの頭を優しく撫でる。

「私はこれからどうすればいいのでしょう」

 母も失い、ルナリアでは罪人であろうフラン。

 居場所はない。

「実はな! フランはフラン・フィールドなんだよ」

「えっ?」

「お母様から頼まれてな、フランを助けてほしいって連絡が来てな! 妹のピンチにギリギリ駆けつけたって事だ!」

「お母様は一度もお兄様が居るとは」

「お、お父様の所に居たんだよ」

「お父様は私が幼い頃に亡くなってしまったって」

「家庭にはな、フランの知らない複雑な事情と言う奴があるんだ」

「お父様は生きてるのですか!」

「……いやいや、え~と」

 嘘下手くそか! そういえば俺の弱点か!

 しどろもどろになっている俺を見かねてユウカが間に入る。

「僕が変わろうか、クレス君とフランちゃんのお父様は亡くなってしまった、その時に身寄りがないクレス君を引き取ろうとフランちゃんのお母様が思い付き、クレス君はお母様に呼ばれて屋敷に向かっていた」

「そうそう! だから俺はあの時、屋敷の近くに居たんだよ」

「そうだったのですね!」

 あっあぶねぇ。

 これでフランは気兼ねなく俺に頼れるだろ。

 容姿も似てるし。

「フランの家名はフィールドで俺はフランの兄だ!」

「お兄様なのですね」

 何故家名を教えなかったのかは母親と父親が孤児だったからだ。

 剣聖の称号を貰って家名を自由に名乗れたがどうせなら自分の娘につけてもらおうじゃないかと保留にしたらしい。

 とフランの粗方の事情は逃げる最中ユウカに教えてもらった。

「お兄様、私はまだ一人じゃなかったのですね」

 さっきまで泣いていたのに今は笑顔をちらつかせる。

 ずっと不安だったのだろう。

「お兄ちゃんになんでも頼りなさい!」

「はい!」



 そんな二人を見ていたユウカは呟く。



『クレス君は本当に妹には甘いんだから』



「きゅい」

 ユウカの呟きにアリアスは同意した。

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