天才な妹と最強な元勇者

くらげさん

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遅刻

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 フィーリオン剣士学園には納税制度がある。

『は~い、新入生もこのゲートを通ってください』

 それは生徒だけの制度。

 ソフィアという学園の優等生が仕切っている行為なので、それを知っている教員は黙認する。

 もちろんリリアは知らない。

 寮から学園の通りに設置されたゲートは殆どの教員に知られる事はない。

 寮に住んでいるフランも標的にされる。

 ゲートを素通りしようとしたフランに上級生が声をかける。

「そこの新入生! こっちだって」

 だがフランはそんな規則は聞いたことがないと首を傾げる。

「学園の規則にありましたか?」

「学園生活を不自由なく過ごしたいなら金を納めるんだよ」

 だがクレスから貰ったお金をこんな事で使うのは馬鹿らしいとフランは思った。

「私、その、お金があまり無くて」

「たったの一ゴールドだぞ」

「それを毎日ですか?」

「そうだな、優秀な成績の者には役職が与えられ還元という形で生徒から集めた金が配られる」

「お兄様から必要な分のお金だけを貰ってきたので手持ちがあまりないです」

「きゅい!」

 フランの肩に乗っているアリアスも同意する。

 だが男は引かない。

 フランの身体を舐め回すように見ると。

「お前は今から俺に服従しろ! よく見たら可愛いじゃねぇか」

「え?」

 男はフランの腕を掴む。

「痛いです! 離して!」

「金が払えないんだろ?」


 ボッとアリアスが男に向かって炎を吐く。

「アツ!」

 男はたまらずにフランから手を離す。

「ソーダちゃんありがとう」

「きゅい!」

 男は緑色のオーラルを纏い火を払う。

「チッ! ドラゴンの躾もなってないみたいだな」

「お兄様から理不尽な事にあっても決して従うなと言われているので」

 フランも男と対面する形で白銀のオーラルを纏う。

「新入生はドイツもコイツも俺に歯向かいやがって! 昨日もクレスとか言う奴に……クソが!」

 男は何かを思い出して怒っているようだ。

「俺は三年Sクラスのマルコフだぞ! コケにしやがって」

 マルコフは自分の拳にオーラルを集める。

 フランも昨日リリアから返して貰っていたグランゼルを引き抜く。

「ッ!」

 フランが剣を構えると同時にマルコフがフランの目の前に現れた。

「上級生に対して逆らったんだ、お仕置きが必要だよな」

 拳がフランの真上から降ってくる。

 グランゼルで受け止めるフラン。

 剣でガードしたにも関わらず、フランは後ろに吹き飛ばされる。

「わかっただろ、お前じゃ俺には勝てない」

「はい、わかりました……実力じゃ敵いません」

「逆らうんじゃねぇ!」

「ですが! 理不尽な事には従いません!」

「そうか……なら、身体にわからせてやるよ!」

 マルコフは瞬時にフランの目の前に現れ、それをフランはグランゼルで受ける止める。

 マルコフの攻撃がまともには入っていないが、一撃が強烈でフランは吹き飛ばされる。

 フランが体制を立て直した所で容赦なくマルコフは追撃をかけてくる。


 何度も何度もフランはその追撃をグランゼルで受けながら吹き飛ばされる。

 そしてもうフランには受ける力は残ってない。

 フランが本格的に剣術を学んだのが二年前からなのだ。

 手加減している闇の勇者と打ち合えるぐらいには強いと言っても練習と本番では違う。

 相手の殺気に精神がすり減らされる感覚を味わったことが無いフランは実力の半分も出せないまま手足が震えて身体が言う事を効かない。

「はぁ、はぁ」

 フランが体制を立て直した時に前を向くとマルコフは拳を振り上げた状態で止まっていた。

 そしてフランに選択肢を迫る。

「金を払うか、俺の物になるか選べ」

 周りはもう誰も居ない、マルコフとフランだけ。

 みんなは巻き込まれるのが怖くて先に学園に行ったのだろう。

 フランの答えは最初から決まっていて。


『嫌です』


 フランの答えにマルコフは眉間にシワを寄せると。

「まだわからねぇようだな!」

 止めていた拳をフランに向けて降り下ろす。

 容赦なく降られた拳は……。


「きゅい!」

 フランの肩から飛んだアリアスが身体を張って止める。

「ソーダちゃん」

 白銀のオーラルを全身に纏った黒の小さなドラゴンはマルコフの拳を頭で受けたまま動かない。

 マルコフは拳に力と魔力を込めるが、びくともしないアリアス。

「なんだコイツは、俺の拳を!」

 マルコフとアリアスとでは魔力量と質が掛け離れすぎてダメージは生まれない。

 拳がアリアスから離れ、マルコフは一歩二歩と後退する。

「なんでだ!」

 アリアスから濃密な魔力が垂れ流される。

 マルコフを威嚇するように。


 その時に学園の始まりを告げるベルが鳴る。

「チッ! ここまでにしといてやる、ソフィア様に知れたらお前タダじゃすまないぞ!」

 マルコフはフランを残して何もなかったように学園に向かっていった。

 ほっと一息ついたフランは、その場に座る。

 アリアスもフランを気遣うように肩に座りペロペロと頬を舐める。


『本当にアリアスちゃんに助けてもらっちゃった』

 
「きゅい!」

 少し休憩しながらアリアスと戯れた後にフランは遅刻して学園に向かうのだった。

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