天才な妹と最強な元勇者

くらげさん

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魔力全開放

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 リリアと一緒に学園に来た俺は昔とは違う豪華な椅子にふんぞりかえる。

 俺は遅れて来たはずなのにフランはまだ来ていないみたいだ。

 なにかあったのか?

 俺が心配している時に扉が開く。

「お、遅れました!」

「いいですよ、私も遅れたのでフランちゃんの事はあまり責められないです」

 リリアは職員室にも向かわず俺と一緒に教室に来たのだ。

 まさか俺の教師がリリアだとはな。

 フランの席を俺の隣だ。

 教室に入って来た時から気づいていたがフランの新しい制服が所々ボロボロになっていた。

 気にした素振りも見せないフランに俺が気にしてもしょうがないだろう。


 俺は窓側の一番奥の席だった、運がいい!

 昔はリリアも俺の隣の席だったな。

 俺は懐かしい気持ちになる。

「よろしくお願いします」

 何故か俺に向かって挨拶をしてきたフランはそのまま席についた。

「きゅい!」

 アリアスも元気そうだ。

 リリアは俺をチラリと見て話を始める。

「それでは最初の授業を始めます、まずオーラルを発現してください」

「あれ? 自己紹介とかしないの?」

 俺は咄嗟に声を出してしまった。

「昨日終わりました。それにクレス君の名前はもう学年中に知らない人はいないので、する必要はないですよ」

「えっ? まじで?」

「私もあまり昨日の始業式の事は休ませて貰っていたので詳しく知らないですが……クレス君は生徒の中で誰にも破られないと言われているソフィアさんの魔法障壁を破ったそうですね」

 なぜそれを家に居る時に言わない!

 だから俺は入学式を出る時にその場で誰にも止められなかったのか。

 普通は教師とかが止めるもんな。

「リリアは破れるのか? その障壁を」

「ソフィアさんはまだ生徒ですよ、本気は出せませんが……それでも破れるでしょうね」

 そりゃそうか。

 ソフィアは能力に頼って向上心が見えなかった。

 天才で努力しているリリアが負けるはずがない。

「少し話がそれましたが、皆さんオーラルを纏ってください」

 俺だけを残して周りは色とりどりの魔力を纏う。

 これ一回やったことあるわ。

「クレス君はオーラルを纏わないのですか?」

 ん?

「私と戦った時の膨大な魔力を全然感じないから変なんですよ」

 う、疑われてる。


『クロ!』

『はい、ユウ様』


 俺の身体を黒銀の魔力が包む。

「きれい」

 ボソッと隣から声がした。

 声の方を見るとフランがこっちを見ていたが、目を合わせただけで反らされた。

 リリアは俺を見ながら呟く。

「本当に綺麗ですね、魔力そのものみたいに」

 精霊使ってるのがバレてる?

「皆さんもクレス君を見習って修練を積んでください、私でもあんな綺麗な魔力は出せませんので」

 リリアがパンパンと手を叩いた後に。

「ラグナロクの予選に備えて魔力コントロールを集中的にやっていきます。コロシアムに移動してください」

 リリアの指示に従い、俺達はコロシアムに向かう。



 コロシアムに着くとユウカが待ち構えていた。

『臨時教師の勇者が君たちに教えてあげるよ』

 なんでいるんだよ。

 リリアも驚いてるし。

「学園には話を通してるから大丈夫だよ、お願いしますって頭を下げられたぐらいだし」

 さすが勇者だな、本当に来るとは……。

「ユウカさん! お兄様と一緒にいたんじゃ?」

 フランがユウカに声をかける。

「僕の直感がこっちに来いって言ってたんだよね」

 嘘だな。

「そうなのですか」

 フランは納得したようだ。

「それじゃ、魔力のコントロールをやろう! ラグナロクに出れるようにね」



 魔力コントロールの授業が始まった。

 俺みたいな魔力をコントロールしている奴は他の奴のを見て指導するらしい。

 俺は早速見学しようとコロシアムの壁に行き、壁に背を預けるように座る。

 ユウカも俺の隣に腰を下ろした。

 俺はリリアを中心に輪を作った生徒達を見ながら隣にいるユウカに話しかける。

「本当に来るとはな」

「僕はいつだって真面目だからね」

 答えになってないし、真面目とは思えない。

「知ってるかい? 今ではオーラルは纏う技術以外にも使い方があるのを」

「あぁ、そうとうな魔力コントロールが必要だが、部分的に魔力を集める技術だろ」

「昨日のクレス君を襲った男が使っていたから分かるよね」

 昔も技術として知られてなかっただけで、使う奴はいたからな。

「自分専用の魔法を作る人も現れて、アリアスちゃんみたいにその場で作るなんて芸当は出来ないけど、極めた人は相当に強いよ」

 それも知られてなかっただけで、使う奴はいたからな。

「クレス君を驚かせるのは難しいね」

「リリアも剣を召喚する魔法は自分で作ってたしな」

「そうだね、リリアちゃんは天才だから感覚的に魔法を作っちゃってたからね」

 神改殲滅魔法は俺も驚いたからな。

「もうそろそろ参加しないとリリアが怒りそうだ」

 俺はユウカとの話を切りリリアの方向に足を進める。

「あと一つだけ」

 ユウカの言葉に俺は足を止める。


『リリアちゃんに悪い気配が近寄ってる、守ってあげるんだよ』


 そんなことか。

「俺が守れないなら他の奴にも守れないだろ?」

 俺は最強の元勇者なんだぞ。

「本当にそうかな?」

 ユウカが呟くと魔力が膨れ上がる。

『魔力全開放』

 リリアも使っていた技術だ。

 俺の背筋にゾクッと嫌な予感が走る。

 ユウカから目を離し、後ろを振り向くと。

 正面からポンッと肩を叩かれる、さっきまで俺の目の前にいたユウカが俺の後ろに回り込んでいただと?

 反応も出来なかった。

 ふっと魔力を元に戻したユウカは何事もなかったように言葉を紡ぐ。


『これが専用魔法の恐ろしさって奴だよ』

 リリアがやってた奴だな、一時的に普段薄めていく魔力を原液に戻す技術か。

 身体能力や魔力量が異常に上昇する事は分かる。

 つくづく魔力無しには生きづらい環境になったな。

「それどうやっても回避出来なくね」

「前のクレス君なら反応できた、今のクレス君がそれだけなまってるんだよ」

 ユウカに痛いところをつかれました。


『今の僕は今のクレス君には負けないよ』


「まぁ、そうだろうな。ユウカの魔力にビビって生徒達が尻餅ついてんぞ、リリアも驚いてるし」

 俺はリリア達の所に行ってユウカのイタズラだと訳を話した。




『今の、クレス君じゃね』

 ユウカの呟いた一言はクレスの耳には入ることはなかった。

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