136 / 201
逆境
しおりを挟むユリアの刀とフランの剣が交差する。
『私の名前はユリア、貴女の名前を聞きましょう』
ユリアが言葉を交わす。
『私の名前はフランです』
「フランさんですね、行きますよ」
ユリアがフランの剣を弾くとフランの身体も大きく仰け反った。
一太刀でユリアはフランとの実力差を把握すると視界を覆い尽くす程の闇が絶え間なく流れ空間を支配する。
その異様な光景に危機感を持ったフランはクレスから貰った剣の力を使う。
『グランゼル、力を貸して』
クレスから自分の力をさらに付与出来る能力を教えて貰った。
その代わりにグランゼルに魔力を注ぎ続けなければいけない。
白銀のオーラルを纏いグランゼルに魔力を流すと、白銀の魔力とグランゼルが纏う赤い闘気が混ざり合う。
「身体強化魔法ですか、それも武器を媒体に使った……魔剣」
ユリアはすぐさまグランゼルの能力に気づき距離を取る。
「神に愛されてますね、それほどの剣をフランさんはどこで手に入れたのでしょう」
「お兄様から貰いました」
「フランさんのお兄様にも興味が出てきました、半端な貴女がその武器をどれだけ使いこなせるのか知りたくもなりましたし」
フランの右目は金色に輝き、左目は蒼い色。
完全な精霊化の手前の段階、素質はあるが半端者。
「ソーダちゃん、少し離れてて」
「キュイ?」
「心配しないで、勝てるなんて思ってないけど逃げる事だけはしたくないの」
アリアスはフランの意思を汲み取り、肩から空へ飛んでフランを見守る。
アリアスは思った。
『血は繋がってませんが、兄弟揃って負けず嫌いですね』
すぐさま戦闘を開始した二人。
だが戦闘を見守っていたソフィアが二人の間に入る。
『不可侵』
ユリアの刀が空中で波紋を残し、ソフィアの顔の直前で何かに阻まれてる様に止まる。
「やはりその障壁は硬いですね」
ユリアは障壁を掻い潜り接近をはかる。
縦横無尽に障壁を展開しながらソフィアはユリアの接近を妨げる。
「フランちゃん、休憩は終わったかしら?」
フランはソフィアの問いにスーッと息を吐く。
『はい!』
ソフィアの横にフランが並ぶ。
「二人で優勝候補のユリアを倒しましょうか」
ソフィアが障壁に向かって剣を振りかぶった所でスっと全ての障壁が消える。
「行くわよ!」
ソフィアの掛け声と共に二人は前に出る。
虚を付かれたユリア。
あと一歩で二人の剣がユリアに届く。
『魔力全解放』
その瞬間に膨大な魔力がユリアから放たれる、その衝撃はソフィアとフランをその場から弾き飛ばす程に。
形成が逆転する。
バラバラに吹き飛ばされた二人、ユリアが最初に狙いを定めたのはフラン。
吹き飛ばされているフランにユリアが一足で追いつく。
ソフィアはそれを見て全力を使う。
『魔力全開放』
ユリアが刀をフランに向けるが大量の障壁がフランの周りに現れてフランを守る。
魔力を全てフランを守る障壁に送ったソフィアは無防備な状態。
フランに向けていたはずの剣が一瞬で長い距離を移動しソフィアに向けられていた。
ソフィアは納得して受け入れる、抵抗するすべがないからだ。
「瞬間移動、便利な能力ね」
ユリアは剣を振り抜くと、ソフィアの身体は光の粒子に変わった。
フランが立て直した瞬間にその全てが終わっていた。
あの状態で真っ先に負けていたのはフランのはずなのに何故ソフィアはフランを庇ったのか。
ユリアとフランの二人が残ったバトルフィールド。
そこでユリアが口を開く。
「義務だそうですよ」
突然のユリアの言葉にフランは疑問を覚える。
「ソフィアさんとはラグナロクで何度か戦った事があります。学園の生徒を守るのは学園の代表としての義務だそうです」
「ソフィアさん……」
フランは剣を構え直すと瞬時に戦闘を開始する。
戦闘を始めても、明らかにフランは押されていた。
ユリアはクレスを倒した相手、最初から油断なんて出来ない。その上、フランはソフィアを自分の不甲斐なさで敗北させたと思い身体に力が入る。
闇から闇に移動する瞬間移動のような動きにフランは翻弄され傷を負っていく。
闇の邪神フィリアが得意とした剣術。
生物以外の周りの全てを自分の色に染める精霊化の能力。
『混沌』
全てを圧倒されたフラン、傷を負いながら思い浮かべたのは。
『お兄様じゃなくてお兄ちゃんって甘えてもいいんだぞ、フラン』
限りなく妹を甘やかすクレスの姿だった。
『もうお兄様』
無理に入れていた力が急に抜けていくように感じて目を閉じる。
目を開くとフランの両目が金色に輝いていた。
『精霊化』
「ここに来てですか……フィーリオンはやはり失うには惜しい所ですね」
『運操作』
初めて自分の意思で発動した能力。
自分の運を急激に上げ、相手の運を急激に下げる。
ユリアが動きを止めると膝をつく。
「何をしたのですか」
「運の操作です」
クレスと戦った時の疲労が急にユリアを襲う。
「私の勝ちですね」
フランは勝ちを確信して、魔力の全てをグランゼルに纏わせユリアに打ち込む。
だが。
『運が良くても爪が甘かったですね』
フランの足は地面に飲み込まれるように沈み、打ち込んだ剣はユリアの横を綺麗に通り過ぎていく。
倒れ込んでくる無防備なフランにユリアは肩を預ける。
「魔力切れみたいですね」
フランの意識はそのまま消えた。
「キュイ!」
アリアスは倒れ込んだフランの近くに降りると光になり消えていくフランと共にラグナロクのフィールドを後にした。
ユリアはその場で呟く。
「危なかったです」
ユリアの前に突然男が現れた。
『悪いんだけど、あんたはここで消えてくれるか』
「待ってたんですか? 気づいてましたけど」
『あぁ、ここには全ての出場者がいる、お前を皆んなで倒せば後は優勝だけだ』
森の中からゾロゾロと出場者が現れる。
「貴方達は幸運ですね、私は今最高に運が悪いらしいですので」
ユリアは刀を鞘に戻す。
『血統解放リミテッド・アビリティー』
黄金に輝くオーラを放つ黒剣を目の前に召喚して、それを杖にユリアは立ち上がる。
そして脳裏に浮かぶのは運命に抗った英雄の後ろ姿。
「貴方達を倒すのは運命に負けない力が必要みたいですね」
能力を発動する。
『スタイル【クレス・フィールド】』
ゾロゾロと出てきた出場者は雰囲気に圧倒され尻込みする。
『みんな! コイツはもうボロボロだ、やるなら今しかない!』
足をガクガクと震わせてる男はユリアの姿を見ながら意気揚々と声を上げる。
「こんなにボロボロなら、私だって相手にされるんですね」
初めて遭遇する逆境の筈なのに、何故かユリアは楽しそうに笑みを浮かべる……。
『手加減はできませんよ、かかってきなさい』
クレスのように。
0
あなたにおすすめの小説
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
S級冒険者の子どもが進む道
干支猫
ファンタジー
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた
砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。
彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。
そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。
死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。
その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。
しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、
主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。
自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、
寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。
結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、
自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……?
更新は昼頃になります。
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる