137 / 201
勇者宣告
しおりを挟む数百人は居るだろう生徒達に囲まれてからのユリアは圧巻だった。
俺が戦っていた時よりだいぶ動きが鈍いが生徒達の魔法を掻い潜り一人一人と切り伏せていく。
隣に座っていたリリアはそれをキラキラした目で見ていた。
ユリアが最後の一人を粒子に変えてラグナロクは終了を迎えた。
バトルフィールドのモニターが全て真っ暗になる。
俺はそれを見て一言呟く。
「終わったな」
「そうですね」
それにリリアが応える。
すぐさまアナウンスで優勝者の名前が上がって、次に一番成績を残していない学園が上げられた。
功績はポイントをどれだけ多く取ったかだが、ユリアが総取りなので他は累計ポイントで順位をつけられる。
もちろんフィーリオンが一番下だった。
どこか寂しそうなリリアを見て、俺がちゃんと力を使っていれば負けてなかったんじゃないかと思う。
また間違った選択をしているのか? 俺はいつも間違ってばかりだ。
後ろから声が聞こえてくる。
『ユリアちゃんって不思議な子だよね、僕にもリリアちゃんにも英雄君にだって雰囲気が似てる』
無視だ。
だがリリアは無視せずに振り返った。
「ユウカちゃん、どこにいたの?」
「まぁ、気になる人が居てね、特等席で見させてもらってたよ」
「ユウカちゃんが気になる人って誰かな?」
「もちろんクレス君だよ」
「でもクレス君もユリアさんに負けたみたいだよ」
「リリアちゃんに雰囲気が似てたから手加減したのかな? ねぇ、クレス君」
図星だよ。
だけど俺は応えない。
『あの子、本当にイレギュラーなんだよね』
ユウカが呟いた言葉は俺が抱いている違和感と酷使しているようだった。
ユリアが闘技場の真ん中に現れてアナウンスが流れる。
『それでは優勝者のユリアさん、願いを言ってください』
『私の願いは』
最強を願っていたユリアは、今からリリア達と戦うんだろうな。
『フィーリオン剣士学園に私を入学させてください』
えっ?
会場中がユリアの予想外の願いに一瞬静寂した。
だがその静寂も一人の人物にかき消される。
『話が違いますよユリア!』
黒髪イケメンが観客席から飛び降り、ユリアに近づいていく。
誰だ?
『光の勇者君だね』
俺の疑問を晴らすように後ろにいるユウカが応えてくれる。
イケメン勇者か腹立たしい。
昔あったことがあるが大人になっていてイケメンがイケメンを増しただけ。
イケメンには死を!
『何故なんだ!? 俺が剣の勇者なんかを超える程に強くしてやるって約束したじゃないか、ユリアにはその素質は充分にある』
イケメン君が必死にユリアを説得しているようだ。
なんかもめてるようだが、あんまり声が聞こえない。
「私はもう決めました、このラグナロクで私は自分の弱さがわかったのです。今からでもその方に師事を仰いでその人を超えたいと思います」
「そんな人物はいなかったじゃないか、今までのラグナロクと同じだ! ユリアが出場した大会のように圧勝してたよ」
「私でも底が見えない強さを持った人があの中には居ました。フィーリオン剣士学園に入りたいんです、もちろん優勝した人物が入るのですからフィーリオン剣士学園が無くなる事はないですよね」
「……その人物は誰だ」
「英雄様とは違いますけどクレスさんです」
「またその名前か忌々しい名前だ」
イケメン君が言葉を吐き捨てて、鞘から剣を引き抜くと頭上に掲げる。
そしてイケメン君は大声で叫ぶ。
『勇者宣告だ』
会場中が一気に慌ただしくなる。
『今からクレスと名乗る人物は俺と戦い勝負しろ、負けたらユリアの願いは無しだ』
勇者宣告? なにそれ。
「勇者宣告は一回だけしか使えないけど、神と同等の権限を持てる勇者にだけしか許されない力だね。これにはユリアちゃんも逆らえない」
そんなのあるの? ユウカが説明してくれるまで知らなかったんですけど。
「まぁ、誰もが知ってる常識だけど、英雄君なら知らなかったって言いそうだよね」
「お兄ちゃんなら言いそう」
ユウカとリリアが俺の無知を馬鹿にしながら笑っている。
知らなかったよ!
まぁ勇者宣告がなんだか知らないが俺が行く訳ないだろ。
『このままだとユリアちゃんのしたかった事……願いが無効になって光の勇者の理不尽が通っちゃうね、こういう事は誰が一番嫌ってると思う? リリアちゃん』
『お兄ちゃん、かな』
二人の視線が何故か俺を貫く。
『……ちょっと行ってくる、ユリアは何かほっとけないしな』
俺は観客席からラグナロクの闘技場に降りる。
『頑張って』
後ろから小さな声でリリアが声援を送ってくれた気がする。
とことん平穏とは縁がないな。
「君がクレスだね、迷惑なんだよ。ここで潔く負けを認めて帰ってくれるなら痛い思いはしないんだけどね」
「ユリアの事を考えてやれよ、勇者宣告とか使いやがってボコられる準備は出来てんのか?」
「名前だけじゃなく、性格も剣の勇者と似てるんだね君は」
イケメン君の周りに荒々しく魔力が吹き荒れる。
「俺は剣の勇者に負けてから強くなったでも超えられなかった……だがやっと剣の勇者を超えられる人物が見つかった、これでアイツに最強は俺だとか言われる事もないと思った矢先にコレだ!」
すごく根に持ってんじゃん。
「御託はいいからさっさとかかってこいよ、ユリアに負けた俺でよければな」
「そうなんだよ! お前ごときがユリアに勝てるわけないだろ、ユリアには剣の勇者を超えてもらわないといけないんだからな」
ユリアを道具みたいに扱われて何故か怒りが込み上げてくる。
白銀のオーラを全身に纏う光の勇者。
『魔力全開放』
光の勇者の魔力が爆発的に膨れ上がる。
これだから魔力持ちは嫌いなんだよ、一気にドーピングとかマジで笑えない。
戦った疲れが残ってるんだけど……ただ傷を治しただけだもんな。
ユリアは一言も発さずに、俺たちから離れた。
だが視線だけは俺を見つめて離さない。
またその目か……リリアと似た目で俺を見るんじゃねぇ。
……俺なんかに期待しても得なんかねぇぞ。
でも何故だろうな、期待に応えたいと思うのは。
『手加減してやるから、かかってこいよ』
ユリア、お前は不思議な奴だよ。
0
あなたにおすすめの小説
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
S級冒険者の子どもが進む道
干支猫
ファンタジー
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた
砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。
彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。
そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。
死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。
その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。
しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、
主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。
自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、
寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。
結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、
自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……?
更新は昼頃になります。
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる