天才な妹と最強な元勇者

くらげさん

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無謀

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『手加減してやるから、かかってこいよ』

『ッ! それが気に食わないって言ってるだろ!』


 光の勇者は叫ぶと、盾を魔力で具現化して手元に召喚する。


『クロ、剣の無限生成を頼む』

『はい、わかりました』


 クロに心の中で頼むと俺の手には黒銀の魔力で作られた剣が召喚され、それを……光の勇者に向かって投げる。

 俺の行動に光の勇者は何の油断も無く飛んできた剣を盾で弾く

 また手元に召喚された剣を投げる。


 投げられる剣を弾くために立ち止まった光の勇者を的に、無限に生成されていく剣を投げ続ける。

 俺の剣を弾くたびに盾から淡い光が放たれる、あれは俺の攻撃その物を無効にしてるんだろう。

 光の勇者の固有スキルは『ジャストガード』

 距離を詰められたらめんどくさい、疲れてるし。

 俺は剣を投げるのをやめる。

 無数に投げられた剣を盾で全て防いだ光の勇者は、投げるのをやめた俺に向かって言葉を投げるかける。

「口だけは達者だが飛び道具とは情けない! それでは到底勝てないぞ!」

 俺は散らばる剣を見渡して思う。

 こんだけあれば倒せるだろうと。

『クロ、あとは頼む』

『はい』


 俺が持っている剣がフワリと宙に舞い上がる。

 それに釣られて光の勇者に弾かれ散らばっていた無数の剣が光の勇者を囲むように浮き上がった。

 その光景を見て光の勇者は俺を睨む。

「正々堂々とは無縁の男だな、貴様」

「なんとでも言えよ、これを全て防いだら本気で相手にしてやるよ三流」

「チッ!」


 光の勇者が舌打ちをした後に全方位に展開された剣が光の勇者に向かって降りそそぐ。


「うぉぉぉぉ!」


 さすが勇者だとも思う、吠えながら無駄のない動きで向かってくる剣を盾で弾き、剣で斬り落とす。

 だが無傷ではない、致命傷は避けてはいたがもう既にボロボロだ。


『最後の一本だな』


 俺が一言、言葉を発すると。

 浮遊する最後の一本が光の勇者の真後ろから迫る。


「セコイことしやがって!」


 叫ぶと光の勇者はすぐさま振り返り、剣で斬り落とした。

 そのスキに俺は手元に召喚されていた剣を投げる。

 
『ぐはっ!』


 真後ろから飛んできた剣が光の勇者を貫く。

 血を垂れ流し、地に膝をつけた勇者は俺を睨みつけた。


『俺が新たに攻撃するかしないかは言う必要ねぇよなぁ、なぁ』


 これが元剣の勇者のやり方である。


「まだだ、まだ負けてない、俺は戦える」

 だが勇者は立ち上がる。

 さすが世界を救った事がある勇者は諦めが悪いな。



「そう言うのを待ってたんだよ」


 俺は笑みを深めると、光の勇者の周りに剣が展開される。


『さぁ、楽しませてくれよ、勇者様』


 光の勇者にまた剣が向かっていく。

 光の勇者の目は絶望の色に染まっていた。





 会場は無残な所業に静寂が立ち込み。

 光の勇者の悲痛な声がこだましなくなった頃、俺はふと周りを見ると全ての人が敵になったような視線を向けられていた。


『ユウ様、流石にやめた方がいいかと』


 クロに言われて気づく、やりすぎたようだ。


「負けを認めなかったアイツが悪いんだもん!」


 俺は医療班が光の勇者を運んでいる最中にかわいこぶってみた。


「私も引いているぐらい酷い勝ち方ですね」

「俺が文句言われる筋合いないもん! アイツからやり出した事だろ」


 ユリアから冷めた視線と言葉を受けた俺は精神的なダメージを負いながら反発する。


「よくあれ程の魔力を持ってますね、人とは思えない程の魔力量ですよ」


 俺は精霊神の力を使ってるからな、だけど。


「リリアなら俺と同じ事が出来るだろうな」


 同じ事が出来るだけでリリアならやらないだろうが。


「まぁ、良かったな、これで心置き無くフィーリオンに来れる」

「願いを言った本人ですけど、今から不安になってきましたよ」


 俺が闘技場から出口に向かう時にユリアが声をかける。


「なぜ私の為に戦ってくれたんですか?」

「お前をほっとけなかった、それだけだよ」


 俺は応えて闘技場を後にした。



 フィーリオンに戻るために転移陣の中に入る。
 
 転移陣の中にはリリアやユウカが居なかったがそのままフィーリオンに戻った。

 晴れてフィーリオンの生徒になったユリアは教師達に勧められてスピーチをしている。

 ユリアに歓迎ムードの生徒や教師陣の中、俺は武道場から静かに退場した。

 俺には誰も感謝しないし、逆に冷たい視線を浴びせられた。

 寮の一室でパーティーを開くらしいが俺はさっさと帰る。


『ユウ様はやりすぎる事があるだけで、その発端はいつも誰かの為ですよ』

『そう言ってくれるのはもうお前ら精霊だけかもな』


 泣きそうになりながら俺は学園を出て、リリアの家に帰る。

 誰も居ないと思っていた家にはリリアとユウカが居て。

 そこには豪華な料理が!


「えっ! なんで」

「ユリアさんは優勝を持ってきた本人ですが、一番の功労者はクレス君だと思ったので先に帰って準備していました」


 リリアが俺に!


「いや! 僕も手伝ったよ!」


『ユウカ、リリア、なんかありがとな』


 だから帰るときユウカやリリアを見なかったのか。

 俺にもこんな日常があってもいいよな。


『私たち精霊だけじゃなかったみたいですね』

『あぁ』


 豪華な食事を食べながら、俺は幸せを噛み締めていた。


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