天才な妹と最強な元勇者

くらげさん

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調和

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『お帰りなさい』


 リリアの抱擁に暖かさを感じるティアとユリア。

 ティアはリリアに尋ねる。

「リリアさんがママなの?」

 リリアは寂しそうな顔をした後にまた優しい笑顔をティア達に向ける。

「お腹すいてる? ご飯にしましょうか」

「うん!」

 リリアは抱きしめていた腕を離して玄関からすぐ近くの扉を開ける。

 部屋の中に歩いていくリリアの後をトテトテとついていくティア。

 その後ろ姿を見て呆気に取られたユリアはクレスの方に視線を移してマジマジと見つめる。

「お父様なのですよね?」

「あぁ、そうだぞ」

 クレスはユリアの肩に手を置きながら、玄関から移動する。


 案内した部屋の机には豪華な食事が並べられていて、リリアとティアはもう席に座っている。

 ティアは小さなドラゴンと戯れていた。

「キュイ!」

 リリア達の他に長い黒髪の清楚な雰囲気を持っている一人の女性の姿が見える。

「やぁ、よく帰って来たね~」

 にこやかに挨拶する女性は椅子から立ち上がり、ユリアに抱きつく。

「ティアちゃんと同い年だったのにこんなに立派になって、僕は誇らしいよ」

「ユウカさんですか!?」

「ユウカさんなんて他人行儀だね! ママって呼んでくれていいよ」

「えっ?」

「ティアちゃんはリリアちゃんの子供だよ」

 ユリアはクレスを見ると。

「……本当に色々あったんだよ」

 クレスは視線をそらす。

 ティアはもう既に『ママ~』と言いながらリリアに抱きついている。

「世界の調整がもう少しで入るんじゃないかな?」


 ユウカの言葉と共にユリアとティアを起点に光が放たれる。

「えっ? えっ!?」

 困惑するユリアとキャーと悲鳴をあげるティア。

 光が収まると。


 ティアとユリアの無くなっていた記憶が蘇る。

「なにがおこったのですか!」

 ユリアは見る世界が違っている事に驚愕する。

 周りが全部大きくなったような。

「ちちんでる!?」

 ユリアは視界の端に映った鏡を見ると自分の身体が昔のように縮んでいることを視認する。

「なんで!?」

 驚いて自分の身体をぺたぺたと触って確認しているユリアにユウカは声をかける。

「ティアちゃんはそんなに変わらないけど、これが本当の時間軸なんだよ」

「じかんじく?」

「そんな事より」

 ユウカは小さくなったユリアを抱きしめる。

「ユリアちゃんは一人でよく頑張ったね、もう強がらなくていいんだよ」

「おかあさま……わたしの」

 ずっと探していた、見捨てられたと思っていた母親から抱きしめられたユリアの瞳には涙が溢れる。

「ふふふ、甘えちゃってもいいんだよ! 僕の可愛いユリアちゃん」

「おかあさまぁ」

 ユリアは泣きながらユウカの胸に顔を埋める。


 すっと何も無い所から一人の男性が現れる。

『えっと……これでいいでしょうか? クレス様』

「おい、お前、もう少し出てくるタイミングを考えろ」

「すいません! 流石に迷惑をかけたのですぐにでも謝罪に来たくてですね」

 クレスの言葉にビクビクしながら頭を下げる男。

「神だからってなんでもしていいなんて戯言を吐かなくなっただけマシだな」

「はい、クレス様と出会うまでの私は調和の神と言われて少し頭が高かったです、この度はクレス様と出会えて誠にその所を反省しました」

「生き返って早々、また俺にぶっ殺されに来たのか?」
 
「世界の調和を保つためには英雄になる力を備わった子供を記憶を失くした状態で別の時間軸に送ることがあります。その子供がまさかあの闇の女神様を倒し、光の女神様に一目置かれるような方の子供達だったとは知らず、とんだ失礼を!」

 深々と頭を下げながらまくし立てるように言葉を並べる調和の神。

「お前の力を少しは使わないと娘達は助けに行けなかったしな、娘達が許してやれば助けてやる」

「……ティア様、ユリア様、この度は誠に誠にご迷惑をお掛けしました!」

 調和の神は二人に向かって力強く頭を下げる。

「コイツはお前達が孤児や奴隷に落とされた原因だ、目障りと言うならここで消すぞ」

 クレスの手元には既に英雄たらしめる金色のオーラを纏った黒剣が握られている。

「ティアはもうママにあえたからいい!」

「そうか、ユリアはどうだ?」

「わたしは……」

 ティアと違ってユリアは一人で生きてきた時間が違う。

「いいですよ、もうわたしのねがいは、かなったので」

 ユリアは本当の両親に会うために、頑張ってきた。

 その願いは既に叶って満足なのだろう。

 クレスは黒剣を離すとキラキラと粒子を放ちながら消えていく。

「そういう事だ、俺の気が変わらないうちに帰れ」

「は、はい!」

 調和の神は頭を上げると、慌てた様子でスッと空間に溶けるように消えていった。


「キュイ!」

 クレスはユウカからユリアを引き剥がして持ち抱えると席につく。


「さぁ、食事を始めるか」

 全員が席に着くと、ユリアとティアは口いっぱいに料理を頬張る。

「おいしい、おいしいです!」

 ユリアは懐かしい味を噛み締めるようにご飯を食べる。

 誇らしげに胸を張るユウカ。

「そりゃそうだよ、母親の味って所かな!」

 クレスはニヤリと笑う。

「ユリアもリリアの料理が母親の味って事だよな」

「いやいや、僕も手伝ってるよ」

 クレスの言葉に訂正を加えるユウカ。

 ずっとこの景色を待ちわびていたユリアはボロボロと涙を流す。

 リリアはユリアの異変に気づいて声をかける。

「ユリアちゃんどうしたの?」

「う、うん……このりょうりが、おいしくて」

「そう、お腹いっぱい食べてね」

「うん!」

 家族の食事という日常の一コマはユリアにとっては思い出になるような出来事になっていた。






 それから月日は経ち。

 ユリアは毎日を家族と過ごして、のびのびと幸せを満喫していた。

 フィーリオンの国から少し離れた草原でフランとユリアは向かい合っている。

「フランさんはしあわせですか?」

「凄くね! アクア君が私を離してくれなくて!」

「さいきんまいにち、わたしのいえにきますよね?」

「本当は忙しくて全然構ってくれないの」

 フランは背の縮んだユリアに毎日のように愚痴をこぼしに来ていた。


「じゃあきょうも、おてあわせおねがいします!」

「うん、英雄の妹としてまだ負けるわけには行かないけどね」

「もうすこし、おおきくなれば、むかしのようにわたしがかちます!」

「えっ! 覚えてるの!? 世界の調整で昔のこと忘れてるはずじゃない?」

「はい、ですがまだ、ほんのすこしだけならおぼえています」

「私が負けた所だけピンポイントで覚えてるってどういう事よ! ま、まぁいいわ……昔みたい私に勝つ? それはどうかな、ルナリアの剣聖は伊達じゃないんだよ」

『血統解放リミテッド・アビリティー』

 ユリアは金色のオーラを纏う黒剣を召喚する。

 そしてフランは鞘からグランゼルを引き抜く。

「まだまだユリアちゃんには負けないかな」


 二人の剣劇は遅くなるまで続いていた。

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