天才な妹と最強な元勇者

くらげさん

文字の大きさ
151 / 201

剣の勇者の日常

しおりを挟む


 ある日、俺の世界は一変した。

「勇者様世界を救ってください」

 部屋で寝る支度をしていた俺が急に異世界転移。



 戸惑いもあったが最初の頃は良かったよ、剣と魔法の世界にワクワクしていた。

 だが城の中では次第に邪魔者扱い。

 魔力無しってだけでここまで邪険に扱われるとは思ってなかった。

 唯一の救いは城の姫様が話のわかる人だったという事か。

 毎回、姫様の騎士とか名乗る奴に城から出ていけと言われる日常に嫌気が差して、俺は逃げ出すように城から出ていった。

 そこで予想外だった事は姫様が俺に着いてきたこと。



 城から出る際、城を守ってる兵士は俺を引き止める事なく門を開いた。

 別に引き止めてくれても良かったんだよ? 異世界とか怖いし、一人じゃ不安だし金ないし!

 呆気なく城から出れた俺は行く宛もなくぶらぶらとは……出来なかった。


「あれは何でしょう!」

 俺の隣には何故が目をキラキラさせて色んな所を指さしながらキャッキャとはしゃぐ女がいた。

 フードで顔を隠していたが、チラッと覗かせた顔には見覚えがある。

「えっ? なんで姫様がいんの!?」

「ユウ様、これは兄からの手紙です」

 俺の質問を華麗にスルーして一通の手紙を渡してくる姫様。

 その手紙を開くと。

『私はお前がどこで野垂れ死にしようと構わないが、アリアスがどうしてもついて行きたいと言うのでしょうがなく許可する事に決めた。追記 私の妹に少しでも妙な事したらぶっ殺すぞ。アレクより』

 兄こわ。

 どうせ姫様も俺を見捨てるんだろうなと思いすぐさま撒いた。


 俺はミリアードの国から出てめちゃくちゃ走った。

 そして俺は一匹のドラゴンと出会う。

 神話でしか見たことのないようなドラゴン。

 俺は気づかれないようにその場を離れようとしたが。

「あれは何ですか?」

 聞き覚えのある声に振り向くとアリアスがドラゴンを指さしながら近づいていく。

「アリアス近づくな!」

 止めても全然歩みを止めようとしないアリアス。

 何考えてんのコイツ!

 ドラゴンの顔を指でつつきながら。

「あの貴方はここで昼寝をしているのですか?」

 鬱陶しいというふうにドラゴンが目を開けると。


『我の眠りを妨げる愚か者など灰になるがいい!』


 立ち上がったドラゴンは口に炎を溜める、俺はアリアスを助けるために必死で考える。

 いつの間にかアリアスを庇いながらドラゴンの目の前に来ていた。

 我ながら酷い人生だと思ったよ、こんな事で死ぬなんてな。

 ただアリアスだけは守らないとアレクが怖いからな。


『リミテッド・アビリティー』


 無意識に呟いた言葉に呼応するように目の前の空間が歪む、俺はその空間に手を伸ばすと何かを掴み引き抜く。

 出てきたのは金色のオーラを纏う黒剣。

 こんな剣で何が出来るんだ? 魔力が物を言う世界でこんな棒切れなんの役にもたたない。

 だけど、抗う武器は手に入れた。

 容赦のない灼熱の炎が迫るなか、俺は黒剣を無我夢中で振り抜く。

 俺に剣の才能なんか無いと思っていたが、その炎が俺を避けるように二つに分かれた。


 ドラゴンは愉快そうに口を大きく開ける。


『初めてだな我のブレスをここまで簡単に凌いで見せた者は……汝に一つ褒美をやろう』


 この世界で初めて自分を認められたような気がした。

 それが嬉しくて、俺はドラゴンに変な事を口走っていた。
 
「じゃあ友達になってくれないか」

「面白い、面白いぞ! 我を驚かせる者が居るとはな。汝の名を聞こう」

「俺はユウ・オキタだ、よろしく」

「我の名は竜王ブラッド・ドラゴン」

「じゃあブラッド、背中に乗せてどっか遠くに運んでくれないか?」

「いいだろう、友よ! さぁ我の背に乗れ」

 俺の腕の裾を掴んで離さない奴の存在を忘れていた。

「ユウ様、私もついて行きます!」

「えっ? 嫌なんだけど」

「離しませんよ!」

 しぶしぶ俺はアリアスも連れてブラッドと共にミリアードを後にした。



「パパ~! ドラゴン見たい!」

「見に行くか!」

「うん!」

 俺は家のソファーに座りながら娘に昔の出来事を喋っていた。

 俺の太ももの上に座りながら昔のリリアのように俺の話を聞きたがるティアは本当に可愛い。

『ちょっと待ってくださいよクレスさん!』

 可愛い娘とのお喋りを邪魔する奴が現れた。

「なんだ?」

「今日は僕の稽古を付けてくれる日じゃないんですか?」

「フィーリオンの剣聖ジーク様が俺なんかの稽古じゃ満足出来ないだろ?」

 邪魔者ジークの稽古はどうでもいい!

「お~い! ユリア~」

「なになに~」

 大声で呼ぶとテコテコと部屋に入ってきたユリア。

「今日フランが来るだろ?」

「うん」

「フランと一緒にジークの稽古任せた!」

「パパ! わたしともけいこするっていった!」

「……」

 ムッと頬を膨らますユリア。

「クレスさん!」

 ジークは別にどうだっていいが可愛い娘の為だ。

「じゃあ皆んなでブラッドの所に行くか!」

「わ~い!」

 ティアは手を上げて喜んでいる。

「えっ? クレスさんの作り話じゃ無かったんですか!?」

「竜王は実在するぞ」

 ジークは俺の言葉に絶句する。

「じゃあユリア、ユウカとリリアも呼んできてくれ、フランが来たら竜王の所に行くぞ」

「わかった~」

 俺は家族と弟子を連れて竜王の所へ転移する。




 馬鹿でかい薄暗い洞窟の中。


「竜王遊びに来たぞ~」

 眠たそうなドラゴンを目の前にジークだけが怯えていた。

「……旧クラスの神級の魔物じゃないですか」

「お~い、起きろ」

 クレスはそんなドラゴンの顔をバシバシと叩く。

「我の眠りを妨げる者よ」

 ぎょろりとクレスを貫くような眼光。

 クレスを視界におさめるとニタリと口元が歪ませるドラゴン。

「おぉ、来てくれたのか我が友よ」

「あぁ、お前を見たいって娘が言い出してな」

「そうか、可愛い娘じゃないか」

「わ~い、ドラゴンさんだ~」

 ティアは身軽な動きでドラゴンの背中に跨る。

 ジークは動揺しながらリリアに声をかける。

「ちょっと、リリアさん? なんで皆んな驚かないんですか?」

「ブラッドさんはいい人ですよ?」 

「僕がおかしいのかな?」


 クレスはジークなんかお構いなしに話を進める。

「それじゃ稽古を始めるか、ブラッド! ここら辺借りるぞ」

「うむ、たまには騒がしいのも悪くわない」


 フランとユリア、ジークが剣を構える。




 リリアは小さなドラゴンのアリアスを両腕で抱えながらユウカと二人で椅子のような丁度いい岩に腰掛けている。

「ユウカちゃん、アリアスちゃん、私今本当に幸せなの」

「きゅい!」

「僕もだよ、所でリリアちゃんは最近クレス君を超えるなんて言わなくなったよね?」

「うん、だってお兄ちゃんが最強に拘る理由がわかった気がするから」

「その理由ってなんだい?」

「お兄ちゃんは最強ってだけで孤独を知ってるんだよ、優しいお兄ちゃんはその孤独をみんなに知って欲しくないんじゃないかな」

「だから一番であり続けるって事かな?」

「うん」

「僕もそう思うよ、でもクレス君はもう追い抜こうって次元じゃないからね」

「追い抜けないよ、だってお兄ちゃんは最強だもん」

「でもクレス君は僕達が考えてる事とは全く違って悪役みたいな事思ってそうだけどね」

「ふふ、お兄ちゃんらしいね」

 二人と一匹の視界には幸せそうなクレスの姿が映る。

 クレスが追い求めた平和な日常はこのままずっと変わることはないだろう。





『リミテッド・アビリティー』


 俺は金色のオーラを纏う黒剣を引き抜く。


『手加減してやるからかかってこいよ』


 フラン、ユリア、ジーク。

 俺はお前らの超えられない壁になってやるよ、だから追い抜こうと努力しろ。

 まぁ……俺がいる限り、無駄だけどな!

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた

砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。 彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。 そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。 死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。 その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。 しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、 主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。 自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、 寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。 結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、 自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……? 更新は昼頃になります。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...