154 / 201
親子
しおりを挟むいつからだろう。
いつから戦っているんだろう。
これは私の夢。
いつも見てる私の夢。
同じくらいの歳の銀髪の少年と私が剣を交えている。
名も知らない少年の剣は昔の絵本の物語に出てくる剣の勇者が持つ金色のオーラを纏う黒剣にそっくりだ。
あと少しで届きそうな私の剣はいつものように空を切る。
小さい頃から何も変わってなく、私だってリリアママやユウカママに剣術を教わっているのにも関わらず目の前の少年には剣が届かない。
まるで私に教えているかのように段階を踏んで強くなっている少年。
しかも少年は私の全力をギリギリで綺麗に躱しながら私を見下し不敵に微笑む。
その姿を見ているとその少年とパパの姿が重なる。
私の神経を逆なでするような無神経な相手。
『……ちゃん』
こんな奴には絶対に負けたくない!
『お姉ちゃん!』
目を覚ますと私の最愛の妹が私の身体を揺すっていた。
「ティア?」
「もう、早くしないと遅刻だよ」
ティアは私を起こしてすぐに部屋から出ていった。
私も着替えを済ませて部屋から出ると良い匂いに連れられてダイニングに移動する。
扉を開けるとリリアママ、ユウカママ、ティア、そして小さなドラゴンのアリアスちゃんが席に付いていた。
私は少し寝坊した事を反省しながら席につく。
『遅いぞ』
偉そうに。
パパはいつも寝ているのに食事の時間だけは素早く動く。
誰よりも先に座っているのだ。
そして手を合わせて『いただきます』これが私の家のルール。
食べる前にやらなくてはならない。
食事が始まる。
鶏肉のソテーに小さいパンが二個。
そして果物を敷き詰めたスープ。
私の好きな果物がゴロゴロと沢山入ったスープ、たまにリリアママが作ってくれる大好物のスープだ。
私は味を期待しながらスプーンを手に取ってスープに手を伸ばす。
『お姉ちゃん、このスープ私が作ったんだよ!』
ニコニコしているティア、私の手が止まる。
「そう、今日はティアも料理を作ったのね」
基本的に食事を作るのはユウカママかリリアママの二人で私達姉妹は料理を手伝っている。
朝は基本的にリリアママの担当だ。
たまに料理の品を一品作らせて貰えたりするが、ティアの料理はお世辞にも美味しいとは思えないものが出来上がる。
私は周りを見る。
リリアママが私に向かって左目をパチッとウィンクしてきた。
「大丈夫よユリアちゃん、丁寧に教えたから」
私はその言葉を信じてスープを口に運ぶ。
「お姉ちゃん美味しい?」
心配そうな顔で見てくるティアに私は本当の事を口にする。
「美味しくない」
私の言葉に肩を落とすティア。
ほのかな苦味と酸味が口一杯に残って、薬を飲んだ後のように喉奥から不味さが湧き上がってくる。
『美味しいぞティア! もう一杯!』
既に空になった器をティアに向けてもう一杯と催促をしているパパ。
「ほんとに?」
私に不味いと言われてシュンとしていたティアに少し元気が戻った。
「あぁ、ティアには料理の才能があるな!」
私はスープをもう一度口に運ぶ、これに才能? 嘘は私が一番嫌いだ。
『ご馳走様』
パパは沢山作ってあったティアのスープを全部平らげてソファーに向かっていってしまった。
私も食事を終えて、リリアママと私とティアで一緒に食器を洗う。
一仕事終えた私はパパに尋ねる。
「なんで嘘なんかつくの?」
「なんの話だ?」
パパは寝ながら私の言葉に返す。
「さっきのスープの事よ! 絶対美味しくなんかないのに……」
ティアだって頑張って作っていることは知ってるけど嘘をつかれる方が絶対に嫌だと私は考えている。
「楽しみだろ」
パパの口から突拍子もないような言葉が飛び出した。
「楽しみ?」
「あんだけ愛情がこもった料理だ、美味しいに決まってるし味も美味しいってなるとリリアの料理にすぐに追いつくな! 本当に楽しみだ」
親バカってパパの事を言うのかな?
「それにお前の好物しか入ってなかったろ?」
確かに言われてみれば好物しか入ってない。
「ティアは早起きしてリリアに教えて貰ってたからな、お前が笑顔になるような料理を作りたいって」
いつも寝てるくせに。
「まぁお前の信じる正義ってのも大事な事だ、俺に似なくて良かったな」
いつもボーとしてるくせに。
「早く学校いけ、競技大会だろ」
「今から行くよ! パパなんて嫌い!」
私は机に置いていたカバンを持ってすぐさま部屋を出る。
玄関で待ってたティアに笑顔を向ける。
ティアに言うのは少し照れくさかったが妹の笑顔を見れるならと口を動かす。
『ティアの料理おいし……』
『ダメだよ! お姉ちゃん! いつかお姉ちゃんにも心の底から美味しいって言わせるぐらいの料理作るのが私の夢なんだから』
『大袈裟よ』
私の揺らぎかかった信念を妹が支えてくれる、それが少し心地よかった。
『また嫌われた!』
俺の何がいけなかったんだ!
『そういう態度だからだよ~』
「なんだユウカか」
「なんだってなんだよ~」
頬をツンっとつついてくるユウカ。
「俺に似なくて良かったなんて言ってたね」
「あぁ聞いてたのか」
『なに言ってるのか……ユリアちゃんはクレス君にソックリさんだよ』
俺に向けるユウカの声はいつもと一緒だが少し弾んでるように聞こえた。
0
あなたにおすすめの小説
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
S級冒険者の子どもが進む道
干支猫
ファンタジー
【12/26完結】
とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。
父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。
そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。
その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。
魔王とはいったい?
※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた
砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。
彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。
そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。
死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。
その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。
しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、
主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。
自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、
寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。
結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、
自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……?
更新は昼頃になります。
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる