天才な妹と最強な元勇者

くらげさん

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無力の証明

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 娘達の晴れ舞台! 見逃す事は絶対に出来ない。

 家から徒歩三十分位の所にあるメルカトラス学園に俺の娘達は通っている。

 昔は剣の勇者を崇めた学園があったがラグナロクで負け続け、ついには廃校になった。

 その後に新しく体制を整えてメルカトラス学園として設立された。

 弟子のジークは自分が入学してたら廃校にはさせなかったと嘆いていたな。

 リリアの活動のお陰で廃校になったと言う奴もいた。

 リリアの活動は魔力ない奴等でも戦力として活用出来るようにすることだった。リリアが力を入れた事により着実に結果は出てきた活動だったが、フィーリオン剣士学園は魔力がある奴が正義という固定概念が深く、ジークのような天才でも出てこない限り、その根本を壊す事はリリアでも出来なかったようだ。

 ラグナロクで負け続けるのは他の学園では天才を集め精鋭を鍛えるのに対してフィーリオンは魔力無しにも鍛える時間を割いていたからだろう。

 メルカトラス学園でもリリアは教師として授業している。

 リリアは教育者としても優秀で何処でも引っ張りだこだ、メルカトラス学園はリリアの魔力無しの生徒も受け入れるという条件を呑んでリリアを学園に留まらせた。

 リリアの活動がないとジークは入学の試験すら受けられなくなってしまう。

 それが悔しくて嫌だってリリアは言っていた。

 メルカトラス学園は第一期生からジークという天才の登場で固定概念はぶち壊される事になる。

 そこからリリアの活動が段々と上手く回り始めた。



 袋に二十本も入っている鶏肉の串焼きをユウカに買ってもらい、至る所に設置されている浮かぶテレビを横目に見る。

 串焼きを一本取り出して頬張る。
 
『さぁ、やって参りました競技大会! マイクを握るのはこの私! 闇の勇者を姉に持つミライちゃんだよ! よろしくぅ!』

 家にもたまに遊びに来るユウカの妹は今、前の世界で言うところのアナウンサーのような仕事をしている。

 昔にトウマを呼び出すための予行練習のような物で呼ばれた何十万人にも及ぶプレイヤー達。

 女神が世界のつじつま合わせをした時に元の世界の記憶も消えてしまったただの被害者。

 同情はしない。

 だって俺の方が絶対キツかったからだ。

 それでもユウカや自力で記憶を取り戻したリリアとミミリアのようにイレギュラーは存在する。

 元の世界の記憶をうっすらと残していたプレイヤー達はその薄い記憶を活かして色んな物を発明すると、この異世界の文明レベルは比較的に上がった。

 しかもそのフォルムと名前も似たりよったりだ。

 魔法という科学をも超越する力は物作りをする為の大きな基盤になる。

 下手をしたら地球の物は何だって作れるだろうな。

 まぁ、コイツらプレイヤーがしていたVRMMOという仮想現実を使ってキャラを操るゲーム。剣と魔法のファンタジー世界で何処までも自由にと売り出せれれば、元の世界にいた頃の俺なら絶対にやっていただろう。

 今は頼まれてもゴメンだが。
 

 浮くテレビとかマジでどうなってんの?

 ユウカは俺の疑問に気づいたのか浮くテレビをシュッと自分の手元に作った。

『これは僕の居た世界でも普通にあったよ』

 待て待て、今どう作ったんだよ!?

「ただそこのテレビの魔法式をコピーして光と土の魔力を流してるだけだよ? 受け皿を作るだけだからね」

 簡単だよ? と首を傾げるユウカ。

 これだからチート持ちは!

 代表的なのは低魔力で持続的に飛ぶ車や、国から国同士を結ぶ道に魔物を弾く障壁の維持展開。

 これらの発明が文明を飛躍的に発達させた原因だろうか。

 魔法式のプログラム化も一式・二式などあったが、それも今では圧倒的に簡略化されている。

 足し算の式を作って解いてた奴が急に掛け算の九九を覚えるような感じだろうか。

 全く理解できないがリリアは魔法式の論文を見ただけで理解して新しい魔法を生み出していた。

 そして隣に居るユウカはその中でも化物のように活用できる魔法をリリアの数百倍の単位で生み出していたりする。

 完全に俺はヒモ状態だ。

 俺の前にグイッと顔を近づけてくるユウカ。

「なんだい? 僕の事でも考えてたのかな?」

「大賢者様には敵わないなと思ってな」

 ユウカは可愛らしくムッと頬を膨らませる。

「クレス君! それ禁止!」

「それってなんだ?」

「大賢者様って奴! ちゃんと名前で呼んで」

「わ、わかった、わかったから」

 グイグイと来るユウカに怖気付く情けない俺。

 ユウカは俺が大賢者様って言うのがあんまり好きじゃないらしい。

 でもたまに言いたくなる時がある。

「もうすぐユリアちゃんとティアちゃんが大闘技場に現れるんじゃないかな」


『デートの途中だが娘達の応援に早く行くか』


 数歩歩いてもユウカが付いてこない事に疑問を持つ。

 後ろを振り向くとユウカはその場に立ち止まっていた。

 俺を射抜く眼差しは何かを期待してる?


『ゆ、ユウカ行くか』

「うん!」

 少し照れくさくなってしまったが、笑顔で駆け寄ってくるユウカを見ていて気分は悪くない。

「次はリリアもか」

「そうだね、僕だけクレス君とデートしてたなんて知ったらリリアちゃん絶対にズルいって言うよ」

 考え事してた時にいつの間にか何本か串焼きを食べていたらしい。

 袋の中を覗くと三本の串が中に入っていた。

「ユウカ食うか?」

「ありがと」

 俺達は串焼きを食べながら大闘技場に向かった。

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