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成長
しおりを挟む『待ってよティア!』
追いかける私から逃げるように走る速度を上げていくティア。
だけどティアは一定の距離を保って私を置いていこうとはしない。
私は追いかけるのをやめるとティアもピタリとその場に立ち止まった。
ちょうど木々が晴れてひらけた草原が私の目の前に広がって立ち止まったティアの後ろ姿が確認出来た。
「なんで逃げるの?」
私の声は届いていないのかティアは振り向かず、私に向かって言葉を投げかけることもない。
再度私はティアに聞く。
「なんで逃げるの?」
少し大きめに張った声。
ビクッとティアは肩を揺らす。
『……』
ボソッと何かを呟いたティア。
何かを言った事しか分からない。
怒っているティアに謝らなければならない。
「ティア!」
私が名前を呼ぶとティアは意を決したように振り返る。
星の光でも充分に確認出来るのは涙を目に溜めているティアの姿。
そして私から逃げていた筈のティアが今度は私に向かって走ってきた。
何が起こっているのか分からない私はティアが胸元に飛び込んで来るまで呆然とティアを見ていた。
『お姉ぢゃんごべんなさい』
私の胸の中で鼻をすすり、目から涙が溢れて泣き出したティアは謝罪の言葉を口にしたのだ。
「ティアが何で謝るの? 悪いのは私なんだよ」
「お姉ちゃん、私に、怒って、ると、思って、嫌われちゃったかと思って」
ティアの頭をゆっくりと撫でると荒かった息がゆっくりになっていく。
「ティアに私は怒ってないよ。でも私もティアに言いたいことがあるの」
ティアからの返事は無いけどティアは頭をコクリ縦に振った。
それを了解の合図と受け取った私は言いたかった言葉を口にする。
「突き放しちゃってごめんね。心配させてごめんね」
勝手に嫉妬して、勝手に苛立って。
勝手に、勝手に……。
ティアの気持ちも考えないで。
ティアはずっと私に怒られてるって、嫌われてるって思っちゃうほどに追い込まれて。
それでも優しいティアは私よりも先に涙を流してまで謝ってきた。
その気持ちを私は……。
私の頬に熱い物が伝って落ちる。
『馬鹿なお姉ちゃんでごめんね』
私に抱きついたまま離れないティアは胸元から顔を覗かせると口を開く。
「お姉ちゃんは馬鹿じゃないもん! 大好きな私のお姉ちゃんなんだよ! お姉ちゃんを馬鹿って言うなら私は誰だって怒るよ!」
お姉ちゃん本人に怒ると言うティア。
想いもよらないティアの回答にフッと吹き出してしまった。
「酷い! 私は本気なんだからね」
「ごめんね、もう言わない」
「うん」
ティアは涙ぐんだ顔で花が咲いたように笑う。
この笑顔は私が守らないといけない物だと改めて感じさせられる。
「ところでティアはいつまで抱きついているの?」
「お姉ちゃんと離れて寂しかったからもうちょっとこうしてたいの」
甘えん坊なティアの頭を撫でる。
大好きな妹の頼みなら聞かない訳にはいかない。
ティアの気が済むまで付き合った後、私達は二人で仲良く家に帰った。
次元の狭間で光の女神は楽しそうに喋っていた。
「だから神とか名乗って地球の人をコッチに呼ぶのはやめなって言ったんだよ。ユウ君に殺されたことまだ根に持ってるの?」
そんな光の女神のお喋り相手は一人の男。
「アイツは調和の神の俺が秩序の為に弄った計画を壊した張本人だぞ! これが黙ってられるか!」
「でも調和の神の復讐には役不足だったみたいだね。ユウ君が余裕にクリアしてた試練を地球の魔術師? は凄く手間取ってたみたいだしね」
調和の神は舌打ちをして見るからに苛立ちを見せる。
「なんで剣の勇者含んだ仲間の奴等もあんなに強いんだよ! あの地球の魔術師も強い筈なのに……待てよ、もっと強い時代の魔術師を呼べばいいんじゃないか?」
「私は見守るだけだから調和の神を止めることは出来ないけど一応忠告だけはしといて上げる。貴方の手には余るからやめた方がいい」
光の女神の忠告を調和の神は受け流し、神の魔法を構築する。
『まだ剣の勇者と深く関わってないアイツらなら修正が効く……アイツらを無かったことにして、っと』
調和の神が呟くとズラっと地球から呼んだ人物が映像で現れる。
その人物達を一人一人が居たはずの空間を切り抜き調和の神が関わらなかった状態まで時間を元に戻す。
そして時間軸を弄りながら映像を速める。
するとポツポツと真っ暗になっていく映像。
死んだ人物の未来まで調和の神は見れない。
その度に新しい魔術師の映像を加えていく。
調和の神はその魔術師の中から何人か選ぶ予定だったが。
最後に残った魔術師は一人だけ。
『無かったことにして正解だったな……これほど成長するとは思わなかった』
その魔術師はたったの十数年で全ての地球にいた魔術師を倒し、決して光には現れず、影の英雄になった男。
『天童光』
調和の神はその魔術師の名を口にする。
さっそく神と名乗り地球に言葉を託す。
調和の神はこの男の望みは知ってる。
『私は地球の神だ。天童光……ミライを別の世界から救いたくはないか?』
その瞬間、調和の神のコメカミに銃が突きつけられた。
『やっと手がかりが掴めた。お前がどこの誰かは知らないが、さっさとミライを奪った奴等を教えろ……命が惜しければな』
次元の狭間に男は瞬時に転移してきた。
『どうやってここへ!』
調和の神は異常事態に焦りを覚える。
『お前の魔力を辿っただけだ。さて俺は答えたぞ、次はお前の番だな神とやら』
『……ッ!』
これで復讐が出来ると調和の神は改めて確信した。
試練も終わり家に帰ってきていたクレス達。
特異点であるクレスと直感を持つユウカはこの違和感に瞬時に気づいた。
ユウカが口を開く。
『誰かが世界に干渉したみたいだね』
クレスもユウカに同意する。
『あぁ多分な。リリアさっき試練に来てた奴等の名前なんだっけな?』
『今日は誰も来てないよ?』
リリアは不思議そうにクレスに言葉を返す。
『嫌な予感がするね』
『あぁ』
ユウカの予感にクレスも同意した。
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