天才な妹と最強な元勇者

くらげさん

文字の大きさ
188 / 201

何者

しおりを挟む


『まずは互いの力量を体感的に感じてください』

 俺は剣を握り直すとリリアが開始の合図を送る。

『始めてください』

 すぐさまティアとユリアが動いた。

 俺を守る為に。

 至る所から俺を目掛けて飛んでくる魔法を剣で撃ち落としていく。

 どこからか声がする。

『お前らがいるせいで!』

『消えろ!』

『なんでこの学園に居るんだよ!』

 俺は守られながら娘達に向けられる敵意を感じる。

 簡単なんだよな。

 そう、簡単なんだ。

 自分の浅はかさ、自分の醜さ、自分の愚かさ。

 全てを誰かにぶつければ、全て簡単に自分のせいじゃなくなる。

 自分を傷つけなくて良くなる。

 ティアとユリアは不完全に完璧だ。

 だからこそ格好の的なんだろう。

 最近の事でいえばメルカトラスは模擬戦争で優勝を逃し、親はリリアとユウカという憧れる存在だろう。俺が見ても天才な娘達だ……特待生枠も確実に二つの空きは来ない。

 俺がここに居なければ優しい娘達はコイツらのサンドバッグになっていたはずだ。

 魔法を纏って反撃などせずに耐えるだけなんだろう。

 それを耐えるだけの力はティアとユリアにある。

 だけどな……。


『ユウ様抑えてください、相手はまだ子供なので』

 クロの声で考える思考から復帰するとその場の全員が足を止めて震わせていた。

 何があった?

『殺気漏れてましたよ』

 ……あぁ、悪い。

 ティアとユリアが俺の方を向いて剣を向けている。

 ティアが口を開いた。

「ルナちゃん、何者?」

 俺はティアの目線を切って、近くに居た奴を一人斬り伏せる。

 ティアとユリアが笑顔なら俺が口を出すことはないと思ってたんだけどな。

 だが良い機会だ。

「お前らは才能も無いし、ティアとユリアを羨ましいと眺めることしか出来ねぇクズ共だ」

 まぁ、クズの気持ちは痛い程わかる。

「才能ない奴が天才を超えられないなんてリリアに教わったのか? 安全だと分かってる状態で攻撃してるんだろ?」

 お前らはティアの優しさを知ってるだろ。

 お前らはユリアの温かさを知ってるだろ。

「皆んなで組んで反撃なんて来ないのを知っていて……ティアとユリアがお前らに何をした? いつも笑顔で話しかけるティアと面倒みがいいユリア」

 勝手に決めつけて、勝手に憎んで。

「そんな二人は一度でもお前らを下に見たのか!」

 見るはずないだろ。ティアは良く話してる。

『今日一般の子達と仲良くなったの! お姉ちゃんがね……』

 嬉しそうに話すティアの顔がチラつく。

「お前らが努力しても手に入らない次元の力を羨ましがってるのは分かる。だがそんな事はどうでもいい、お前ら自体に興味はねぇしな」

 お前らが知らないティアとユリアを俺は知ってる。


『お前らはティアとユリアがお前ら以上に努力してる事を知らないだろうが!』


 俺の声を聞いてか、ティアとユリアへの殺気が消えていく。

 周りから口々に盛れる声。

『ごめん』

『ティアちゃんごめんね』

『ユリアさんごめんなさい』

 やっと分かってくれたのか。


『お前らが懺悔しようが関係ない、一人一人ぶっ殺してやる』


 殺気を纏い萎縮してる奴等に剣を向け。

『はい、そこまでです』

 パンっと手を叩くリリア。

 俺は舌打ちをして剣を空中に投げる。

 はぁ、良い所で止められてしまった。

 俺の近くへトコトコと走ってくるティア。

「ルナちゃん」

 俺はティアにバッと抱きしめられる。

 え?

「初めて会った筈なのにルナちゃんをずっと前から知ってるような気がしてたんだけど……ありがとう、嬉しかった」

 ユリアもティアの後ろから顔を出した。

「私からも礼を言わせて欲しい、ありがとう」

 またユリアの優しい笑顔を見れるとは! 俺が女だったら娘から抱きつかれたりするのか。

 涙でそう。

「ルナさんを見ていると私も前から知ってるように思います。ティアとも似てるような気が……もしかして学園のどこかで何度かすれ違ったりしてますか?」

 ボロが出そう。

「お姉ちゃん! ルナちゃんこんなに可愛いのにすれ違ってたら私がわかるもん」

「ティアはこの学園で話した事がない生徒は殆ど居なかったはずなので改めて学園の広さを感じますね」

 俺は考え込む二人から目を離しリリアに視線を送る。

「皆さん、集まってください」


 リリアの声で初期位置に戻ろうとすると生徒一人一人がティアとユリアに謝りながら戻っていく。

 初期位置に戻ってもティアが俺を離してくれない。

 俺、最近ずっと誰かにくっつかれてる気がする。

「ルナちゃんカッコイイし可愛いし、あの殺気も本当に怖かった」

 めっちゃ横で褒められてるんだが。

 キャッキャとはしゃぐティアに強く言えないのは小さい頃のリリアの面影がチラつくからか。

 可愛いしな!

「皆さん肌で各々の実力は分かったと思いますし、この授業で色々と思う事もあったと思います」

 リリアが話し出すと静かになるティア。

 本当にリリアが好きなんだろう。

「これから学園祭に向けての選抜をしますが、もう身体を動かす事は無いので学生服へ着替えてください。疲れたと思うので食事と休憩を挟んできてもいいですよ」

 解散してもいいと言うことなのでゾロゾロと体育館を出ていく生徒。



 俺ももう帰っても。

「待ってください」

 体育館を出ようとしてた所でリリアから声がかかる。

「ティアちゃん、そちらの方は?」

「ルナちゃんの事?」

「はい、ルナさんに少しお話があります」

 怒ってる? 何か圧が凄い。

「ティアちゃん、ルナさんを離してくれないですか?」

 ずっと引っ付いてるティアがコレで離れてくれたらその隙に俺は逃げる!

「ダメ!」

 ティアは離すことを拒否すると俺を引っ張ってリリアから逃げ出した。


 え? え? え?

 俺は訳が分からないまま更衣室まで連れ去られてしまった。

「ルナちゃん、早く着替えてご飯にしよっか」

「う、うん」

 ロッカーを開けて、ため息を吐く。

 俺……スカート穿くのか。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた

砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。 彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。 そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。 死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。 その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。 しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、 主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。 自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、 寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。 結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、 自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……? 更新は昼頃になります。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

処理中です...