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第17話 花火

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 屋台で貰ったお土産を食べて処理をしていく。ノエルに鍛えられた食力を見せるとき!

 なんだ食力って。

 ノエルの作った料理の方が断然美味いけど、屋台の料理も雰囲気も考慮してか、なかなかいける。

 たこ焼きも、あ~んと食べさえあいをした。俺はもう死んでもいい。

 焼き鳥を食べながら、勇者と何を話したのか聞いみることにした。

「勇者と何を話したんだ?」
「綺麗ですねと言われました。一目惚れみたいです」
「妹と言ったかのか?」
「ソフィアさんが言っていましたね。勇者さんは記憶喪失みたいでしたね」

 ふむふむ、記憶喪失勇者とソフィアは仲が良いと。ソフィアは絶対に手助けをしないと思っていたが、勇者はどんな手を尽くしたんだ。それが一番気になる。

「お兄様と中身が変わってしまったから、こうやってお兄様と旅が出来ているんです。勇者さんには感謝しかしてないです」
「そうだな」

 勇者には俺も感謝しかしてない。

「ソフィアさんから勇者さんに抱き着かないの? と言われました、ブラコンなんだからと。私はそれを拒否して、夫がいるんでと言ってやりましたよ!」
「ノエルは本当に良いのか、夫が兄で」
「はい、もちろんです」

 ノエルが腕に抱きついてくる、可愛いヤツめ。

 まぁ、勇者にだって妹はやらんが。

 兄から夫になったからといって、兄の時と、やっていることは変わってない。

 ノエルのワガママを聞いたり、俺のワガママも聞いてもらったりだ。

 兄妹の頃から変わってない。

 冷たくなった焼きとうもろこしを二人で食べる。



 暗くなってきて、花火が上がる時間まではもう少し。

 屋台のお土産も食べ終わり、魔法のポーチにゴミを入れる。


 今度は屋台を冷やかすのはやめて、海の方へ急ぎ足で行く。離れないように、ノエルの手を握りながら。

 屋台を無視したら海辺へすぐに着いた。

 海辺は人が多い。魔法のポーチからレジャーシートを出して、土手に座る。ノエルも横に座った。

「もうそろそろですね」

 ノエルの言った通りに花火が上がるのは、もうそろそろだ。




 シュッ! と海の方で聞こえた。そして、ぴゅ~ と夜の海から上に打ち上げれている音がする。

 口笛のような音が無くなると、鼓膜を揺する音と共に、俺を俺たちを光が襲う。

 赤青緑白紫黄色、色とりどりの色の火花が、大輪になって空を覆い尽くした。

 ぴゅ~、ぴゅ~、とどこからか鳴れば、鼓膜を揺するドデカい音と、そして目を奪われるのは炎の花。

「……すね、き、い、す」

 口を開けたままで、俺は見上げていたらしい。ノエルの方を見てみれば目をキラキラと輝かせて。

「綺麗ですね」

 花火の音で聞き取りずらいが、ノエルの声にも反応して、首を縦に振った。

 スゲェと思う。炎の花にまで美しさを追求しているのか、パンフレットにあった通り、夜に大輪の花が咲き乱れた。

 轟音と、火薬の匂いと、ノエルの冷たくて柔らかい手が俺の右手に触れる。

 良いの物だな、轟音の静けさという物も。





 あっという間に花火が終わった。花火は一時間と少し撃っていたらしい、玉がどれだけいるんだ? 数千発はいるだろうな。

「あっという間でしたね」
「あぁ、凄かった」

 花火が終わったあとも、ボケっと人が少なくなるまでレジャーシートに座っていた。

 辺りに人がいなくなって、レジャーシートを片付ける。

 そして宿にのんびり帰ることにした。

「おい、待て!」
「なんだ?」

 ノエルと手を繋いで帰ろうとしたら、待てと声をかけられる。

「僕はモーブル・レディエント。ノエルを返してもらおうか!」
「は?」

 俺が殺気を出して、振り返る。だが何故かお構い無しで、フンフンと鼻息を荒くしておられる。

 元は俺の顔なのにそんな馬鹿面はやめて欲しい。

「お前さ、ノエルから拒否されたんだろ、しつこいぞ」
「僕が誰か分かんないの、勇者。勇者! ノエルは僕の妹だぞ、ブラコンって聞いているから僕の物だ。へへ、僕に勝たんと妹はやらないぞ」

 コイツ大丈夫か? 人の身体を借りてまで勇者になりたい自己中が、俺から大事な妹も取るのか。

 俺は唱えるチェンジと。

「チェンジ」


「ギァリイダイイタイイタイ!」

 何故か勇者は地面に寝そべり、俺の足の裏に顔を埋めている。

「お兄様、負けを認めてくださいよ」
「マゲダマゲ! マケ、ダマゲダ!」
「ほら早く」
「マゲダ! マゲ、ダ! マゲダ!」

 俺は自分の顔を全力で踏みながら、勇者モーブル・レディエントの負けを認めるのを待つ。

「早く認めないと、顔、変わっちゃいますよ」
「負けよ! 負け、そう言ってるじゃない!」

 ソフィアは俺を押して、勇者を助けた。

「悪い、この世界には勇者よりも強い奴がそこら中にいると分からしてやらないとという使命感でつい、やり過ぎました。反省しています、ソフィア様」

 女王様に向かって会釈を垂れた。


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