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第22話 不老不死の死

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 妖精の国にも宿がある。そこでゆっくりしながら一週間が経った。

 世界樹のお客人と言うことで、ここに来て、お金を使っていない。

 小さい妖精のシフルは、案内役兼監視役だろうか? ノエルの傍を離れようとしない、寝る時もお風呂に入る時も一緒だ。

 シフル言わく、気の済むまで居ていいと言うことらしい。

 妖精の国は豊かな国だ。転生者の知識が至る所にあり、人の国と同じ水準で便利だし、清潔だ。

 妖精とその仲間たちは、もっと不便な生活をしていると思った。世界樹だぞ、もっとファンタジーっぽくしろや。リモコンでクーラーを付けたり、消したりする。

 世界樹の近くの宿でコレだぞ。リモコンで電気を付けたり、クーラーを付けたり、加湿器兼除湿機の空気清浄機まであって、カーテンをリモコンで開けたり、閉めたり出来る。

 カーテンを動かす奴は俺の屋敷にも無かった。

 俺がイメージしていた世界樹、そしてそこに暮らす者たちの風景じゃない。もっと絵本のようなファンタジーっぽいのを期待していた。

 まぁ、宿がそういうファンタジーっぽいのだと、嫌なんだけどな。

「今日はどこ行くんだノエル!」
「どこにしましょうか」

 シフルはノエルにベッタリだ。ノエルもお姉さんのようにシフルを見ている。

「もうそろそろ妖精の国から出ないとな」
「はい、お兄様」

 俺が出ることを告げると、シフルがあからさまに嫌そうな顔をする。

「もう行っちゃうの?」
「お兄様は、もうそろそろと言いました。あと一週間と言ったところでしょうか」
「いや! シフルはノエルといる!」

 寝巻きのノエルの胸に埋まったシフル。

 ノエルはシフルの頭を人差し指と中指の二本で撫でる。

「今日明日じゃないですよ。あっそうです! 昨日言っていたシフルちゃんの秘密の場所へ行きたいです。ダメですかね?」
「ノエルならいい」

 じゃあ俺は宿でお留守番か。



 ノエルは俺に申し訳なさそうにしてたから、別に気にするなと言っておいた。

 俺はノエルとシフルがいなくなった部屋で、二度寝するかとベットに潜る。

「やっとモブオと二人っきりになれたね」

 どこから現れたのか。

 二度寝はやめて、ベットから起き上がる。

「世界樹が何用だ」
「用が無いと来ちゃいけないの?」
「あぁ」

 俺の淡白な言い様にも気にせずにテトナはノエルのベットに腰掛ける。

「残念なことに用はあるわ」
「ノエルには聞かれたくない話なのか?」
「ノエル本人に聞かせてもいいけど、ノエルが死ぬ話をして大丈夫かしら」
「ノエルが、死ぬ?」

 世界樹はそういうなら、そうなんだろう。俺を騙そうとしたら、どうなるかを世界樹は知っているだろうからな。

「妖精の国にいる間は死ぬ速度がゆっくりになっているけど、あと一週間後にノエルは死ぬわ」
「ノエルは不老不死の霊薬を飲んでいるんだぞ。しかも俺がいてノエルが死ぬなんて有り得ない」

 そうだ、ノエルは不老不死の霊薬を飲んでいる。死人が来ることはない、来たとしても俺が送り返してやる。

 まだ旅をしたばっかりだぞ。なんでノエルが死ぬんだ。

「不老不死の霊薬も、そこに留まる力と極限の再生力が拮抗して出来た奇跡の薬よ。身体のどこかしらを欠損する致命傷になると死ぬわ、心臓とかね。でも死が、寿命の死と勘違いしないで、死は至る所にあるのよ」
「あと一週間だな」
「妖精の国にいる間は半日遅くなってる。けど、必ず来ることよ。絶対に変えられない世界樹からの運命のお告げ」
「変えられない運命なら何故俺に教えた」

 テトナはベットから立ち上がり、部屋の出入口の扉に手をかけた。

「何故かしら、私にも分からない。でもノエルは運命とは違う選択をした。私はノエルの願いを叶えられなかったから、モブオに嫌がらせ。友達の助かる可能性は少なからずあった方がいいでしょう」

 誰かから狙われているなら一緒にいればいい、でもテトナは死は寿命の死とは限らないと言っていた。

「死の原因は?」
「さぁ」

 死の原因が何か聞くと、テトナは一言残して、部屋を後にした。



 テトナは未来にノエルの死ぬと分かって、その原因は知らないと。

 使えない能力だ。しかもだ、未来予知は外れないと来ている。

 一週間後か。

 考えても、一週間後になってみないと分からない。

 一週間後に何も無かったら、世界樹の木をたたっ斬ることは決めた。


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