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姫君が壁の穴から僕の部屋に入ってきた
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月の明るい、ある夜のことだった。
青い光の中、乾いた平野には砂塵が渦巻いている。
その中に見えるのは、高い壁に囲まれた、大きな石造りの城だった。
高い壁に囲まれているので、城は全体の半分くらいが隠れている。外から見えるのは、その中の高い塔くらいだった。
城壁の上には不寝番の兵士が交代で立っている。
だが、彼らが警戒しているのは、平野の向こうから襲ってくる外敵だけである。
その足元で何が起こっているか、そこまで目を止める者はない。
壁の真下を、月の光が映し出した華奢な影がひとつ走り抜けていったとしても、彼らにとってはたいした問題にはならない。
ましてや、束ねた長い髪をなびかせて駆けるサンダル履きの人影が忍び寄ったのは、王族や高貴な人々の住む屋敷ではなかった。
「……起きてよ」
城壁からそれほど遠くないところに散らばる、使用人たちの小屋のひとつに近づいて囁く。
同じ壁とはいっても城とは比べ物にならないくらいみすぼらしい、塗り固められた土壁の向こうから、呻き声が聞こえた。
「……誰?」
泥のように眠っていたのだろう。
無理もない。
日が昇っている間、この城は国王の末娘であるシャハロの婚約を披露する宴で大賑わいだったのだ。
それに駆り出された使用人たちは、疲れですっかり正体をなくしていたのである。
「入るからね」
名乗りもしないで当然のように言い切ると、人影はするりと小屋の中へ消えた。
別に、壁抜けの魔法などという大仰なものを使ったわけではない。
そんな話が聞けるのは、おとぎ話の中だけだ。
何のことはない、この小屋の壁には大きな穴が開いていて、それを内側に吊るされた古く分厚い毛布が隠していただけの話である。
雨風をよけるためにそうせざるを得なかった小屋の主は、もう少し新しくて清潔な毛布の中から慌てて跳ね起きた。
「シャハロ……様?」
少年の声はそう呼んだが、本当の名前はシャハローミという。
この城の主、ということはこのジュダイヤの国の王であるが、その末娘である。
嫡子庶子合わせて10人は下らない。この男装の姫は、その庶子のほうに当たる。
だが、この少年の身分では、それなりの敬称を着けて然るべき相手だった。
シャハロはというと、身分差を気にする様子もない。
「ナレイに聞いてほしいことがあって」
この少年、本当はナレイバウスという。
慌てて答えた声の若さからしても、年の頃はシャハロとそれほど変わらない。
「帰ってよ……じゃない、お帰りください」
暗くて分からないが、床の辺りから聞こえるくぐもった声からして、どうやら平伏しているらしい。
ところが、囁くようなその返事もまた、床を這うようにして聞こえた。
「どいてくれないと帰れないわ」
どうやら、ナレイはシャハロに覆いかぶさっていたらしい。
どたばたと床を転がる音と共に、あたふたと答える声がする。
「ごめん……じゃない、申し訳ありません」
「だから離してよ……大声出そうか? それとも」
暗いせいで、手足が余計に絡み合ったらしい。
そこで小屋が微かに揺れたのは、身体を起こしたナレイが背中をぶつけたからだろう。
しどろもどろに言い訳をする。
「暗かったから……そう、暗うございましたので」
「じゃあ、明かりつけてよ、ランプの」
床の上で何か転がる音がする。
ナレイがランプに火を灯そうとしているのだ。
「いや、じゃなくて……申し訳ありません、火口箱が……」
「じゃあ、これでいいわ」
シャハロが壁際の毛布をはねのけると、青い月明かりが差し込んでくる。
そのおかげでようやく見つけた火口箱をふうふうやりながら、ナレイがたしなめた。
「やめて……ください。人に見られたら……どうするん……ですか」
ようやくのことで、水差しのような形をしたランプの口に火が灯る。
再び壁の穴を毛布で隠したシャハロは、向き直ったナレイと目を合わせて座った。
男装した黒髪の少女と、使用人にしては整った顔立ちをした少年は、しばし見つめ合う。
やがて、口を開いたのは少年のほうだった。
「この度は、ご婚約おめでとうございます」
ほのかな灯の前で再び、ナレイはひれ伏した。
だが、シャハロは露骨に顔を背ける。
「何よ、白々しい」
「いえ、心の底から」
ナレイは顔を上げようとしない。
どうしても、シャハロはそれを見下ろす形になる。
「いやなのよ、こういうの。私たち、こんなんじゃなかったでしょう?」
「それは、年端も行かぬ子どもでございましたから」
まだ床に張り付いたままのナレイに、シャハロは冷ややかに言った。
「大声出そうか?」
途端に、使用人の少年は姫君の前に跳ね起きる。
「やめてよ、シャハロ」
「よろしい」
灯がほのかに照らし出したシャハロの可憐な笑顔が答えた。
ナレイは足を崩すと、ぶつくさ言いだす。
「そりゃ、僕たち同い年だし、出会ったときは子どもだったし」
ナレイがシャハロに引き会わされたのは、3歳くらいのときだったらしい。
シャハロ付の使用人の子として紹介され、自分の立場も相手の身分も立場がわからないまま、遊び相手になっていた。
当時は、すぐ隣にあったサイレアという小さな国をジュダイヤが滅ぼした直後で、その後始末のために人手が足りなくなっていた。
ましてや庶子の姫ともなれば、扱いがおざなりになっても不思議はない。
そのせいもあってか、シャハロは気ままに育っていた。
「何言ってるの、今だって同い年になる勘定じゃない」
「そっちじゃなくて」
いつの間にか、ナレイの口調は幼馴染同士の、なんの隔てもないものに戻っていた。
だが、それまで笑っていたシャハロの顔は、ひと言ツッコまれただけで急に曇った。
「じゃあ……今は? 私、大人になりたくないの」
出会ったときから、ふたりのあいだには同じ月日が流れていた。
ナレイが17歳になれば、シャハロが17歳になるのも道理である。
ジュダイヤでは、もうとっくに結婚していてもいい年頃であった。
青い光の中、乾いた平野には砂塵が渦巻いている。
その中に見えるのは、高い壁に囲まれた、大きな石造りの城だった。
高い壁に囲まれているので、城は全体の半分くらいが隠れている。外から見えるのは、その中の高い塔くらいだった。
城壁の上には不寝番の兵士が交代で立っている。
だが、彼らが警戒しているのは、平野の向こうから襲ってくる外敵だけである。
その足元で何が起こっているか、そこまで目を止める者はない。
壁の真下を、月の光が映し出した華奢な影がひとつ走り抜けていったとしても、彼らにとってはたいした問題にはならない。
ましてや、束ねた長い髪をなびかせて駆けるサンダル履きの人影が忍び寄ったのは、王族や高貴な人々の住む屋敷ではなかった。
「……起きてよ」
城壁からそれほど遠くないところに散らばる、使用人たちの小屋のひとつに近づいて囁く。
同じ壁とはいっても城とは比べ物にならないくらいみすぼらしい、塗り固められた土壁の向こうから、呻き声が聞こえた。
「……誰?」
泥のように眠っていたのだろう。
無理もない。
日が昇っている間、この城は国王の末娘であるシャハロの婚約を披露する宴で大賑わいだったのだ。
それに駆り出された使用人たちは、疲れですっかり正体をなくしていたのである。
「入るからね」
名乗りもしないで当然のように言い切ると、人影はするりと小屋の中へ消えた。
別に、壁抜けの魔法などという大仰なものを使ったわけではない。
そんな話が聞けるのは、おとぎ話の中だけだ。
何のことはない、この小屋の壁には大きな穴が開いていて、それを内側に吊るされた古く分厚い毛布が隠していただけの話である。
雨風をよけるためにそうせざるを得なかった小屋の主は、もう少し新しくて清潔な毛布の中から慌てて跳ね起きた。
「シャハロ……様?」
少年の声はそう呼んだが、本当の名前はシャハローミという。
この城の主、ということはこのジュダイヤの国の王であるが、その末娘である。
嫡子庶子合わせて10人は下らない。この男装の姫は、その庶子のほうに当たる。
だが、この少年の身分では、それなりの敬称を着けて然るべき相手だった。
シャハロはというと、身分差を気にする様子もない。
「ナレイに聞いてほしいことがあって」
この少年、本当はナレイバウスという。
慌てて答えた声の若さからしても、年の頃はシャハロとそれほど変わらない。
「帰ってよ……じゃない、お帰りください」
暗くて分からないが、床の辺りから聞こえるくぐもった声からして、どうやら平伏しているらしい。
ところが、囁くようなその返事もまた、床を這うようにして聞こえた。
「どいてくれないと帰れないわ」
どうやら、ナレイはシャハロに覆いかぶさっていたらしい。
どたばたと床を転がる音と共に、あたふたと答える声がする。
「ごめん……じゃない、申し訳ありません」
「だから離してよ……大声出そうか? それとも」
暗いせいで、手足が余計に絡み合ったらしい。
そこで小屋が微かに揺れたのは、身体を起こしたナレイが背中をぶつけたからだろう。
しどろもどろに言い訳をする。
「暗かったから……そう、暗うございましたので」
「じゃあ、明かりつけてよ、ランプの」
床の上で何か転がる音がする。
ナレイがランプに火を灯そうとしているのだ。
「いや、じゃなくて……申し訳ありません、火口箱が……」
「じゃあ、これでいいわ」
シャハロが壁際の毛布をはねのけると、青い月明かりが差し込んでくる。
そのおかげでようやく見つけた火口箱をふうふうやりながら、ナレイがたしなめた。
「やめて……ください。人に見られたら……どうするん……ですか」
ようやくのことで、水差しのような形をしたランプの口に火が灯る。
再び壁の穴を毛布で隠したシャハロは、向き直ったナレイと目を合わせて座った。
男装した黒髪の少女と、使用人にしては整った顔立ちをした少年は、しばし見つめ合う。
やがて、口を開いたのは少年のほうだった。
「この度は、ご婚約おめでとうございます」
ほのかな灯の前で再び、ナレイはひれ伏した。
だが、シャハロは露骨に顔を背ける。
「何よ、白々しい」
「いえ、心の底から」
ナレイは顔を上げようとしない。
どうしても、シャハロはそれを見下ろす形になる。
「いやなのよ、こういうの。私たち、こんなんじゃなかったでしょう?」
「それは、年端も行かぬ子どもでございましたから」
まだ床に張り付いたままのナレイに、シャハロは冷ややかに言った。
「大声出そうか?」
途端に、使用人の少年は姫君の前に跳ね起きる。
「やめてよ、シャハロ」
「よろしい」
灯がほのかに照らし出したシャハロの可憐な笑顔が答えた。
ナレイは足を崩すと、ぶつくさ言いだす。
「そりゃ、僕たち同い年だし、出会ったときは子どもだったし」
ナレイがシャハロに引き会わされたのは、3歳くらいのときだったらしい。
シャハロ付の使用人の子として紹介され、自分の立場も相手の身分も立場がわからないまま、遊び相手になっていた。
当時は、すぐ隣にあったサイレアという小さな国をジュダイヤが滅ぼした直後で、その後始末のために人手が足りなくなっていた。
ましてや庶子の姫ともなれば、扱いがおざなりになっても不思議はない。
そのせいもあってか、シャハロは気ままに育っていた。
「何言ってるの、今だって同い年になる勘定じゃない」
「そっちじゃなくて」
いつの間にか、ナレイの口調は幼馴染同士の、なんの隔てもないものに戻っていた。
だが、それまで笑っていたシャハロの顔は、ひと言ツッコまれただけで急に曇った。
「じゃあ……今は? 私、大人になりたくないの」
出会ったときから、ふたりのあいだには同じ月日が流れていた。
ナレイが17歳になれば、シャハロが17歳になるのも道理である。
ジュダイヤでは、もうとっくに結婚していてもいい年頃であった。
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