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胎動
胎動1
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何故、こんな事になった?
潜入活動を続けて7年ただの一度も失敗したことはない。
だが、今の状況はどうだ。なりふり構わず逃げるしかない。
夜の闇の中逃げる?どこへ?
街からも追手が出ているだろう。それにあの街は入るのは容易いが出るのは異常なほどチェックが厳しい。
このままではここで死ぬ。
実感はわかないが理性がそれを告げている。
任務を果たさなくてはならない。それがなんであるか理解できていなくとも見たものを伝えなくては。
あちらこちらにたいまつの炎が見える。
隠れる場所がほしい。20分、いや10分でよいから精神を集中させることが出来る安全な場所。
2、3候補はあったがすべて逃走経路の反対側だ。
そもそもあの時点で発覚することを想定していなかった。
慢心。そう慢心していたのだ。
気づけば後悔の念からかこめかみが痛くなるほど歯を食いしばっていたことに気付く。
不意に背中が焼けるような悪寒が走る。
何も考えず体が勝手に右に飛んだ。
直後、強烈な熱線。身が焦げるような熱さ。左足に刺すような痛み。
全てが瞬時に来た。
振り向く。
その前までにいた場所と左側2mに及ぶだろうか広範囲の下草がそれを放ったと思われる人物から直線状に200メートルちかく発火していた。
一瞬その人物が見えたがその後すさまじい音がしてその線上にあった大木が倒れてい姿を消していく。
半ば唖然としながら立ち上がった。
見つかった時もそうだったがすさまじい力だ。甲種、間違いなく甲種レベルの力。
王国になぜそんな力の持ち主が?
疑念が頭をよぎる。
だが同時にこうも考える。あまり賢い人物ではない。
まわりこめ!!
怒鳴り声が聞こえる。
若さを感じる声だ。
大木が倒れ込んでいるため直線では追ってきにくくなっている。
左足がさすように痛みが現実に意識を引っ張り返す。まずい、熱傷だ。
だが走らねば。このまま行けば海に突き当たるはず。
街からは逆方向に逃げている。情報では断崖絶壁のはずだがどこか降りれる場所があると信じるしかない。
ふっ、口が自虐的に歪んだ。
先ほど死を覚悟したというのにまだ生きようとしている。
皇国に秘密で作ってしまった妻子。4か月前ちょうどこの任務に就く前3歳になったばかりの息子の笑顔。
抱きあげたときに感じた体温、そして声。すべてがリアルに思い起された。
まだ死にたくない。
今回の任務が成功すれば本国に許可を得るつもりだった。
若干24歳にして3年前の戦の最大の功労者と言われた。それからも功一等クラスの情報を本国に送りつづけてきた。
自分以上の工作員はいない。自負もある。この距離を本国と直接やり取りできる能力は自分にしかない。
そして今回もそのクラスの功績を上げればきっと本国も認めてくれると信じていた。
再度、右方数メートルの距離で突然の発火。
驚愕
先ほどから5分も立っていない!!
あれだけの力を使って直後にこの威力、もしかして連発できる?こんな力を持った人間など皇家にもほとんどいない。
絶対にこの情報も伝えねばならない。
そして直感する。当たれば死ぬ。
ただやみくもに撃っているだけかもしれないが運が悪く当たって死ねば任務は達成できない。
走りながらやるしかないのか・・・
やったことはないがやるしかない。どれだけの情報を送れるかはわからない。
力を使った後はおそらく走って逃げるほどの体力は残らないだろう。
届け!!
眉間の奥、脳のさらに中央そこに力を集中させるイメージ。
そして伝えたい人物を、数千キロの彼方にいる姉を思った。
潜入活動を続けて7年ただの一度も失敗したことはない。
だが、今の状況はどうだ。なりふり構わず逃げるしかない。
夜の闇の中逃げる?どこへ?
街からも追手が出ているだろう。それにあの街は入るのは容易いが出るのは異常なほどチェックが厳しい。
このままではここで死ぬ。
実感はわかないが理性がそれを告げている。
任務を果たさなくてはならない。それがなんであるか理解できていなくとも見たものを伝えなくては。
あちらこちらにたいまつの炎が見える。
隠れる場所がほしい。20分、いや10分でよいから精神を集中させることが出来る安全な場所。
2、3候補はあったがすべて逃走経路の反対側だ。
そもそもあの時点で発覚することを想定していなかった。
慢心。そう慢心していたのだ。
気づけば後悔の念からかこめかみが痛くなるほど歯を食いしばっていたことに気付く。
不意に背中が焼けるような悪寒が走る。
何も考えず体が勝手に右に飛んだ。
直後、強烈な熱線。身が焦げるような熱さ。左足に刺すような痛み。
全てが瞬時に来た。
振り向く。
その前までにいた場所と左側2mに及ぶだろうか広範囲の下草がそれを放ったと思われる人物から直線状に200メートルちかく発火していた。
一瞬その人物が見えたがその後すさまじい音がしてその線上にあった大木が倒れてい姿を消していく。
半ば唖然としながら立ち上がった。
見つかった時もそうだったがすさまじい力だ。甲種、間違いなく甲種レベルの力。
王国になぜそんな力の持ち主が?
疑念が頭をよぎる。
だが同時にこうも考える。あまり賢い人物ではない。
まわりこめ!!
怒鳴り声が聞こえる。
若さを感じる声だ。
大木が倒れ込んでいるため直線では追ってきにくくなっている。
左足がさすように痛みが現実に意識を引っ張り返す。まずい、熱傷だ。
だが走らねば。このまま行けば海に突き当たるはず。
街からは逆方向に逃げている。情報では断崖絶壁のはずだがどこか降りれる場所があると信じるしかない。
ふっ、口が自虐的に歪んだ。
先ほど死を覚悟したというのにまだ生きようとしている。
皇国に秘密で作ってしまった妻子。4か月前ちょうどこの任務に就く前3歳になったばかりの息子の笑顔。
抱きあげたときに感じた体温、そして声。すべてがリアルに思い起された。
まだ死にたくない。
今回の任務が成功すれば本国に許可を得るつもりだった。
若干24歳にして3年前の戦の最大の功労者と言われた。それからも功一等クラスの情報を本国に送りつづけてきた。
自分以上の工作員はいない。自負もある。この距離を本国と直接やり取りできる能力は自分にしかない。
そして今回もそのクラスの功績を上げればきっと本国も認めてくれると信じていた。
再度、右方数メートルの距離で突然の発火。
驚愕
先ほどから5分も立っていない!!
あれだけの力を使って直後にこの威力、もしかして連発できる?こんな力を持った人間など皇家にもほとんどいない。
絶対にこの情報も伝えねばならない。
そして直感する。当たれば死ぬ。
ただやみくもに撃っているだけかもしれないが運が悪く当たって死ねば任務は達成できない。
走りながらやるしかないのか・・・
やったことはないがやるしかない。どれだけの情報を送れるかはわからない。
力を使った後はおそらく走って逃げるほどの体力は残らないだろう。
届け!!
眉間の奥、脳のさらに中央そこに力を集中させるイメージ。
そして伝えたい人物を、数千キロの彼方にいる姉を思った。
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