元OLの異世界逆ハーライフ

砂城

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第一章 ハイディン編

勝利の宴、からの……

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 これ以上はないというくらいの最高の結果だった『月王』がおわると、私達はそろってギルドに戻った。
 私はまたもブラックキング号に跨り、手綱はギルド長さんが持ってくれている。本当は『月王』になった相手と相乗りするところなのだけど、流石に三人乗りは無理だ。なのでロウとガルドさんの二人は、馬に乗った私の前を並んで歩いている。
 花束は誰かに渡したようだが、頭にはまだ勝利の証の冠をかぶっている。周囲から沸き上がる歓呼の声に、ガルドさんは笑顔を見せ、両手を挙げて応えているが、ロウは無表情に前を向いたままで、そのギャップがおもしろい。
 一度に二人の『月王』が出て、しかもどちらもが同じ所属というのは相当にレアな事らしい。しかも『月姫』までが揃っているという事で、それを聞きつけた人がどんどん集まってきていて、ギルドへの道はぎっしりと人で埋まっていた。
 そこをかき分けながら進んでいくので、パレードの速度は遅々として進まない。
 それでも何とか、事故もなく、ギルドへ到着して――あとはまた、昨日と同じどんちゃん騒ぎだ。



「本年は『月姫』獲得に加え、『月王』の称号も我がギルドのものとなりました。これは近年まれに見る快挙です! これを祝し、本日も宴を催したいと思います――思う存分、飲んで騒げ、野郎どもっ!」

 ギルド長さんのまたも短い挨拶の後、雄叫びが上がり、ギルドホールはカオス地帯となった。
 っていうか、これ昨日よりすごいんじゃない?
 そう思ってガルドさんに尋ねたら、今日の『月王選び』には、決勝トーナメントに進んだ人以外にもたくさんの放浪者が出場していたらしく、それに備えて昨夜は抑えていたんだ、と。
 あれでセーブしてたのかい……しかし、今夜の騒ぎを見れば納得できてしまうのが怖い。
 普通はあいさつの後で、乾杯の音頭があるはずなのだが、それすら待てない様子で男達がお酒の樽に殺到している。本来なら柄杓みたいなので汲んでから、手に持った器に注ぐはずなのだが、順番を待ちきれない人が、器ごと(ってことはそれを持ってる手も一緒に)樽の中に突っ込んでいる。
 ……あの樽のお酒は口にしないようにしよう。
 
 私は最初、ギルド長さんの近くでロウとガルドさんと一緒に並んでいたのだけど、あっという間に放浪者の方々に取り囲まれて、バラバラになってしまった。

「レイちゃん、こっち! こっちよっ」

 もみくちゃにされる寸前でラナさんに助け出されなかったら、どうなった事やら……昨日と同じように、ラナさん達女性陣スペースを確保してくれていて、そこでほっと一息つく。
 そして、そんな救いの手が差し伸べられなかったロウとガルドさんは乾杯攻めにあっている。
 助けてあげたいのは山々なんだけど――物理的に不可能っぽいからごめんね。私は非力な女の子なんです。
 速攻で出来上がった人もいるようで、どれだけの速度で呑んでるんですか。そして……なんで筋骨隆々の見事な肉体美を誇る戦士さんが、腹踊りなぞをはじめられているのでしょう? あれは中性脂肪山盛りの見事な太鼓腹を誇るおっさんがやるから様になるんであって、貴方の六つに割れた腹筋では今一つですよ――って、そこじゃない!
 なんでこっちに腹踊りがあるの? そして、どうして『す○い男の唄』につづいて『日本全国酒飲み○頭』のガリスハール王国版が歌われてるのでしょうか?

「おう、お嬢ちゃん、この歌もいいな! セラが早速、歌詞を作ってくれたぜ」

 アルおじさま、説明ありがとうございます。てことは、私が教えたんだろう。もしかしなくても、腹踊りもか……全く記憶がない。昨夜の私は、一体どれだけ飲んだんだ?
 昔読んだ小説の転生した主人公たちは、異世界に地球の科学知識や、医療技術、美味しい料理なんかを伝えてたけど、私はこの世界に宴会芸を伝えたって訳ですね――情けなくて涙が出るわ!

「レイちゃんは、いろいろ楽しいことをしってるのねぇ」
「あ、あははは……」

 ラナさん、武士の情けです。そこは突っ込まないでください。
 三十過ぎると、流石に合コンとかにも呼ばれなくなるんで、宴会と言えば職場&上司がらみが多くなる。世間一般ではそろそろ薹がたつとされる年齢でも、おっさんたちにしてみればまだまだ『若い子』のカテゴリなんで、面白がって教え込まれた結果なんです。おかげで、もっとエグい芸が出てきても笑い飛ばせていたよ――これ以上、伝える気はないけどね。

 出来れば、ゆっくりとロウやガルドさんと話がしたかったんだけど、ちょっと――いや、大分そういうムードじゃない。宿に帰ってからじゃないと無理だろうな。なので、必然的にお姉さま方との会話となったのだけど、いつものシーラさん、ラナさん、エルザさんに加えて、初めて見る方も何人かいらっしゃる。
 昨日は見なかったのに……と思っていたら、『月王』に出る為に急きょ、街に戻って来た人が大勢いたので、その対応で忙しかったようだ。ホールは宴会で使用していたので、別の場所でお仕事をしていたらしい。
 お疲れ様です、そして、そんなことも知らずに飲んだくれていてすみません。

「そんなこと、気にしなくていいのよ。それにレイガちゃん達のおかげで、ギルド長が大喜びでね。職員たちにも臨時ボーナスを出してくれるって話なのよ」

 そう言ってくれたのはフェルさんって女性だ。本名はフェローラさんといって、今回の月姫の準備には参加しなかったけど、やっぱりギルドの職員さんでシーラさんと同じく、複数旦那さん持ちさんだそうだ。ああ、シーラさんは宴会が始まって少ししたら、旦那さん方がお迎えに来てお持ち帰りされていったよ。昨日もそんな感じだったんだけど、本人はもうちょっと残っていたそうな顔をしてたのが印象に残ってます。
 そして昨日は私が主役だったので、ゆっくりと話も出来なかったのだけど、今日はロウとガルドさんがメインってことで、こっちに来る人も少ない。
 おかげで、女子会みたいなムードになって来た。
 しかも、お酒が入っている所為で、いつぞやのカフェでの会話に比べてもあけすけ度が半端ないです。
 上司や同僚の家庭の事情はともかく、どこぞのパーティで(主に下半身が原因の)内輪もめがおこった話とか職業柄知りえたお話がバンバン出てくる。守秘義務とか、個人情報の保護とかは……うん、気にしちゃダメなんですね。
 私が見た目通りの十七才なら真っ赤になって逃げだすような話題がてんこ盛りだよ。
 そして、聞くだけじゃなくて、こっちにもお鉢が回って来るのは当然の展開だ。

「ねぇ、レイちゃん。銀狼って、ホントのところどうなの? 最近、聞いた噂では、ちょっと……特殊な好みがあるって聞いたんだけど?」

 お酒で少し頬を赤く染めたエルザさんが、そんなことを訪ねてくる。前にも似たようなことを訪ねられた覚えがあるが、『最近、聞いた噂』ってなんだろう?

「特殊な――ですか? いえ、特に変わったことはないと思うんですけど……」

 やや羞恥プレイ(赤面)が好きな感じであっても、あれなら普通の範疇だと思う。なので、前と同じく当たり障りのない答えをしたのだけど。

「縛られたりしないの?」
「しば……な、ないですよ、そんなの!」
「あら、でも……」

 でも、の次に何か飲み込みましたね。そして、ラナさんもフェルさん(と他のお姉さま方)も、興味津々とした様子で耳を澄ませてますが、何故?

「どうしてそんな話が出てきたんですか? 噂って言ってましたけど、それって、どんな……?」

 後々、この質問をしたことを、すごーく悔やむことになるんだけど、この時の私にそんなことが分かるはずもない。お酒を飲んで、ちょっと理性の箍が緩んでいたしで、つい突っ込んで尋ねてしまった。

「言っていいのかしら……」
「そこまで口にしちゃったら今更でしょ」

 わずかに躊躇う様子を見せたエルザさんだったけど、ラナさんに促されると、さっさと話しだす。要するに、最初から言いたかったわけですよね。

「言っておくけど、単なる噂ですからね、レイちゃん」

 そう前置きをして、話してくれたのは――例の私の誘拐事件の辺りから、ひそかに囁かれていた噂だった。密かに、ってのがミソで、その為にエルザさん達の耳に達するのが遅くなっていたようだ。

「場末の――レイちゃんなら絶対に足を踏み入れるのはお勧めできない感じの酒場があるの。非合法の賭博もやってるらしいんだけど、そこで『銀狼』と『轟雷』に似た人を見たって話からなのよ」

 ふむ……それってもしかして、あの時にガルドさんが言っていた『情報収集』に関することかな? ロウはそう言った場所には足を踏み入れないタイプだしね。
 んで、その目撃した人(おそらくはここのギルド所属なんだろうが、流石に名前は伏せてあるようだ)の話によると、ガルドさん似の方がそこのバーテンダーと何やら話しているのが聞こえた。その内容というのが、噂の元になっているのだそうだ。

「『連れが特殊な性癖もちで、女性を縛ってヤるのが大好きだ』とか言ってたみたいなのよ。で、その連れっていうのが『銀狼』にそっくりだったって話なの」
「緊縛趣味、ですか……」

 うわ、それは……確かに引く。というか、こっちにもそう言う文化(?)があったのか。まぁ、複数でのナニがごく当たり前なのを考えれば、そういうのが趣味な人もいて当然なのかもしれないが。しかし、噂になるくらいだから、流石にマイナーな嗜好なんだろな。

「勿論、本当に本人かどうかはわからないし、噂って言うのはいい加減なものだってのは皆分かっていることだしね。ただ、ほら……なんていうのかしらね、『銀狼』って、他人と絡むことが少ないじゃない? レイちゃんや『轟雷』、他は精々がアルザークくらいでしょ? その癖、本人の見かけは極上の部類だし、それもあって、面白おかしいネタってことで広まっちゃったみたいなのよ」
「なるほど……」

 確かに、顔良し腕良しなのに人嫌いとなれば、興味を引いて当然だろう。放浪者ってのはあまりそう言う事には興味を示さないのかと思っていたが、やはり同じ人の子ってことなんだろう。
 しかし、よりによって緊縛趣味ねぇ……いや、ロウなら意外とアリかもしれない。
 無表情と不愛想がデフォなのに、夜になったらエロエロ大魔王で、女性を縛って言葉攻めしつつとか――やばい、似合う。
 そんなバカなことを考えいてたら、もっかい先程の質問が飛んできた。

「で、それを踏まえて、どうなの、レイちゃん?」
「少なくとも、私はやられたことはないですよ」
「あら、そう……じゃ、やっぱりただの無責任な噂ってことなのかしら?」
「そうも断言できないんじゃない? まだ遠慮してるだけ、ってことも考えられるわよ」

 遠慮、ねぇ……してるのかな? 今までのあれこれを考えると、してないような気もするんだけど、こればっかりはロウ本人じゃないと分からない事だ。
 そしてもし、ロウが本当にそう言う趣味の持ち主だった場合――あんまりマニアックなものじゃないなら、考慮しなくもない、かな。痛いのは論外だから、釣り下げられたりするのは嫌だ。亀さん縛りで放置とかもお断りしたいけど、軽く手を縛られるくらいなら……う、こういう事って、本物の十七才は考えないんだろうなぁ。ヨゴレちまったアラサーが中身ですみません。
 私の反応が面白くなかったのか――こういうことに面白さを求められても困るのだが――皆さんの話題は、既に他のものに移っていた。
 それを小耳にはさみつつ、一人うだうだと考えながら、勧められるままに飲んで食べていたら……いつの間にか、翌朝になってました(二回目)。




 お昼近くになって目が覚めて、二日連続の二日酔い――反省してます、もうしません――で、またもヒールのお世話になりました。

「頭が痛ぇ……」
「……俺もだ」

 私が寝かされていたのは、昨日と同じギルド内の部屋で、今朝はロウとガルドさんも一緒だった。どうも纏めてここに放り込まれたらしい。私はソファの上に寝かされていたけど、二人は床に直接寝かされていた様子だ。で、やはり二日酔いになってたのでヒールしてから、三人まとめてリフレッシュもかける。

「おお、楽になった! すげぇな、レイちゃん」
「レイならば当然だ」
「お前ぇはそう言うが、俺ぁ、まだレイちゃんの本領発揮のとこはみてねぇんだよ」

 そう言えばそうだった。私は『療術師』としてギルドに登録しているのだが、普段の放浪者活動で使うのは攻撃魔法が主で、それにサーチだの身体能力強化をかけるくらいだ。ガルドさんに言わせれば『それだけできりゃ、普通は魔術師として登録してる』らしいんだけど、あくまでも私は『療術師』なのである。たとえその本業の出番が、こういう事でしか回ってこなくても。

「レイの本気の療術はこんな程度ではないぞ」
「だから、それを目にする機会がねぇっていってんだよ」
「まぁまぁ、二人共――ヒールする機会がないって言うのは、誰も怪我とかしてないってことなんだから、いいことでしょうに」

 子供みたいに言い合いを始めた二人の間に割って入る。
 こっちの世界は大人として認められる年齢が早くて――十五歳から成人扱いとされるのだそうだ――その分、ロウもガルドさんも、元の世界の同年齢の人よりも随分と大人びていると感じることが多いのだけど、こういうところをそんな面ばかりじゃないんだな、なんて思ってしまう。

「もし、二人のどっちかが大怪我したら、それこそ、渾身の力を振り絞ってでも治してみせるよ。でも、出来ればそう言う事はないほうが良いでしょう?」
「まぁ、そりゃそうなんだけどよ」
「殺しても死にそうもないお前には、そう言う機会は回ってこないかもしれんがな」

 ロウ、一言多いです。
 ガルドさんにこんな風にポンポン言い返しているところを他の人が見たら、きっと驚くんだろうなぁ。そう言うところを積極的に見せていたら、あんな噂なんかも出回らなかっただろうに……でも、人見知り(笑)をするらしいロウの性格を考えるとそれも無理か、と思い直す。
 って、芋つる方式で昨日の話を思い出しちゃった。

「……なんだ? 俺の顔に何かついているか?」
「あ、いや、なんでもないです。それより、そろそろ宿に戻らないと」

 あの噂の事を考えながら、ロウの事を見ていたら、不審がられてしまう。慌てて誤魔化して、帰宅を促した。
 何しろこの二日というもの、宿に戻ってないのだ。宿泊料は前払いしてあるのだけど、それでも連続して戻ってこなければ、不審に思われてしまうかもしれない。

「それもそうか……では、いくぞ」
「うん」

 そう言って三人で連れだって、部屋を出る。
 途中、ギルドホールを通ったのだけど、お酒臭い空気が充満して、屍累々の様子でした。
 碌に片付けも出来ていないようで、隅っこの方にはお酒の樽が転がっている。カウンターにも人の気配がないし、こりゃ、少なくとも今日のギルドは機能停止だろう。
 うめき声をあげている人もいるが、見てみぬふりをして、そそくさとそこを後にした。

 街の様子は、ギルドの中とは違って、ほぼ元の様子を取り戻していた。昨日と一昨日はぎっしりと並んでいたお祭り用の露店や出店もすっかり姿を消して、あちこちにゴミの山が出来ているのを別にすれば、道行く人も平常運転だ。
 私達を見て『月姫だ』とか『月王もいるぞ!』みたいなことを囁き合っている人もいるにはいたが、別段、騒ぎが起こることもなく、『暁の女神亭』への道を歩いていく。

 けど――騒ぎは、その先で待っていた。

 最初に気が付いたのはガルドさんだった。進行方向がえらく騒がしい、というので不思議にそっちを見ると、なにやら黒山の人だかりができている。それがちょうど『暁の女神亭』の辺りで、一体何事かと目を見張る。
 用心しつつ近づいていくと、どうやら無理やり建物内へ入って行こうとする人もいるようで、宿の人が必死に阻止してる。
 えええ、これなに? どういう事、と驚いていると、困り顔の従業員さんが近づいて来た私たちを見つけて一言。

「すみません、お客さん! この人たち、帰らせてもらえませんか?」
「……はい?」

 何でも、夜が明けてからこっち、ずっとこの調子らしい。

「『月姫』に会いたい、会わせろと、ずっとこの調子なんですよ。今は不在だと言ってもきいてもらえなくて――このままでは他のお客さんにも迷惑がかかります」
「す、すみません! すぐにやります!」

 大慌てで前に飛び出すと、その途端に、私を見つけてものすごい歓声が上がった。
 「月姫だ!」「レイガちゃーん!」とか、おいおい、どこのスターの追っかけだよ、これ? ていうか、ちょっとはマナーを守ろうよ、ご近所迷惑も甚だしい。
 憤慨しつつも、ロウとガルドさんにがっちりガードしてもらいながら、その人たちの前に出る。

「すみません、皆さん。私に会いに来てくれたそうですけど、これってすごい宿に迷惑かけてます。どうか、解散してください」
「レイガちゃんだ!」
「月姫がしゃべったぞ!」
「おい、あの歌、歌えよ!」etc。

 ……こいつら、聞いちゃいねぇ。まぁ、こっちの人に日本人みたいな反応を求める方が間違ってる、ってのはわかってたことだけどね。超迷惑そうな顔をしてる私に気が付く様子もなく、好き勝手なことを叫んでる。大体、誰がこんなところで歌うか。騒ぎが余計に大きくなるだけでしょうが。

「帰って頂けないなら、実力行使します――とりあえず、宿泊客でもないのに宿の敷地に入ってる人! すぐに出ていかないと……」
「聞こえねぇのか? 歌えって言ってるだろうが」

 一番声が大きくて、且つ粗暴そうな男が、私の言葉をガン無視して怒鳴り声を上げる。うん、話し合いは無理ってことですね、分かりました。

「サンダー!」
「うがぁ!」

 スタンなんて誰が使ってやるもんか。そこでしばらく痺れてろ。こっちは二日酔い――は治ったけど、まだ寝不足で機嫌が悪いんだ。ほらほら、他の人も、さっさと出て行かないと――ロウがものすごい顔でにらんでるよ。殴られるのと、電撃食らうのとどっちがいい?

「もう一度言います。私に会いに来てくれたことは感謝しますが、これでは宿に迷惑がかかります。私も困ります。解散して、お家に帰ってください」
「『月姫』が言ったのが聞こえたろう? さっさと帰れや、じゃねぇと俺らも黙っちゃいねぇぞ?」

 ガルドさんも声を張り上げる。
「『月王』の片割れだ」「もう一人の『月王』も隣にいるぞ」なんて声が聞こえて、目に見えてひるむのが分かる。更に、威圧のムードを漂わせつつ、二人が一歩前に出るとざわって感じで、群衆が少しずつ減っていく。

「今回は見逃すが、またこんなことをすれば、次は俺達も容赦はしない。これに懲りたら、二度とこんな騒ぎを起こすな!」

 最後の仕上げとばかりにロウが大声で告げ、ガルドさんが私の電撃で倒れていた男を掴みあげると、まだ去ろうとしない人たちに向けてぶん投げた。

「うわぁぁ!」

 おお、蜘蛛の子を散らすように、ってのはこういう状況か。投げられた人も、ようやく体が動くようになったらしく、這う這うの体で逃げてった。まだ、ちょっと離れたところで未練がましくこっちを見てる人もいるけど、これだけ脅しておけばさっきみたいなことはしないだろう。

「――すみません、私達のせいでご迷惑をおかけしました」
「いえ、こちらこそ申し訳ない。今日は急なことでお手数をお掛けしましたが、次からはこちらで対応しますのでご安心ください」

 宿の人に改めて謝ったら、あっちもすまなそうにそう言ってくれたのでほっとした。ここ気に入ってるから、迷惑だから出て行け、とか言われたら困るところだ。
 念のために、迷惑料としてロウがいくらかを渡してたみたいだし、とりあえずその場は丸く収まった――やれやれだ。
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