夜会の顛末

豆狸

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第三話 夜会の顛末

 女侯爵ニナの婿である第二王子もこの夜会に来ている。
 夜会の彼はいつも女侯爵と一曲踊った後で人混みから離れ、ひとり酒杯を傾けていた。
 壁際にいた彼は、妻の言葉で注目を浴びて顔色を変えた。

「ねえジェローン様、お話の手紙を見せてくださらない? 夫の筆跡だったらわかると思いますの。リアだって、ハイス様の筆跡ではないと確認したいでしょう?」

 女侯爵の言葉に頷いて、ジェローンが手紙を彼女に渡す。
 それから彼は、ハイスとスコルテン子爵令息と第二王子を見比べた。

「全員金髪碧眼だな。本命そっくりな子どもが生まれても、大切な大切な本命様には辿り着かれないように選び抜かれた生け贄ふたりってわけか」

 ハイスの隣のアルメは真っ青になって俯いている。
 密会現場へジェローンが踏み込んで来て、ハイスとふたりで引きずられて来ても不敵な笑みを浮かべていたのに。
 ハイスにはもうアルメが姫には見えなかった。

 第二王子は学園でもひとりで過ごしていることが多かった。
 少なくともアルメとともにいたのを見たことはない。
 だけどアルメは、いつも側にいたハイスやスコルテン子爵令息よりも本命第二王子が大切なのだ。

 手紙を見つめていた女侯爵とリアが顔を上げる。

「やっぱり夫の筆跡だったわ。ジェローン様、この件預からせてもらえない? 殺人計画を立てられて不快なのはわかるけれど……ね?」
「ハイス様の筆跡ではありませんでした」
「そうですね。泣き寝入りする気はありませんが、王家と事を構えるのも……」
「うわあああああああっ!」

 衆人環視状態の密談途中で、いきなりスコルテン子爵令息が叫び出した。
 彼は叫びながら第二王子に殴りかかる。

「この前の密会でアルメがあの手紙を落として、僕以外にも男がいたとわかったんだ。てっきりハイスだと思った。ハイスが出席出来ない夜会のときにだけ、僕に会いたいと言って来るって気づいてたから。でも……本命はあんただったのか!」

 ハイスの隣でアルメも叫んだ。

「やめて! アタシの大切な人を傷つけないで!」

 夜会は貴族や裕福な商人達が人脈を作るための大切な場だ。
 ハイスは伯爵家の跡取りとして、ほかの用事でどうしても出席出来ないときがあるのだが、そのときは妻のリアがひとりで出席していた。
 アルメは夫のジェローンが仕事で船に乗っていることが多いので、ほとんどひとりで夜会に出席している。

 スコルテン子爵令息とはハイスが欠席している夜会で会っていたわけだ。
 子爵令息はまだ独身で跡取りとしての仕事が本格化していないので、本人の気分で夜会に出席している。
 密会して不貞していることまでは知られていなかったかもしれないけれど、アルメの取り巻きだということは以前から有名だったせいか、彼にはまだ婚約者もいない。

 先ほどの衆人環視の密談を聞いていたので、会場にいるものはみな女侯爵と海賊商人ジェローンがこの件を大ごとにしないつもりだと理解している。
 こうなっては王家も第二王子を庇いはしないだろう。
 なので、だれも第二王子を殴り続けるスコルテン子爵令息を止めなかった。アルメはハイスと一緒にジェローンに手首を握られているし、一時的に弱まっていた夫の力が戻ったので本命を助けに行けなかった。

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