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六月:暗く深い淵へ
初恋令嬢の献身【復讐】
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愛しいレナード様、私を探さないでください。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
侯爵家の家令に何度も起こされて、彼は重たい足取りで食堂へ向かいました。
昨夜も夜更かしなさったレナード様の眠りは底なし沼のように深いのです。
楽しむのではなく詰め込むようにして朝食を終え、家令に言います。
「インジュリーはどうしている? 少し顔を見に行こうと思うのだが」
おやめください、と家令は首を横に振りました。
そうですね、私もそのほうが良いと思います。
王都侯爵家の離れで療養中ということになっているインジュリー様は、義兄のレナード様の顔を見ると怯えて泣き叫びますもの。いいえ、もしかしたら見ているのはレナード様ではないかもしれませんわね。
家令の言葉を受け入れて、レナード様は執務室へ向かいました。
数年前にお父様の先代侯爵とレナード様のお母様の死後に娶られた後妻が亡くなって、レナード様は当主の座を受け継ぎました。彼を支える奥方はまだいません。
インジュリー様は後妻の連れ子です。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
執務を終えたレナード様が昼食の後で仮眠を取られていると、伯爵夫人がいらっしゃいました。
レナード様は彼女に縁談をお願いしていたのです。
伯爵夫人は彼が先日会った男爵令嬢の返事をお持ちになったのです。侯爵家当主の妻に男爵令嬢? と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、貴族令嬢がレナード様と会ってくださっただけ幸運だったのです。
「ご縁がなかったということで」
「……理由をお聞きしてもよろしいですか?」
「レナード卿と一緒にいるとなぜか肌寒くて、だれかに見つめられているような気持ちになって落ち着かないから、だそうですわ」
「そうですか……」
伯爵夫人は出されていたお茶を飲み干して、立ち上がりました。
「これまで十回の縁談をご紹介してきましたけれど、もう終わりです。いくらアイリーンの頼みだったからといって、これ以上貴方と関わっていたら我が伯爵家も没落してしまいますもの」
「……っ」
「ねえレナード卿、アイリーンはどこにいるのでしょうね。妹が産んだ私の可愛い姪は。病弱だった妹の死後、すぐさま後妻を娶った父親の子爵に冷遇されて、それでも真面目に生きていた私の姪は。幼いころからの婚約者だった貴方を慕い、自分になにかあったら助けてあげて欲しいと私に頼んでいたあの娘が、本当に男と駆け落ちしたとお思いなのかしら?」
「……私と義妹のインジュリーが、最後の日に男といるアイリーン嬢の姿を見ました」
「貴方ととても仲の良かった義妹のインジュリー嬢が、ですの?」
伯爵夫人は手にした扇で表情を隠し、別れの挨拶をして去っていきました。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「旦那様、今宵は早くお休みくださいませ。このままではお体を壊してしまわれますよ。人間には眠りが必要なのです」
家令に言われたレナード様は、生返事をしてご自分の寝室へ入りました。
夕食はもう済ませています。
寝台に入って、幾度となく寝返りを打っても眠れなくて、レナード様は結局いつものように王都侯爵邸の裏庭に出ました。そこは木々が生い茂る林──小さな森のような場所です。幼いころのレナード様は、婚約者の子爵令嬢とこの場所で走り回っていらっしゃいました。
レナード様は並ぶ木々を見比べた後、一本の前で止まりました。
手にしたスコップで根元を掘り始めます。
彼は私を探しているのです。
私を……彼の婚約者だった子爵令嬢アイリーンを。
だけど、そこに私はいませんでした。
レナード様は地面に膝をつき、両手で顔を覆って嗚咽し始めました。
彼は繊細で優しい方なのです。
私は、子爵令嬢アイリーンの屍はそこにはありません。
レナード様が何度掘っても、自分の記憶違いかと思って同じ品種のべつの木の根元を掘っても、私が見つかることはありません。
息子の様子に状況を察した先代侯爵が、まだ掘り返された土の色も戻らぬうちに私を見つけて神殿の身寄りのない人間のための墓へ葬ったのです。私には大きな外傷はありませんでしたから、田舎から出てきた身寄りのない女中が転んで、頭を打って死んだと言えば誤魔化せたのです。先代侯爵は神殿への寄進も弾みましたしね。
あのときのことを思い出すと、もう無い心臓が締め付けられるような気がします。
幼いころに私と遊んだこの裏庭で、レナード様は生さぬ仲のインジュリー様と抱き合って口付けを交わしていらっしゃったのです。
ええ、おふたりがそのような関係だということは存じていました。だからこそ、あの日の私はレナード様に婚約解消を告げに行ったのです。
母の実家の伯爵家は裕福でした。今は伯父が継いでいます。
今日の昼間に侯爵邸を訪れた母の姉である伯母様が嫁いだ同格の伯爵家も裕福です。
だから私の父である子爵は愛人の存在を隠して病弱な母を誑かし、先代侯爵は身分に差のある婚約を受け入れていたのです。
レナード様はインジュリー様を愛していました。
でもそれは私と婚約していることで得られる援助があってのことだったのです。
そうでなくても侯爵家の身代は傾き始めていました。レナード様のお母様を喪った悲しみに溺れていた先代侯爵につけ込んだ後妻、インジュリー様の母親は享楽的な浪費家だったのです。
レナード様は言うだけ言って立ち去ろうとした私を引き留めようとしました。
私は彼の手を振りほどきました。
それだけのことです。でもここは小さな森の中で、木々の根が入り乱れた地面の上で暴れていては体勢を崩すのは当たり前のことでした。私は倒れて木の根元で頭を打ち、死にました。
だれも私が侯爵邸から出て行く姿を見ていませんし、逆にだれもがレナード様が庭師の小屋からスコップを持ち出す姿を見ていました。
私が男と駆け落ちしたなんて言葉で隠し通せるはずがないのです。
その夜、先代侯爵と家令が私を掘り出して神殿へ運びました。泥だらけだった私を拭いて女中の服を着せたのは女中頭です。
実家の子爵家は、私が嫁ぐよりも行方不明になったほうが都合が良かったのでしょう。
父は、母が私に遺してくれていた財産を後見人として管理する振りをして、横領していましたからね。
私はずっとレナード様の側にいたので、先代侯爵と子爵の間でどんな密約が結ばれたのかは知りません。自分の屍のことだけは、なぜか不思議とわかったのですけれどね。先代侯爵はお亡くなりになる前に、何度か私の墓へ来てくださいましたわ。
私はレナード様を愛しています。
婚約解消を言い出したのだって彼に本当に愛する人と結ばれて欲しかったからです。
伯母様に解消の手続きについて相談しながらも、私がいなくなった後の彼を助けてほしいとお願いしてしまうくらい好きだったのです。
大好きです、愛しています、初恋だったのです。
だから側にいても良いですよね。今の私には、もうほかに行けるところなどないのですもの。
それに私はレナード様のお役に立っています。
この国では義理の兄妹の結婚は難色を示されますけれど、インジュリー様が私を見ておかしくなったから、嫁がせることが出来なくて療養させている、という建前で同居を続けていけるのです。後妻も私を見て怯えて階段から落ちてしまったから、あれ以上侯爵家の財産を食い潰されなくて済んだのです。後妻を助けようとした先代侯爵まで亡くなってしまったのは残念でしたが。
私がいなくなったほうが都合が良かったといっても、自分達の金が無くなればタカリに来そうだった子爵一家も、もういません。
心を病んで暴れていた子爵家の後妻を当主が殺して、その当主を息子が殺して首を吊ったからです。
もっともその件については私は無関係ですわ。レナード様から離れてまで、嫌な記憶しかない実家へ行く必要などないでしょう? もしかしたら、あの人達にも罪悪感のようなものがあったのかもしれませんね。
私の最後の願いを叶えてくださった伯母様には申し訳ないものの、縁談だってまとまらないほうが良いでしょう?
レナード様はインジュリー様以外の女性は愛せないのですもの。
婚約者だった私でさえも愛さなかったのですもの。
「すまない、アイリーン、すまない……」
泣きじゃくるレナード様を抱き締めることが出来なくても、私はここにいます。
だから愛しいレナード様、私を探さないでください。
早くお眠りにならないと今夜も寝不足になってしまいますわ。もっとも事故だったとはいえ自分の所業を秘密にして、私が駆け落ちしたなどという噂をばら撒いた貴方がすべて悪いのですけれどね。
愛しい貴方は繊細で、流されやすくて優しくて、自分を騙すのが上手い人。
だからずっと私が側にいてあげます。
もう幼いころのように泣いている貴方を抱き締めることは出来ないけれど、これからもずっと側にいます。……私のこの献身を、人はきっと復讐と呼ぶのでしょうね。
<終>
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
侯爵家の家令に何度も起こされて、彼は重たい足取りで食堂へ向かいました。
昨夜も夜更かしなさったレナード様の眠りは底なし沼のように深いのです。
楽しむのではなく詰め込むようにして朝食を終え、家令に言います。
「インジュリーはどうしている? 少し顔を見に行こうと思うのだが」
おやめください、と家令は首を横に振りました。
そうですね、私もそのほうが良いと思います。
王都侯爵家の離れで療養中ということになっているインジュリー様は、義兄のレナード様の顔を見ると怯えて泣き叫びますもの。いいえ、もしかしたら見ているのはレナード様ではないかもしれませんわね。
家令の言葉を受け入れて、レナード様は執務室へ向かいました。
数年前にお父様の先代侯爵とレナード様のお母様の死後に娶られた後妻が亡くなって、レナード様は当主の座を受け継ぎました。彼を支える奥方はまだいません。
インジュリー様は後妻の連れ子です。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
執務を終えたレナード様が昼食の後で仮眠を取られていると、伯爵夫人がいらっしゃいました。
レナード様は彼女に縁談をお願いしていたのです。
伯爵夫人は彼が先日会った男爵令嬢の返事をお持ちになったのです。侯爵家当主の妻に男爵令嬢? と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、貴族令嬢がレナード様と会ってくださっただけ幸運だったのです。
「ご縁がなかったということで」
「……理由をお聞きしてもよろしいですか?」
「レナード卿と一緒にいるとなぜか肌寒くて、だれかに見つめられているような気持ちになって落ち着かないから、だそうですわ」
「そうですか……」
伯爵夫人は出されていたお茶を飲み干して、立ち上がりました。
「これまで十回の縁談をご紹介してきましたけれど、もう終わりです。いくらアイリーンの頼みだったからといって、これ以上貴方と関わっていたら我が伯爵家も没落してしまいますもの」
「……っ」
「ねえレナード卿、アイリーンはどこにいるのでしょうね。妹が産んだ私の可愛い姪は。病弱だった妹の死後、すぐさま後妻を娶った父親の子爵に冷遇されて、それでも真面目に生きていた私の姪は。幼いころからの婚約者だった貴方を慕い、自分になにかあったら助けてあげて欲しいと私に頼んでいたあの娘が、本当に男と駆け落ちしたとお思いなのかしら?」
「……私と義妹のインジュリーが、最後の日に男といるアイリーン嬢の姿を見ました」
「貴方ととても仲の良かった義妹のインジュリー嬢が、ですの?」
伯爵夫人は手にした扇で表情を隠し、別れの挨拶をして去っていきました。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「旦那様、今宵は早くお休みくださいませ。このままではお体を壊してしまわれますよ。人間には眠りが必要なのです」
家令に言われたレナード様は、生返事をしてご自分の寝室へ入りました。
夕食はもう済ませています。
寝台に入って、幾度となく寝返りを打っても眠れなくて、レナード様は結局いつものように王都侯爵邸の裏庭に出ました。そこは木々が生い茂る林──小さな森のような場所です。幼いころのレナード様は、婚約者の子爵令嬢とこの場所で走り回っていらっしゃいました。
レナード様は並ぶ木々を見比べた後、一本の前で止まりました。
手にしたスコップで根元を掘り始めます。
彼は私を探しているのです。
私を……彼の婚約者だった子爵令嬢アイリーンを。
だけど、そこに私はいませんでした。
レナード様は地面に膝をつき、両手で顔を覆って嗚咽し始めました。
彼は繊細で優しい方なのです。
私は、子爵令嬢アイリーンの屍はそこにはありません。
レナード様が何度掘っても、自分の記憶違いかと思って同じ品種のべつの木の根元を掘っても、私が見つかることはありません。
息子の様子に状況を察した先代侯爵が、まだ掘り返された土の色も戻らぬうちに私を見つけて神殿の身寄りのない人間のための墓へ葬ったのです。私には大きな外傷はありませんでしたから、田舎から出てきた身寄りのない女中が転んで、頭を打って死んだと言えば誤魔化せたのです。先代侯爵は神殿への寄進も弾みましたしね。
あのときのことを思い出すと、もう無い心臓が締め付けられるような気がします。
幼いころに私と遊んだこの裏庭で、レナード様は生さぬ仲のインジュリー様と抱き合って口付けを交わしていらっしゃったのです。
ええ、おふたりがそのような関係だということは存じていました。だからこそ、あの日の私はレナード様に婚約解消を告げに行ったのです。
母の実家の伯爵家は裕福でした。今は伯父が継いでいます。
今日の昼間に侯爵邸を訪れた母の姉である伯母様が嫁いだ同格の伯爵家も裕福です。
だから私の父である子爵は愛人の存在を隠して病弱な母を誑かし、先代侯爵は身分に差のある婚約を受け入れていたのです。
レナード様はインジュリー様を愛していました。
でもそれは私と婚約していることで得られる援助があってのことだったのです。
そうでなくても侯爵家の身代は傾き始めていました。レナード様のお母様を喪った悲しみに溺れていた先代侯爵につけ込んだ後妻、インジュリー様の母親は享楽的な浪費家だったのです。
レナード様は言うだけ言って立ち去ろうとした私を引き留めようとしました。
私は彼の手を振りほどきました。
それだけのことです。でもここは小さな森の中で、木々の根が入り乱れた地面の上で暴れていては体勢を崩すのは当たり前のことでした。私は倒れて木の根元で頭を打ち、死にました。
だれも私が侯爵邸から出て行く姿を見ていませんし、逆にだれもがレナード様が庭師の小屋からスコップを持ち出す姿を見ていました。
私が男と駆け落ちしたなんて言葉で隠し通せるはずがないのです。
その夜、先代侯爵と家令が私を掘り出して神殿へ運びました。泥だらけだった私を拭いて女中の服を着せたのは女中頭です。
実家の子爵家は、私が嫁ぐよりも行方不明になったほうが都合が良かったのでしょう。
父は、母が私に遺してくれていた財産を後見人として管理する振りをして、横領していましたからね。
私はずっとレナード様の側にいたので、先代侯爵と子爵の間でどんな密約が結ばれたのかは知りません。自分の屍のことだけは、なぜか不思議とわかったのですけれどね。先代侯爵はお亡くなりになる前に、何度か私の墓へ来てくださいましたわ。
私はレナード様を愛しています。
婚約解消を言い出したのだって彼に本当に愛する人と結ばれて欲しかったからです。
伯母様に解消の手続きについて相談しながらも、私がいなくなった後の彼を助けてほしいとお願いしてしまうくらい好きだったのです。
大好きです、愛しています、初恋だったのです。
だから側にいても良いですよね。今の私には、もうほかに行けるところなどないのですもの。
それに私はレナード様のお役に立っています。
この国では義理の兄妹の結婚は難色を示されますけれど、インジュリー様が私を見ておかしくなったから、嫁がせることが出来なくて療養させている、という建前で同居を続けていけるのです。後妻も私を見て怯えて階段から落ちてしまったから、あれ以上侯爵家の財産を食い潰されなくて済んだのです。後妻を助けようとした先代侯爵まで亡くなってしまったのは残念でしたが。
私がいなくなったほうが都合が良かったといっても、自分達の金が無くなればタカリに来そうだった子爵一家も、もういません。
心を病んで暴れていた子爵家の後妻を当主が殺して、その当主を息子が殺して首を吊ったからです。
もっともその件については私は無関係ですわ。レナード様から離れてまで、嫌な記憶しかない実家へ行く必要などないでしょう? もしかしたら、あの人達にも罪悪感のようなものがあったのかもしれませんね。
私の最後の願いを叶えてくださった伯母様には申し訳ないものの、縁談だってまとまらないほうが良いでしょう?
レナード様はインジュリー様以外の女性は愛せないのですもの。
婚約者だった私でさえも愛さなかったのですもの。
「すまない、アイリーン、すまない……」
泣きじゃくるレナード様を抱き締めることが出来なくても、私はここにいます。
だから愛しいレナード様、私を探さないでください。
早くお眠りにならないと今夜も寝不足になってしまいますわ。もっとも事故だったとはいえ自分の所業を秘密にして、私が駆け落ちしたなどという噂をばら撒いた貴方がすべて悪いのですけれどね。
愛しい貴方は繊細で、流されやすくて優しくて、自分を騙すのが上手い人。
だからずっと私が側にいてあげます。
もう幼いころのように泣いている貴方を抱き締めることは出来ないけれど、これからもずっと側にいます。……私のこの献身を、人はきっと復讐と呼ぶのでしょうね。
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