転生魔王NOT悪役令嬢

豆狸

文字の大きさ
36 / 39

36・転生魔王VS聖女

しおりを挟む
 こんにちは、魔王です。
 今日はジュルネ王国王都の冒険者ギルドへ来ています。
 なんと! ギルマス、シャルジュさんの執務室へお呼ばれです。冒険者ギルドへ来たのはお茶の木の苗の入手方法を聞きたかったからなのに、なぜか問答無用で執務室へ連行されました。

 ……私、なんかやっちゃったのかなあ……

 ちな、目の前には聖女がいます。
 先日の交流会という名の儀式ライブで目撃したピンク髪の聖女だよお。
 私が魔王ソワレだということは、シャルジュさんには最初からお見通しだったみたい。

 聖女は可愛い。美少女。
 ゲームのイラストがそのまま立体化して、さらに魅力が増してる感じ。
 いや、聖女に媚を売ってるわけではないのよ。というか、考えてること読まれてたら超怖いでござる!

 シャルジュさんはギルマスの執務机に肘を預けて、前世のイケメンイラストでよくあった体全体は斜めになっていて、長い足を軽く組んだカッコイイポーズで私達を見つめている。
 手には湯気の上がっている茶碗。
 湯気の上がっている茶碗は、私の前にも聖女の前にもある。

 茶碗の中身はコーヒーで、良い香り。
 ヴィペールは紅茶派みたいだけど、コーヒーはどうなんだろう。
 と、ついつい現実逃避してしまうほど緊張しているので茶碗に手が伸びない魔王であった。

 茶碗を載せたギルマス執務室の小さな応接机を挟んで睨み合う、向かい合わせのソファに座った聖女と魔王。
 嘘です、ごめんなさい。
 私は嫌な汗をかきながら俯いています。真っ直ぐに見つめてくる聖女の紅玉ルビー色の瞳が怖いです。応接机、もうちょっと幅広くて向かい合うふたりの距離を隔ててくれても良いのよ?

 いやだって、ジュルネ王国に侵攻する気がなくたって、我、魔王ぞ?
 そんでもって不法侵入の密入国者です~。
 初めて来たとき魔王であることは罪じゃないとか思ってたけど、不法侵入罪がありましたっ!

 駄目だ、一国の王として公表されたくなさ過ぎる前科だ。
 しかも動機がスイーツを食べたかったから、だ。
 いくら両国が国交樹立してないっていっても恥ずかし過ぎる!

「……ソワレさん。いえ、魔王様とお呼びしたほうがよろしいですか?」

 聖女がさくらんぼのような唇を開く。
 HEYHEYHEY! 魔王ビビッて返答できねーぜ!
 情けなし、我!

 我、魔王ぞ?
 お母様が人間だったとはいえ、お父様譲りの強い魔力を持ち、竜に変化できる魔王ぞ?
 だけど魔人だからレベル上げられないんだよねー。

 目の前の聖女は、おそらくレベルMAXです。
 お父様から魔眼は受け継がなかった私とはいえ、他者の魔力圧くらいは感知できる。勝てない戦いをするのはクレバーじゃないからね。
 シャルジュさんも魔力圧で、私が魔王かもって気づいたのかな。

 てか、なんでえぇぇっ?
 私が先日魔王就任したばかりなように、聖女様もまだまだ見習い試用期間中だよねえ!
 なんで、もうすでにレベルMAXなの? その魔力はなんなの? 初級の水属性魔法ぶつけられても大ダメージの予感なんですが!

 もしかしてアレ? アレなんですかあぁぁっ? ただでさえ全属性の魔法が使えてチートな上に、なんですかあぁぁっ!

 一切返事をしないのもどうかと思い、私はとりあえず頷いた。
 というか、小刻みに頭蓋を揺らした。
 ソワレでも魔王でも呼び名はどっちでも良いです、という気持ちは届いているだろうか。などと思っていたら、私を見つめていた聖女様が、再び口を開いた。

「ごめんなさい。質問する前に、こちらから自己紹介しなくてはなりませんでしたね。私はジュルネ王国の当代の聖女エクラ。まだふたつ名はいただいていません。そして……私は転生者です。魔王様、あなたもそうなのではありませんか?」

 あー! やっぱりアレ転生者ですかあっ! 名前は今世のご両親がつけたから、ゲームのデフォルトネームエクラ なんですね!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

〈完結〉八年間、音沙汰のなかった貴方はどちら様ですか?

詩海猫(8/29書籍発売)
恋愛
私の家は子爵家だった。 高位貴族ではなかったけれど、ちゃんと裕福な貴族としての暮らしは約束されていた。 泣き虫だった私に「リーアを守りたいんだ」と婚約してくれた侯爵家の彼は、私に黙って戦争に言ってしまい、いなくなった。 私も泣き虫の子爵令嬢をやめた。 八年後帰国した彼は、もういない私を探してるらしい。 *文字数的に「短編か?」という量になりましたが10万文字以下なので短編です。この後各自のアフターストーリーとか書けたら書きます。そしたら10万文字超えちゃうかもしれないけど短編です。こんなにかかると思わず、「転生王子〜」が大幅に滞ってしまいましたが、次はあちらに集中予定(あくまで予定)です、あちらもよろしくお願いします*

【完結】高嶺の花がいなくなった日。

恋愛
侯爵令嬢ルノア=ダリッジは誰もが認める高嶺の花。 清く、正しく、美しくーーそんな彼女がある日忽然と姿を消した。 婚約者である王太子、友人の子爵令嬢、教師や使用人たちは彼女の失踪を機に大きく人生が変わることとなった。 ※ざまぁ展開多め、後半に恋愛要素あり。

分厚いメガネを外した令嬢は美人?

しゃーりん
恋愛
極度の近視で分厚いメガネをかけている子爵令嬢のミーシャは家族から嫌われている。 学園にも行かせてもらえず、居場所がないミーシャは教会と孤児院に通うようになる。 そこで知り合ったおじいさんと仲良くなって、話をするのが楽しみになっていた。 しかし、おじいさんが急に来なくなって心配していたところにミーシャの縁談話がきた。 会えないまま嫁いだ先にいたのは病に倒れたおじいさんで…介護要員としての縁談だった? この結婚をきっかけに、将来やりたいことを考え始める。 一人で寂しかったミーシャに、いつの間にか大切な人ができていくお話です。

[完結]気付いたらザマァしてました(お姉ちゃんと遊んでた日常報告してただけなのに)

みちこ
恋愛
お姉ちゃんの婚約者と知らないお姉さんに、大好きなお姉ちゃんとの日常を報告してただけなのにザマァしてたらしいです 顔文字があるけどウザかったらすみません

残念ながら、定員オーバーです!お望みなら、次期王妃の座を明け渡しますので、お好きにしてください

mios
恋愛
ここのところ、婚約者の第一王子に付き纏われている。 「ベアトリス、頼む!このとーりだ!」 大袈裟に頭を下げて、どうにか我儘を通そうとなさいますが、何度も言いますが、無理です! 男爵令嬢を側妃にすることはできません。愛妾もすでに埋まってますのよ。 どこに、捻じ込めると言うのですか! ※番外編少し長くなりそうなので、また別作品としてあげることにしました。読んでいただきありがとうございました。

大好きなあなたを忘れる方法

山田ランチ
恋愛
あらすじ  王子と婚約関係にある侯爵令嬢のメリベルは、訳あってずっと秘密の婚約者のままにされていた。学園へ入学してすぐ、メリベルの魔廻が(魔術を使う為の魔素を貯めておく器官)が限界を向かえようとしている事に気が付いた大魔術師は、魔廻を小さくする事を提案する。その方法は、魔素が好むという悲しい記憶を失くしていくものだった。悲しい記憶を引っ張り出しては消していくという日々を過ごすうち、徐々に王子との記憶を失くしていくメリベル。そんな中、魔廻を奪う謎の者達に大魔術師とメリベルが襲われてしまう。  魔廻を奪おうとする者達は何者なのか。王子との婚約が隠されている訳と、重大な秘密を抱える大魔術師の正体が、メリベルの記憶に導かれ、やがて世界の始まりへと繋がっていく。 登場人物 ・メリベル・アークトュラス 17歳、アークトゥラス侯爵の一人娘。ジャスパーの婚約者。 ・ジャスパー・オリオン 17歳、第一王子。メリベルの婚約者。 ・イーライ 学園の園芸員。 クレイシー・クレリック 17歳、クレリック侯爵の一人娘。 ・リーヴァイ・ブルーマー 18歳、ブルーマー子爵家の嫡男でジャスパーの側近。 ・アイザック・スチュアート 17歳、スチュアート侯爵の嫡男でジャスパーの側近。 ・ノア・ワード 18歳、ワード騎士団長の息子でジャスパーの従騎士。 ・シア・ガイザー 17歳、ガイザー男爵の娘でメリベルの友人。 ・マイロ 17歳、メリベルの友人。 魔素→世界に漂っている物質。触れれば精神を侵され、生き物は主に凶暴化し魔獣となる。 魔廻→体内にある魔廻(まかい)と呼ばれる器官、魔素を取り込み貯める事が出来る。魔術師はこの器官がある事が必須。 ソル神とルナ神→太陽と月の男女神が魔素で満ちた混沌の大地に現れ、世界を二つに分けて浄化した。ソル神は昼間を、ルナ神は夜を受け持った。

冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない

くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、 軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。 言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。 ――そして初めて、夫は気づく。 自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。 一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、 「必要とされる存在」として歩き始めていた。 去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。 これは、失ってから愛に気づいた男と、 二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。 ――今さら、遅いのです。

初めまして婚約者様

まる
恋愛
「まあ!貴方が私の婚約者でしたのね!」 緊迫する場での明るいのんびりとした声。 その言葉を聞いてある一点に非難の視線が集中する。 ○○○○○○○○○○ ※物語の背景はふんわりしています。スルッと読んでいただければ幸いです。 目を止めて読んで下さった方、お気に入り、しおりの登録ありがとう御座いました!少しでも楽しんで読んでいただけたなら幸いです(^人^)

処理中です...