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7・アッシュさんの武器屋
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魔鍛冶とは。
耐久性に劣るモンスター素材製の装備アイテムが持つ有用な特性を耐久性に優れた金属製の装備アイテムに移行する技術である。もちろんそれ以前のモンスター素材製の装備アイテムを作成する技術も内包している。
本来はドワーフにのみ伝わる秘術なのだが──
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「こんにちは、アッシュさん」
「……フラムのチビか。面倒くせぇな。自分の武器くらい自分で研げよ」
武器屋の『攻略できないバグオジ』アッシュさんは掠れた声のものぐさ系キャラだ。
前世の大御所声優さんが声を当ててた。
『攻略できないバグオジ』はみんなそうで、だから予算が足りなくてエンディングまで作られてないんじゃないかとも言われてたっけ。
さっき会ったシャルジュさんも良い声だった。
男性にしては高い声なんだけど、演技力の高さもあって淡々と話すのを聞いていると心が癒されていくと評判だった。ただ裏切り者を演じることの多い声優さんだったので、裏切るから攻略できないんじゃないか? いやギルマスだから大丈夫、神官じゃないから裏切らないよ、的な会話がよくネット上で繰り広げられていた。
なんてゲーム関係のことは思い出すんだよね、私。
後、フラムはべつにチビじゃない。
私より頭ひとつ分は大きい。
アッシュさんの息子のテールが大きいだけだ。テールは頭のてっぺんがゲーム画面からはみ出していた。背が低い小柄なキャラはべつにいて──
「いえ、自分で研いだんです。教えてもらった通りに研いだつもりなんですけど……」
「なんだと? もしかしててめぇ、ミスリルの大剣を欠けさせやがったのか?」
「なんか無意識に魔法を発動してたみたいで」
「このアホウ! とっとと大剣を鞘から出しやがれ!」
「すみません。粗末にするつもりはないんですが」
「てめぇに悪気がないこたぁわかってるよ」
お人好しの好青年フラムはドジっ子キャラでもある。
好感度自体は上げやすいんだけど、恋心を自覚するのに時間がかかる。
自覚したら自覚したで、いわゆる好き避け(好き過ぎて近寄れなくて距離を取る行為)を始める面倒くさい男でもあった。
せめて剣術スキルと大魔法を教えてから消えてくれと何度思ったことか。
炎属性の大魔法は全体攻撃が可能だからモンスター素材集めに便利だったのだ。
フラムの大剣を受け取ったアッシュさんがカウンターから作業場へ入っていくのを眺めて、私は商品棚に目を向けた。
アッシュさんは魔鍛冶を使えないけど、魔法金属製の装備アイテムはたまに販売していた。
ドワーフから仕入れてたのかな? なにかで手に入れた冒険者が金策で売っていたのかもしれない。
武器、武器か……。
作るのは好きなんだけど、使うほうはなあ。
竜に変化して殴れば大体片がつくし。まあ狭い場所だと竜に変化できないけど、竜に変化しなくても殴れば大体片がつくし。
あ、そういえば今世でも魔鍛冶使えるのかな?
乙女ゲーム『綺羅星のエクラ』では冒険者活動をしていた聖女が大魔林で見つけたドワーフの死体を弔うことでドワーフの霊に魔鍛冶の技術を教えてもらうんだ。
あれ、どこだったっけ。プレイごとに発見場所が変わるんだよね。その前に適当なモンスターを狩って魔鍛冶が使えるか確認してみよう。
「なにかいいのあった?」
「ぴゃ」
「驚かせちゃった? 急に話しかけてゴメン。カウンターの前で待ってても仕方ないから、俺も君の武器選び手伝おうかと思ったんだけど」
「ありがとうございます」
とはいうものの武器かー。
魔人は基本拳と魔法が攻撃手段なんだけど、魔鍛冶で作られた武器だと魔人の魔力を増幅してくれるんだよね。
うちの四天王も武器──ひとりは防具を使って戦っている。
魔王と四天王が戦うのはニュイ魔王国の脳筋魔人の民を護るためだ。
脳筋魔人といっても無敵ではないし老人や子どももいる。
彼らが敵わないモンスター、地形を変えるほど強い力を持つモンスターを代わりに倒すのが魔王と四天王の務めだ。本来は他国に侵攻するような存在ではない。
人間のお母様のために魔王城を作るなんていう脳筋魔人らしくない頑張りを見せていたお父様は、武器を使っていなかった。
私と同じく竜に変化して殴っていたのだ。変化しなくてもその辺のモンスターよりは強いし。
そうだ。もしこのままでは魔鍛冶が使えなかったら、魔王城建設に携わってくれたドワーフに教えてもらったらいいんじゃない? 秘術といっても酒精の強いお酒を持っていったら教えてくれるに違いない。くふふ。
あ、でも酒精の強いお酒ってどこで手に入れよう。
お酒の好きな魔人もいるけど、ニュイ魔王国じゃ作ってないんだよねー。
まあお酒どころか農作物も栽培してない肉食ONLY国家なんだけどさ。
耐久性に劣るモンスター素材製の装備アイテムが持つ有用な特性を耐久性に優れた金属製の装備アイテムに移行する技術である。もちろんそれ以前のモンスター素材製の装備アイテムを作成する技術も内包している。
本来はドワーフにのみ伝わる秘術なのだが──
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「こんにちは、アッシュさん」
「……フラムのチビか。面倒くせぇな。自分の武器くらい自分で研げよ」
武器屋の『攻略できないバグオジ』アッシュさんは掠れた声のものぐさ系キャラだ。
前世の大御所声優さんが声を当ててた。
『攻略できないバグオジ』はみんなそうで、だから予算が足りなくてエンディングまで作られてないんじゃないかとも言われてたっけ。
さっき会ったシャルジュさんも良い声だった。
男性にしては高い声なんだけど、演技力の高さもあって淡々と話すのを聞いていると心が癒されていくと評判だった。ただ裏切り者を演じることの多い声優さんだったので、裏切るから攻略できないんじゃないか? いやギルマスだから大丈夫、神官じゃないから裏切らないよ、的な会話がよくネット上で繰り広げられていた。
なんてゲーム関係のことは思い出すんだよね、私。
後、フラムはべつにチビじゃない。
私より頭ひとつ分は大きい。
アッシュさんの息子のテールが大きいだけだ。テールは頭のてっぺんがゲーム画面からはみ出していた。背が低い小柄なキャラはべつにいて──
「いえ、自分で研いだんです。教えてもらった通りに研いだつもりなんですけど……」
「なんだと? もしかしててめぇ、ミスリルの大剣を欠けさせやがったのか?」
「なんか無意識に魔法を発動してたみたいで」
「このアホウ! とっとと大剣を鞘から出しやがれ!」
「すみません。粗末にするつもりはないんですが」
「てめぇに悪気がないこたぁわかってるよ」
お人好しの好青年フラムはドジっ子キャラでもある。
好感度自体は上げやすいんだけど、恋心を自覚するのに時間がかかる。
自覚したら自覚したで、いわゆる好き避け(好き過ぎて近寄れなくて距離を取る行為)を始める面倒くさい男でもあった。
せめて剣術スキルと大魔法を教えてから消えてくれと何度思ったことか。
炎属性の大魔法は全体攻撃が可能だからモンスター素材集めに便利だったのだ。
フラムの大剣を受け取ったアッシュさんがカウンターから作業場へ入っていくのを眺めて、私は商品棚に目を向けた。
アッシュさんは魔鍛冶を使えないけど、魔法金属製の装備アイテムはたまに販売していた。
ドワーフから仕入れてたのかな? なにかで手に入れた冒険者が金策で売っていたのかもしれない。
武器、武器か……。
作るのは好きなんだけど、使うほうはなあ。
竜に変化して殴れば大体片がつくし。まあ狭い場所だと竜に変化できないけど、竜に変化しなくても殴れば大体片がつくし。
あ、そういえば今世でも魔鍛冶使えるのかな?
乙女ゲーム『綺羅星のエクラ』では冒険者活動をしていた聖女が大魔林で見つけたドワーフの死体を弔うことでドワーフの霊に魔鍛冶の技術を教えてもらうんだ。
あれ、どこだったっけ。プレイごとに発見場所が変わるんだよね。その前に適当なモンスターを狩って魔鍛冶が使えるか確認してみよう。
「なにかいいのあった?」
「ぴゃ」
「驚かせちゃった? 急に話しかけてゴメン。カウンターの前で待ってても仕方ないから、俺も君の武器選び手伝おうかと思ったんだけど」
「ありがとうございます」
とはいうものの武器かー。
魔人は基本拳と魔法が攻撃手段なんだけど、魔鍛冶で作られた武器だと魔人の魔力を増幅してくれるんだよね。
うちの四天王も武器──ひとりは防具を使って戦っている。
魔王と四天王が戦うのはニュイ魔王国の脳筋魔人の民を護るためだ。
脳筋魔人といっても無敵ではないし老人や子どももいる。
彼らが敵わないモンスター、地形を変えるほど強い力を持つモンスターを代わりに倒すのが魔王と四天王の務めだ。本来は他国に侵攻するような存在ではない。
人間のお母様のために魔王城を作るなんていう脳筋魔人らしくない頑張りを見せていたお父様は、武器を使っていなかった。
私と同じく竜に変化して殴っていたのだ。変化しなくてもその辺のモンスターよりは強いし。
そうだ。もしこのままでは魔鍛冶が使えなかったら、魔王城建設に携わってくれたドワーフに教えてもらったらいいんじゃない? 秘術といっても酒精の強いお酒を持っていったら教えてくれるに違いない。くふふ。
あ、でも酒精の強いお酒ってどこで手に入れよう。
お酒の好きな魔人もいるけど、ニュイ魔王国じゃ作ってないんだよねー。
まあお酒どころか農作物も栽培してない肉食ONLY国家なんだけどさ。
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