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14・力の応用
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「どうぞー」
「お邪魔するにゃ」
「お邪魔しまーす」
入ってきたのはパイチェ君とベティーナちゃんだった。
ベティーナちゃんは十二歳だそうです。
中学生くらいだと思ってたから、大体当たり。元の世界ではひとりっ子だったので、なんとなく妹ができたみたいで可愛い。
「まれ人様、昨日はありがとうございました」
「助かったのにゃ」
「お役に立てたなら良かったよ。ベティーナちゃん達こそ、魔獣の死骸を食べられるキノコにしてくれたんだよね。朝、スープに入ってたのがそうなのかな?」
「そうなんだにゃ」
「すごく美味しかったよ、ごちそう様」
「えへへ。あ、そうだ。これ、パイチェを助けてくれたお礼です」
そう言って、ベティーナちゃんが一輪の花を差し出してくれた。
「本当はもっといっぱいあったら良かったんだけど、大暴走のせいで森の花畑が滅茶苦茶になってて……この花、蜜がすごく出るんです。まれ人様は甘いものがお好きだって聞いたので、オヤツにどうぞ」
「そうなんだ。……うん、すごく蜜が出るんだね」
さすが異世界の植物は違う。
わたしがベティーナちゃんから受け取った花は、花弁の間から蜜を滴らせ始めた。こんなに蜜が取れるのなら甘味は結構豊富なのかな。
ベティーナちゃんが複雑そうな顔で首を横に振る。
「まれ人様、普通はそこまで出ません」
「そうなの?」
ルーカスさんが苦笑を漏らす。
「陽菜様の活性化は、花にも効くようですね」
「そ、そういうことですか!」
無意識に力を注いでいたらしい。
ルーカスさんが朝食の後で用意してくれたお茶の茶碗に花を挿した。
お行儀が悪いけれど、指についた蜜は舐めとる。
「うふふ、美味しい。あ、せっかくいただいたのでルーカスさんも良かったら」
「ありがとうございます」
茶碗に挿した花の蜜をどうぞ、というつもりだったのだけれど、ルーカスさんはわたしの手を取って指先を舐めた。
「本当だ。とても甘くて美味しいですね」
「ル、ルーカスさん!」
ベティーナちゃんが顔を赤くする。
「まれ人様と聖騎士様は恋人同士なんですか?」
「ち、違うよ、ベティーナちゃん。わたしとルーカスさんは昨日会ったばかりなんだから」
「恋に時間は関係ないって聞きますよー」
くっ。ベティーナちゃん(12)、さては恋に恋する年ごろだな!
ルーカスさんも笑ってないで否定してくれればいいのに。
「ルーカスさんは純潔の誓いを立てた聖騎士だから恋したり結婚したりはしないんだよ。そうですよね、ルーカスさん」
「還俗すれば問題ありませんよ」
「そうなんですか」
「はい」
「……あ、いえ、そうだとしても今は聖騎士じゃないですか」
「そうですね」
うーん。ルーカスさんの真意がわからない。
いや、いきなり異世界に来て沈んでいるわたしを元気づけようとして、からかってくれてるだけだよね。
力の検証にも付き合ってくれてるし、良い人なんだよねえ。ん? そうだ!
「ルーカスさん、これまでありがとうございました!」
「……はい?」
「わたしの力、人間相手でなくてもいいみたいなので、この後はこの花でします。蜜がいっぱい取れたら、この神殿の食卓も豊かになりますよね? ルーカスさんの回復魔導で治ったとはいえ、聖騎士のみなさんも美味しくて栄養のあるものを食べたほうがいいでしょう。……そんなには出ないと思いますが、厨房でお鍋を借りてきて試してみます」
確か蜂蜜は栄養たっぷりのはずだ。
雨水と合わせてお酒も造れるんだっけ。松葉を入れて炭酸水にしたりもできるはず。
学校でレポート書いたときに調べたんだよね。
「お時間取らせてすみませんでした。本当にありがとうございます。ベティーナちゃん、厨房に付き合ってもらってもいい?」
「はーい! でもまれ人様なら、お鍋いっぱいに蜜を出せるんじゃないですか?」
「パイチェも蜜舐めたいのにゃ」
「……陽菜様」
低い声でわたしの名前を呼んだルーカスさんが、溜息をつく。
「まれ人様の世界では珍しいものではないのだと思いますが、こちらでの甘味は貴重な資源です。花の蜜を増やすことができるなんて知られたら、すごく目立ちますよ?」
「あ……」
「目立っちゃダメなんですか?」
「パイチェにはわかるのにゃ。あの犬妖精を呪具にしたヤツのように、人間には悪いヤツがいるのにゃよ」
うむむむむ。役に立つと目立たないが並び立たないよう。
「ですが、陽菜様がご自分の力を理解していないというのも問題ですね。ベティーナ殿にお鍋を借りてきてもらって検証はしましょう。陽菜様さえよろしければ、私達聖騎士団が持ってきたことにしますよ?」
「あ、そうしてもらえるとありがたいです。なんか……なにを考えてもルーカスさんにご迷惑をおかけしてすみません」
「迷惑なんかじゃないですよ」
ルーカスさんの笑顔が辛い。
……さっき舐められたのって、その前にわたしが舐めてた指だから間接キス?
いやいや、そんなこと考えても仕方がない。コロ太には顔中舐められてたんだから、気にしない気にしない。
「お邪魔するにゃ」
「お邪魔しまーす」
入ってきたのはパイチェ君とベティーナちゃんだった。
ベティーナちゃんは十二歳だそうです。
中学生くらいだと思ってたから、大体当たり。元の世界ではひとりっ子だったので、なんとなく妹ができたみたいで可愛い。
「まれ人様、昨日はありがとうございました」
「助かったのにゃ」
「お役に立てたなら良かったよ。ベティーナちゃん達こそ、魔獣の死骸を食べられるキノコにしてくれたんだよね。朝、スープに入ってたのがそうなのかな?」
「そうなんだにゃ」
「すごく美味しかったよ、ごちそう様」
「えへへ。あ、そうだ。これ、パイチェを助けてくれたお礼です」
そう言って、ベティーナちゃんが一輪の花を差し出してくれた。
「本当はもっといっぱいあったら良かったんだけど、大暴走のせいで森の花畑が滅茶苦茶になってて……この花、蜜がすごく出るんです。まれ人様は甘いものがお好きだって聞いたので、オヤツにどうぞ」
「そうなんだ。……うん、すごく蜜が出るんだね」
さすが異世界の植物は違う。
わたしがベティーナちゃんから受け取った花は、花弁の間から蜜を滴らせ始めた。こんなに蜜が取れるのなら甘味は結構豊富なのかな。
ベティーナちゃんが複雑そうな顔で首を横に振る。
「まれ人様、普通はそこまで出ません」
「そうなの?」
ルーカスさんが苦笑を漏らす。
「陽菜様の活性化は、花にも効くようですね」
「そ、そういうことですか!」
無意識に力を注いでいたらしい。
ルーカスさんが朝食の後で用意してくれたお茶の茶碗に花を挿した。
お行儀が悪いけれど、指についた蜜は舐めとる。
「うふふ、美味しい。あ、せっかくいただいたのでルーカスさんも良かったら」
「ありがとうございます」
茶碗に挿した花の蜜をどうぞ、というつもりだったのだけれど、ルーカスさんはわたしの手を取って指先を舐めた。
「本当だ。とても甘くて美味しいですね」
「ル、ルーカスさん!」
ベティーナちゃんが顔を赤くする。
「まれ人様と聖騎士様は恋人同士なんですか?」
「ち、違うよ、ベティーナちゃん。わたしとルーカスさんは昨日会ったばかりなんだから」
「恋に時間は関係ないって聞きますよー」
くっ。ベティーナちゃん(12)、さては恋に恋する年ごろだな!
ルーカスさんも笑ってないで否定してくれればいいのに。
「ルーカスさんは純潔の誓いを立てた聖騎士だから恋したり結婚したりはしないんだよ。そうですよね、ルーカスさん」
「還俗すれば問題ありませんよ」
「そうなんですか」
「はい」
「……あ、いえ、そうだとしても今は聖騎士じゃないですか」
「そうですね」
うーん。ルーカスさんの真意がわからない。
いや、いきなり異世界に来て沈んでいるわたしを元気づけようとして、からかってくれてるだけだよね。
力の検証にも付き合ってくれてるし、良い人なんだよねえ。ん? そうだ!
「ルーカスさん、これまでありがとうございました!」
「……はい?」
「わたしの力、人間相手でなくてもいいみたいなので、この後はこの花でします。蜜がいっぱい取れたら、この神殿の食卓も豊かになりますよね? ルーカスさんの回復魔導で治ったとはいえ、聖騎士のみなさんも美味しくて栄養のあるものを食べたほうがいいでしょう。……そんなには出ないと思いますが、厨房でお鍋を借りてきて試してみます」
確か蜂蜜は栄養たっぷりのはずだ。
雨水と合わせてお酒も造れるんだっけ。松葉を入れて炭酸水にしたりもできるはず。
学校でレポート書いたときに調べたんだよね。
「お時間取らせてすみませんでした。本当にありがとうございます。ベティーナちゃん、厨房に付き合ってもらってもいい?」
「はーい! でもまれ人様なら、お鍋いっぱいに蜜を出せるんじゃないですか?」
「パイチェも蜜舐めたいのにゃ」
「……陽菜様」
低い声でわたしの名前を呼んだルーカスさんが、溜息をつく。
「まれ人様の世界では珍しいものではないのだと思いますが、こちらでの甘味は貴重な資源です。花の蜜を増やすことができるなんて知られたら、すごく目立ちますよ?」
「あ……」
「目立っちゃダメなんですか?」
「パイチェにはわかるのにゃ。あの犬妖精を呪具にしたヤツのように、人間には悪いヤツがいるのにゃよ」
うむむむむ。役に立つと目立たないが並び立たないよう。
「ですが、陽菜様がご自分の力を理解していないというのも問題ですね。ベティーナ殿にお鍋を借りてきてもらって検証はしましょう。陽菜様さえよろしければ、私達聖騎士団が持ってきたことにしますよ?」
「あ、そうしてもらえるとありがたいです。なんか……なにを考えてもルーカスさんにご迷惑をおかけしてすみません」
「迷惑なんかじゃないですよ」
ルーカスさんの笑顔が辛い。
……さっき舐められたのって、その前にわたしが舐めてた指だから間接キス?
いやいや、そんなこと考えても仕方がない。コロ太には顔中舐められてたんだから、気にしない気にしない。
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