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15・力の結論
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「これはダメだよー」
「ダメですね」
「ダメだね」
わたしが作った蜂蜜酒を口にして、ルーカスさんの三人の部下、赤毛のコルネリウスさん黒髪のイェルクさん茶色い髪のエーリヒさんは、首を横に振った。
「そんなに美味しくないですか?」
飲んでいないので、わたしにはわからない。
正式な作り方もわかっていない。うっすらとした知識しかないのだ。そもそもお酒飲んだことないしね。
食べ物を粗末にしちゃったのだとしたら猛省ものです。
ベティーナちゃんも首を横に振る。
彼女には蜜と松葉で作った炭酸水を飲んでもらった。
この世界、もといこの国ゾンターク王国では十五歳で成人、飲酒も結婚もOKなのだそうですが、ベティーナちゃんは十二歳なのでお酒はダメです。
「そうじゃないです、まれ人様。アタシがもらったこの炭酸水はすごく美味しいです。聖騎士様たちが飲んだお酒のほうも味は良いんだと思います」
「そうなんですか?」
ルーカスさんと、彼が連れてきた三人が重々しく頷く。
「陽菜様。確かに蜂蜜酒は天から降ってきた水と蜂蜜だけで作れますが、一日では完成しません。ましてや陽菜様が容器に手を当てて、美味しくなーれ、などとおっしゃっただけで出来上がるようなものではありません」
うわー、異世界転移のお約束か。わたし、なんかやっちゃったんですね。
ルーカスさんとベティーナちゃんは、わたしのために厨房からお鍋を始めとするさまざまなものを持ってきてくれた。
味見係としてコルネリウスさん達にも来てもらって力の検証をしていたのだけれど、
「コップに入れた牛乳を増やすことはできなかったにゃ」
「蜜も蜜だけお皿に入れた状態では増やせませんでしたよね」
「あくまで花を活性化することで蜜の分泌を増やすのでしょう」
調子に乗って活性化していたら、花は根っこもないのに茎を伸ばして新しい蕾を付けた。
「パン種の発酵もできたよねー」
「まれ人様が発酵させたパン種で作ったパンは、いつものものよりフカフカでしたね」
「美味しかった!」
昨日わたしに活性化されたコルネリウスさんはいつもより魔力が高まっていると言って、お鍋に入れたパン種を焼いてパンにしてくれた。
彼はルーカスさんと同じ放出系魔導者で、炎を生み出すことができるのだ。
焼き立てのパンはすごく良い匂いで、神殿関係者とほかの聖騎士が覗きに来た。
部屋にいた人間(と猫妖精騎士)だけで食べてごめんなさい。
そのままでも、蜜やチーズをつけても美味しかったです。
牛乳を増やすことはできなかったけれど、チーズは作れた。
バターは無理でした。
チーズは活性化した菌で作れるけど、バターは技術で成分を分離させて作るからかな。コルネリウスみたいに僕を活性化してくれたら作れるのに、とエーリヒさんが言って、ルーカスさんに睨まれていた。エーリヒさんも放出系魔導者で、彼は風を生み出せるそうです。
「陽菜様」
ルーカスさんが優しく微笑む。
色の薄い青灰色の瞳はわたしを映している。
なにを言われるかは、なんとなく想像できた。
「陽菜様のお力は、とても素晴らしく偉大なものです。でもだからこそ、陽菜様ご自身で制御抑制できるようになるまでは、私に管理させていただけないでしょうか?」
「この蜂蜜酒だけで一生監禁もの」
「俺が領主でまれ人様のお力を知ったら、絶対自分の町から出しません」
「大暴走兆候の魔獣の咆哮で乳を出さなくなった牛や卵を産まなくなった鶏も、まれ人様の活性化で元気になるんじゃないかなあ。下手したら前より収穫量も増えるよね」
「木に生る果実の量も増やせそうだにゃ」
「まれ人様はお人好し……じゃなくてお優しいから、頼まれたら無理してでもお力を使いそう。近寄る人間を聖騎士様に制限してもらったほうがいいと思います」
……ですよねー?
というか、ベティーナちゃん(12)にまで心配されてるよ。
わたしは粛々と頷いた。のんきもので頭の中お花畑の日本人ですみません。
「ダメですね」
「ダメだね」
わたしが作った蜂蜜酒を口にして、ルーカスさんの三人の部下、赤毛のコルネリウスさん黒髪のイェルクさん茶色い髪のエーリヒさんは、首を横に振った。
「そんなに美味しくないですか?」
飲んでいないので、わたしにはわからない。
正式な作り方もわかっていない。うっすらとした知識しかないのだ。そもそもお酒飲んだことないしね。
食べ物を粗末にしちゃったのだとしたら猛省ものです。
ベティーナちゃんも首を横に振る。
彼女には蜜と松葉で作った炭酸水を飲んでもらった。
この世界、もといこの国ゾンターク王国では十五歳で成人、飲酒も結婚もOKなのだそうですが、ベティーナちゃんは十二歳なのでお酒はダメです。
「そうじゃないです、まれ人様。アタシがもらったこの炭酸水はすごく美味しいです。聖騎士様たちが飲んだお酒のほうも味は良いんだと思います」
「そうなんですか?」
ルーカスさんと、彼が連れてきた三人が重々しく頷く。
「陽菜様。確かに蜂蜜酒は天から降ってきた水と蜂蜜だけで作れますが、一日では完成しません。ましてや陽菜様が容器に手を当てて、美味しくなーれ、などとおっしゃっただけで出来上がるようなものではありません」
うわー、異世界転移のお約束か。わたし、なんかやっちゃったんですね。
ルーカスさんとベティーナちゃんは、わたしのために厨房からお鍋を始めとするさまざまなものを持ってきてくれた。
味見係としてコルネリウスさん達にも来てもらって力の検証をしていたのだけれど、
「コップに入れた牛乳を増やすことはできなかったにゃ」
「蜜も蜜だけお皿に入れた状態では増やせませんでしたよね」
「あくまで花を活性化することで蜜の分泌を増やすのでしょう」
調子に乗って活性化していたら、花は根っこもないのに茎を伸ばして新しい蕾を付けた。
「パン種の発酵もできたよねー」
「まれ人様が発酵させたパン種で作ったパンは、いつものものよりフカフカでしたね」
「美味しかった!」
昨日わたしに活性化されたコルネリウスさんはいつもより魔力が高まっていると言って、お鍋に入れたパン種を焼いてパンにしてくれた。
彼はルーカスさんと同じ放出系魔導者で、炎を生み出すことができるのだ。
焼き立てのパンはすごく良い匂いで、神殿関係者とほかの聖騎士が覗きに来た。
部屋にいた人間(と猫妖精騎士)だけで食べてごめんなさい。
そのままでも、蜜やチーズをつけても美味しかったです。
牛乳を増やすことはできなかったけれど、チーズは作れた。
バターは無理でした。
チーズは活性化した菌で作れるけど、バターは技術で成分を分離させて作るからかな。コルネリウスみたいに僕を活性化してくれたら作れるのに、とエーリヒさんが言って、ルーカスさんに睨まれていた。エーリヒさんも放出系魔導者で、彼は風を生み出せるそうです。
「陽菜様」
ルーカスさんが優しく微笑む。
色の薄い青灰色の瞳はわたしを映している。
なにを言われるかは、なんとなく想像できた。
「陽菜様のお力は、とても素晴らしく偉大なものです。でもだからこそ、陽菜様ご自身で制御抑制できるようになるまでは、私に管理させていただけないでしょうか?」
「この蜂蜜酒だけで一生監禁もの」
「俺が領主でまれ人様のお力を知ったら、絶対自分の町から出しません」
「大暴走兆候の魔獣の咆哮で乳を出さなくなった牛や卵を産まなくなった鶏も、まれ人様の活性化で元気になるんじゃないかなあ。下手したら前より収穫量も増えるよね」
「木に生る果実の量も増やせそうだにゃ」
「まれ人様はお人好し……じゃなくてお優しいから、頼まれたら無理してでもお力を使いそう。近寄る人間を聖騎士様に制限してもらったほうがいいと思います」
……ですよねー?
というか、ベティーナちゃん(12)にまで心配されてるよ。
わたしは粛々と頷いた。のんきもので頭の中お花畑の日本人ですみません。
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