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第十五話 サヴィナ
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私はセオフィラス様を愛しております。
幼いころ、家と家の政略によって婚約が結ばれてから、ずっとずっと……
今あの方が目の前にいなくても、その気持ちが変わることはありません。
とてつもなくお美しいけれど整い過ぎていて人形のようだとか、国や王家を思うにしても言動が苛烈過ぎるとか、セオフィラス様は子どものころから周囲にいろいろと言われていました。
でも私にはどれも欠点とは思えませんでした。
凍りついた仮面のように見えるほど整った美貌で優しく微笑んでくださるから、こちらの心が温かくなるのです。国や王家を思う苛烈な言動の端々に、私やカッサンドラ様達への愛情を感じるから愛おしく感じるのです。
いつかセオフィラス様の妻となり、カンバネリス公爵夫人としてカッサンドラ様とヤニス王太子殿下をお支えするのだと信じておりました。
なのに、セオフィラス様が行方不明になってしまわれるだなんて。
あの方の靴と服の切れ端だけが王都を流れる川のほとりで見つかって、それっきりになってしまうだなんて……しかも、それが……
シミティス辺境伯家の跡取りでいらっしゃるペリクレス様のことは、嫌いではありませんでした。
薔薇色の髪に琥珀の瞳、整った美貌にしなやかな肢体、少し掠れた甘い声──そういった外見的な部分を好んでいたわけではありません。
学園に入学する前までのおとなしく優しい性格が好きでした。セオフィラス様に注意を受けたヤニス王太子殿下やロウバニス様が感情的になって反論したとき、セオフィラス様は君達のことを思って言ってくださっているんだよ、とおっしゃってくださる温和な冷静さが素敵だと思っていました。
ペリクレス様がいつまでも婚約者をお決めにならなかった理由を、私は薄々気づいていました。
……ペリクレス様はヤニス王太子殿下の婚約者だったカッサンドラ様を、『美しく尊いただひとりの女性』をお慕いしていらっしゃったのです。
ええ、わかっていましたとも。私は鈍い女ではないのです。
ですので、セオフィラス様亡き後ペリクレス様のもとへ嫁ぐことになったとき、私はそれを受け入れたのです。
初夜の床で拒まれたのも当然のことだと思いました。
ペリクレス様はセオフィラス様を想う私に共感して、白い結婚をしてくださったのでしょう。私はセオフィラス様、ペリクレス様はカッサンドラ様を想いながら余生を送るのです。他人は不幸だと言うかもしれませんが、私達にはそれが最高の幸せなのです。
学園に入学して、いきなり女性を侍らせるようになったのは、ヤニス王太子殿下を映すカッサンドラ様の瞳のお美しさに胸が引き裂かれてしまったからに違いありません。
ペリクレス様の情熱を紛らわせる対象に選ばれた女性達には申し訳ないと思います。ですがお子が生まれたときには嫡子として引き取りますし、生母の方にも出来るだけのことをさせていただきたいと思っていました。
シミティス辺境伯当主のお義父様には、子を生せぬ嫁と思われてしまうでしょうけれど、それ以外の部分では尽力してきたつもりです。
床を一緒にしない以外では、私とペリクレス様は仲の良い夫婦に見えていたことでしょう。
幼馴染なので、楽しく昔の思い出を語る日もありました。
お互いの趣味も好物もわかっているので、一緒に過ごす時間は穏やかで優しく幸せでした。
──あの日までは。
幼いころ、家と家の政略によって婚約が結ばれてから、ずっとずっと……
今あの方が目の前にいなくても、その気持ちが変わることはありません。
とてつもなくお美しいけれど整い過ぎていて人形のようだとか、国や王家を思うにしても言動が苛烈過ぎるとか、セオフィラス様は子どものころから周囲にいろいろと言われていました。
でも私にはどれも欠点とは思えませんでした。
凍りついた仮面のように見えるほど整った美貌で優しく微笑んでくださるから、こちらの心が温かくなるのです。国や王家を思う苛烈な言動の端々に、私やカッサンドラ様達への愛情を感じるから愛おしく感じるのです。
いつかセオフィラス様の妻となり、カンバネリス公爵夫人としてカッサンドラ様とヤニス王太子殿下をお支えするのだと信じておりました。
なのに、セオフィラス様が行方不明になってしまわれるだなんて。
あの方の靴と服の切れ端だけが王都を流れる川のほとりで見つかって、それっきりになってしまうだなんて……しかも、それが……
シミティス辺境伯家の跡取りでいらっしゃるペリクレス様のことは、嫌いではありませんでした。
薔薇色の髪に琥珀の瞳、整った美貌にしなやかな肢体、少し掠れた甘い声──そういった外見的な部分を好んでいたわけではありません。
学園に入学する前までのおとなしく優しい性格が好きでした。セオフィラス様に注意を受けたヤニス王太子殿下やロウバニス様が感情的になって反論したとき、セオフィラス様は君達のことを思って言ってくださっているんだよ、とおっしゃってくださる温和な冷静さが素敵だと思っていました。
ペリクレス様がいつまでも婚約者をお決めにならなかった理由を、私は薄々気づいていました。
……ペリクレス様はヤニス王太子殿下の婚約者だったカッサンドラ様を、『美しく尊いただひとりの女性』をお慕いしていらっしゃったのです。
ええ、わかっていましたとも。私は鈍い女ではないのです。
ですので、セオフィラス様亡き後ペリクレス様のもとへ嫁ぐことになったとき、私はそれを受け入れたのです。
初夜の床で拒まれたのも当然のことだと思いました。
ペリクレス様はセオフィラス様を想う私に共感して、白い結婚をしてくださったのでしょう。私はセオフィラス様、ペリクレス様はカッサンドラ様を想いながら余生を送るのです。他人は不幸だと言うかもしれませんが、私達にはそれが最高の幸せなのです。
学園に入学して、いきなり女性を侍らせるようになったのは、ヤニス王太子殿下を映すカッサンドラ様の瞳のお美しさに胸が引き裂かれてしまったからに違いありません。
ペリクレス様の情熱を紛らわせる対象に選ばれた女性達には申し訳ないと思います。ですがお子が生まれたときには嫡子として引き取りますし、生母の方にも出来るだけのことをさせていただきたいと思っていました。
シミティス辺境伯当主のお義父様には、子を生せぬ嫁と思われてしまうでしょうけれど、それ以外の部分では尽力してきたつもりです。
床を一緒にしない以外では、私とペリクレス様は仲の良い夫婦に見えていたことでしょう。
幼馴染なので、楽しく昔の思い出を語る日もありました。
お互いの趣味も好物もわかっているので、一緒に過ごす時間は穏やかで優しく幸せでした。
──あの日までは。
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