どうぶつ村のエリカと妖艶なデーモン

あめ野コッキー

文字の大きさ
26 / 26
6.庇護する者たち

2

しおりを挟む
ピーね!」
                    
「ふざけんな! ここまで追い詰めたんだぞ! とっととピーねよ! ピーね! ピーね! ピーね!」
                   
「妙な飾付けしやがって! ここは○○○ピーにでもなったのか?!」

「その格好はなんだ! ○○○○ピーかよ!」

「牛女! ○○ピー悪魔! ○○ピー女!」
                
大介だいすけ! お前も何ぼーっとしてやがる! 早くこの○○ピー女をピーせ!」

エリカがボス部屋に入ると、そこにはとんでもない惨状さんじょうが広がっておりました。
ゆかに力なくすわむデーモンさんは、なんだか見覚えのあるような人たちにいじめられておりますし、部屋の中なんてもっとひどいものなのです。せっかくエリカがデーモンさんにあげた家具たちは無惨むざんにもボロボロになっていました。

クローゼットやベッドはバキバキにこわされていますし、壁紙かべがみなんてビリビリとそこら中がやぶれているのです。

しかし、そんなことよりもエリカにはもっと不快ふかいなことがありました。

それは、ピーピーと耳にいたい不快な電子音でんしおんでした。

「ピーピーうるさいのよ!」

エリカは部屋に入っていの一番にさけびました。

エリカが叫ぶと、デーモンさんをいじめている人たちがエリカの方をかえりました。見覚えのある人たち、それはかおると大介でした。

「あなたたち!」

ふたりの正体に気づいたエリカは「なにしてるのよ!」と叫びます。

「エリカ!」

直後、デーモンさんがいきおいよく立ち上がり、エリカの元へってきました。

「やめろ!」

そう叫んだのは薫でした。
どうやら薫は、デーモンさんがエリカをおそおうとしていると思ったようでした。あせった様子でデーモンさんに向かって大きなけんを振り下ろします。しかし、剣はポヨンっと音を立てて、デーモンさんの背中せなかに当たる寸前すんぜんで弾かれました。薫は「クッ!」とうめき声を上げて大きくりました。

「エリカ……!」

エリカの元へたどり着いたデーモンさんは、エリカを力強くきしめました。

「痛いわ……」

デーモンさんに抱きしめられたエリカは、デーモンさんの大きなむねとお腹とうでの中にしつぶされて、くるしそうに身動みじろぎしました。

「あ、すまない……!」

デーモンさんは抱きしめていた腕をはなして、エリカから一歩後退あとずさりします。

「いいのよ、でも……あなたたち!」

エリカは薫と大介に向かってゆびをさしました。

「そこに座りなさい!」

エリカにそのように言われたふたりは、困惑こんわくした様子で顔を見合みあわせると、おたがいに首をかしげました。

「座りなさい!!」

三度みたびエリカがそう叫ぶと、その声におどろいたふたりのかたはビクッとね上がり、ハト豆鉄砲まめでっぽうらったような顔をして、怒った様子のエリカを見やりました。そして、やがて渋々しぶしぶといったふうにその場にこしを下ろします。大介は体育座たいいくずりで、薫はあぐらをかいて座りました。

「あなたもです」

エリカは目の前でっ立っているデーモンさんを見上げると、眉間みけんにしわを寄せた顔をして言いました。

「私もか?」

「当たり前です」

そう言われたデーモンさんはトボトボと歩いてゆくと、薫のとなりにちょこんと腰を下ろしました。

エリカは腕を組んで三人を見下ろします。

「なぜわたしが怒っているのかわかる?」

3人は首を傾げて顔を見合わせます。すると、大介が「はい」とよい返事へんじをして手を上げました。

「はい、あなた」

エリカは手のひらをし出して発言はつげんすることをみとめます。

「はい、ぼくらが彼女かのじょのことを……その、いじめていたからでしょうか?」

大介は横目よこめで一度デーモンさんを見やると、少し考える素振そぶりをして言いました。

「そんなことはどうでもいいのよ」

「え?」

そう声を上げたのはデーモンさんでした。

「やられてばかりではダメよ、きちんとやり返しなさい」

「やり返したんだ……でも私はけてしまった……」

「じゃあもっと強くなりなさい」

「はい……」

デーモンさんは力ない声でそう返事をすると、しょんぼりと肩を落としました。

「はい!」

次に手を上げたのは薫でした。

「どうぞ」

エリカはふたたび手を差し出して発言を認めます。

「私たちがうるさかったからか?」

「それもよ、でも1番はちがいます。部屋を見なさい、これは全部ぜんぶわたしがデーモンさんにプレゼントしたものです」

「?! この○○○ピーみたいな部屋をか!」

「うるさい!」

「はい……」

エリカに怒鳴どなられた薫は、ビクッと肩を跳ね上げたあと、シュンとして小さくちじこまりました。

「こんなふうにするなら返してもらいます」

そう言ってエリカはポシェットから1本のタクトを取り出しました。

エリカがタクトをひと振りすると、部屋中にあるすべての家具たちが花や巻物まきものにかわりました。

続けてエリカは、タクトをちゅうえがくように大きくふるいます。

すると、花や巻物が宙にい上がり、次々とポシェットの中にい込まれるようにして入っていきました。

「よし」 

エリカは満足まんぞくげな表情ひょうじょうをすると、ポシェットを手でポンポンとたたきました。

「エリカ! 私はお前の村に行きたい!」

突然とつぜん、デーモンさんがエリカに向かってそんなことをげました。

そして、「案内あんないしてくれないか?」と続けます。

「ええもちろん、いいわよ」

エリカがそう言うと、デーモンさんはパーッと満面まんめんみをかべました。

そして、デーモンさんは自身じしんの首にかれたチョーカーについているかぎの形をしたかざりをはずすと、薫たちに向かってげました。

えがくようにして飛んできたそれを、薫はあぶなげなくキャッチしました。

「それをやる」

「なんだこれは?」

「このしろの鍵だ。この城のすべてをお前たちにくれてやる。だからもう私にかかわるな」

そう言いえたデーモンさんは少しかなしそうな表情を浮かべていました。しかし、一瞬いっしゅんだけ目をつむり、もう一度けたころには、先程さきほどの表情はどこへやら、清々すがすがしい表情でエリカに向き直ります。そして、唐突とうとつにエリカを抱きかかえました。

「きゃっ! どうしたの?!」

「お前の村に行く! 案内してくれ!」

そう言ってデーモンさんはエリカを抱えて駆け出しました。

ボス部屋から飛び出して、エリカをお姫さま抱っこで抱きかかえながら、どんどんバタバタ、これでもかと自身の足を叩きつけるようにして階段かいだんを駆け下りてゆきます。

エントランスホールをぐにけて正面扉しょうめんとびらの前に立つと、ゆっくりとにぎりました。デーモンさんは自分がとても緊張きんちょうしていることを感じました。胸に手を当てなくてもわかるくらい、大きな心臓しんぞうの音が体の中からこえてきたのです。

「はーふー」

デーモンさんは一度大げさに深呼吸しんこきゅうをしました。

そうして、期待きたいに胸をふくらませながらゆっくりと扉を開いてゆくのでした。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

航空自衛隊奮闘記

北条戦壱
SF
百年後の世界でロシアや中国が自衛隊に対して戦争を挑み,,, 第三次世界大戦勃発100年後の世界はどうなっているのだろうか ※本小説は仮想の話となっています

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

処理中です...