探偵はウーロン茶を片手にハードボイルドを語る

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第10話 ロック

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 オレはハー……じゃなくて、マスター……

 BAR『ヨリミチ』一日マスター、早乙女 瞳!!




 いらっしゃいませ。オレは今、BAR『ヨリミチ』で臨時のマスターをやっている。

 説明は省くが今日一日、ここでマスターをやることになった。

 いや、しかし……任せろとは言ってみたものの……

 よくよく考えたらここでの勝手がいまいち分からない。

 知っているのはレジの開け方くらいか……

 今は客が来ないからいいようなものの、客が来たらどう対処していいか分からん。

 まあ……そんなに心配することもないか。

 普段からあまり客がこないこの店だ。適当にやっていればなんとかなるだろう。

 まあ、仮にだ。もし客が来ても……

 そこは、この『ハードボイルド早乙女 瞳』!!

 持ち前の応用力とガッツでなんとか乗り切るさ。

 なんとかなるっつーの!

  ……。


 いや、ところでレジに今いくら入ってるか気にならないか?

 いや、オレじゃなくて……この店の売り上げとか気になるだろう?

 いや、ホント……オレじゃなくて。

 え? 見たい? もぉ……しょうがないな……オレは別に見なくてもだいたい分かるんだが……

 そこまで言うなら……少し見るだけ、見るだけだぞ!?



 ガキン



 うん? どうしたことだ? 開かないぞ?

 チッ! マスターめ。こないだ売り上げの一部が消えたからってなんか細工しやがったな?

 ちょこざいな!

 こんなもの! 探偵七つ道具の一つ『バール』を持ってすれば、いくらでもこじ開けられるんだぞ!?

 私は内ポケットからバールを取り出し……

 コノヤロウ!!

 そういってバールを振り上げた。その瞬間、店の入り口の方で物音がする。

 きゃ、客だ!!

 私は持っていたバールを慌てて後ろに隠し笑顔で対処する。

「い、いらっしゃいませ」


 入り口から入って来たのは若いカップル。まだ20代前半といったところか?

 ……。

 チッ!

 ガキが背伸びしてこんなとこに来やがって、酒の味もまだ分からんくせに……10年早いんだよ!!

 男の方が口を開く

「あれ? マスターは?」

「え? ええ……マスターはちょっと所用で出かけておりまして……」

「ふーん……じゃあ、お兄さんはバイトかなんか? まあ、いいや。ウィスキー、ロックでくれる? で……」

「あ、私……ここのおススメのカクテルもらえます?」

 男に促され女の方もそれに合わせる様に注文した。

 疑問系で?

 言い切れよ! ったく最近の若者は……

 自己主張も満足に出来んのか?

 だいたい女の方! お前今ホントに飲み物欲しかったのか?

 男に促されたからって適当に相づちうってんじゃないよー!

 それにカクテルだぁ? カクテル言っておけば自分を可愛らしく見せられると思ってんだろ!?

 ウソつけ!

 アパート帰ったらジャージで焼酎かっ食らってます! って顔してるくせによぉ。

 これだから、最近の女はイヤなんだ!

 だから、オレは彼女作らないんだよ!

 いや、モテないとかじゃなくて……

「あの……」

「は、はい!?」

「注文聞こえました?」

「は、はい。か、かしこまりまして」

 ったく、いっちょ前の口を聞きやがって……



 ふーむ……



 えっと……ウィスキーだよな?



 うん……ウィスキー。



 ウィスキー……ね。



 ウィスキーは分かるよ。



 ウィスキー……



 でも……



 ロックってなんだ!?
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