異世界契約 ― ROCKERS ―

一水けんせい

文字の大きさ
10 / 65
カナルの章

第9話 風呂最高

しおりを挟む
ギルベルトの元で石切り作業の仕事をする事になった俺は、明日分の積荷を載せ終わる。
「よし 今日は終わるか」
俺に言ったギルベルトは続けて、職人達に向かって大きな声で言った。
「おーい 今日は終わるぞー」
職人達は自分の周りにある道具を拾って作業場の建物、休憩所に入っていった。
ギルベルトも向かうので後をついていく。

「お疲れさん!」
ギルベルトは職人達を労う。
「明日から少しの間 手伝ってくれる事になった ケイゴだ みんな よろしく頼むぞ」
ギルベルトがみんなに俺を紹介すると各自己紹介がはじまった。

「俺はハンスだ よろしくな」
三十歳くらいだろうか、この中で一番若い。さばさばしてる感じだ。中肉中背。
「少年 よろしくのう」
歳は……七十くらいか?みんなから『じっちゃん』と呼ばれているルイス。
「ブルーノだ よろしく 分からない事があれば聞いてくれ」
ギルベルトと同じくらいの歳か少し若いくらいだ。体系はギルベルトを一回り小さくした感じ。ハンスほど愛想は無いが落ち着いた雰囲気 嫌な感じはしない。

この他に、馬を持込みで運搬専門の契約従業員のトーマス = エルスター。元貴族の家系らしい。一日一回の運搬で五日に一度、馬を休めるため休みを取る。職人達も、それに合わせて休むという。他にもコスト削減なのか、忙しい時は臨時で運搬を頼めるのが何人かいるらしい。

「よろしく ケイゴといいます 短い期間ですが お世話になります」
挨拶を終えると各自、作業場の隅に繋がれていた馬に乗って帰った。

(…馬通勤か かっこいいな)

俺とギルベルトは最後に作業場を出た。家に帰る途中、ギルベルトは話した。
「…… 俺は あの人達に俺は支えられている 家族みたいなもんだ ケイゴも仲間や家族が出来たら大事にしろよ」
「……ああ 大事にするよ…」

(……お袋 由佳 何してるかな…… )
『異世界』に来て、初めて家族を思い出した。

「みんなに『じっちゃん』って呼ばれていたルイスじいさんな あの人は親父が切り盛りしてた頃からの職人なんだ 良くやってくれてるよ ブルーノは幼馴染みで二つ下なんだか嫁さんや子供も居て、俺のところで職人やってるんだ ハンスは早くに親父さんなくしてな お袋さんと妹の三人で暮らしてる じっちゃんは別として ハンスやブルーノは石切り職人で安定した収入が望みなんだろうな まあ みんな何かしらあるんだよ」 

話を聞いてるうちに家に着いた。玄関の前にあるバケツで手を洗い中に入る。

「おかえり 大丈夫だったかい?」
アバナ婆さんが玄関で迎えてくれた。
「ああ ただいま 大丈夫だよ 身体も順調だよ」
「本当かい? そのまま風呂入っちゃいな 沸いてるよ」
俺は、家に入らず風呂へ直行した。風呂場に入り窓を開け湯気を逃がした。桶でかけ湯をし湯に浸かる。 思わず声に出た。

「プハー 風呂最高! 気持ちいいわー」
「そうかい? 気持ちいいかい よかったよかった」

俺は、びっくりした!アバナ婆さんに聞かれていた。どうやら湯加減が気になったらしい。

「熱くないかい?」
「うん 調度いいよ 風呂最高だわ ハハハ」
「そうかい あがったら中に干してある手ぬぐいで 体を拭きな」
「うん ありがとう アバナ婆さん」

しばらく湯に浸かり温まった俺は、手ぬぐいで体を拭き着替えて家の中に戻った。テーブルには食事が用意されていて、ギルベルトはすでに飯にかぶりついてた。

「おう ケイゴ 風呂は終わったか 飯食え 飯」
「座ってお食べ」
「いただきます」

「なあ お袋 明日からケイゴ うちで手伝う事になったから」
「大丈夫なのかい?」
俺の方を向いて問いかける。
「ああ じっとしててもしょうがないし……旅の資金も欲しいから…」
「旅? 一体どこに行くんだい? 」
「まあ落ち着けって お袋 ケイゴだって色々考えているんだ俺達は出来る事を協力してやればいいじゃないか」
「……そうだね」

ギルベルトがアバナ婆さんに俺がどうして旅をするのかを説明してたが、少し心配そうに考えながら続ける。

「…そうだね… ここに居続けて記憶の戻りが早まるわけじゃないし 手がかりを探す旅もいいのかもしれんのう……」
「…すまない アバナ婆さん 世話になりっぱなしで勝手な事まで言い出して」
「いいんだよ ケイゴがやりたいようにしなよ あたしも協力するよ」
「ありがとう」
「よし! 俺も風呂にするかー ケイゴ 明日から朝早いからな 早く寝ろよ」

食事を済ませたギルベルトは、そう言うと風呂に向かった。確かに仕事に備えるのも悪くないが、さすがに寝れないだろ。さっき日が落ちたばかりなのに。

(仕事か……ん? そういえば あっち側で勤めていた会社に連絡入れて無かったわ……まっいいか)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~

スサノワ
ファンタジー
「ここわぁ、地獄かぁ――!?」  悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、気がつきゃ金糸のような髪の小娘に!? 「えっ、ファンタジーかと思ったぁ? 残っ念っ、ハイ坊主ハラペコSFファンタジーでしたぁ――ウケケケッケッ♪」  やかましぃやぁ。  ※小説家になろうさんにも投稿しています。投稿時は初稿そのまま。順次整えます。よろしくお願いします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜

キノア9g
ファンタジー
※本作はフィクションです。 「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」 20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。 一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。 毎日19時更新予定。

転生女神さまは異世界に現代を持ち込みたいようです。 〜ポンコツ女神の現代布教活動〜

れおぽん
ファンタジー
いつも現代人を異世界に連れていく女神さまはついに現代の道具を直接異世界に投じて文明の発展を試みるが… 勘違いから生まれる異世界物語を毎日更新ですので隙間時間にどうぞ

陸上自衛隊 異世界作戦団

EPIC
ファンタジー
 その世界は、日本は。  とある新技術の研究中の暴走から、異世界に接続してしまった。  その異世界は魔法魔力が存在し、そして様々な異種族が住まい栄える幻想的な世界。しかし同時に動乱渦巻く不安定な世界であった。  日本はそれに嫌が応にも巻き込まれ、ついには予防防衛及び人道支援の観点から自衛隊の派遣を決断。  此度は、そのために編成された〝外域作戦団〟の。  そしてその内の一隊を押しつけられることとなった、自衛官兼研究者の。    その戦いを描く――  自衛隊もの、異世界ミリタリーもの……――の皮を被った、超常テクノロジーVS最強異世界魔法種族のトンデモ決戦。  ぶっ飛びまくりの話です。真面目な戦争戦闘話を期待してはいけない。  最初は自衛隊VS異世界軍隊でコンクエストをする想定だったけど、悪癖が多分に漏れた。  自衛隊名称ですが半分IF組織。  オグラ博士……これはもはや神話だ……!

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

処理中です...