異世界契約 ― ROCKERS ―

一水けんせい

文字の大きさ
11 / 65
カナルの章

第10話 休憩所

しおりを挟む
朝が早いのは慣れているが、まだ辺りは薄暗い。アバナ婆さんに起こされた俺は玄関で顔を洗う。顔を拭き食事が用意されたテーブルに向かい椅子に座る。ギルベルトは、すでに起きて薪割りをしてるという。働き者だ、本当に感心する。

「飯かー 飯だな おう ケイゴおはよう」
そう言いながら薪割りを終えテーブルに座り、即飯にかぶりつく。
「おはよー ギルベルトさん」
俺も急いで食べる事にする。
「いただきます」
「はい おあがり」
アバナ婆さんも席に着き食事にする。
「ギルベルトや 今日は忙しいのかい?」
「そんなでもない 昨日のうちにケイゴと石を荷台に積んだしな どうした?」
「今晩のおかずに魚を買ってきて欲しいんじゃ あと烏賊も」
「おお それじゃ飯食いに帰る前 市場に寄るとするか」
俺とギルベルトは食事を済ませると仕事に向かうため席を立つ。
「ごちそうさま 行ってくるよ」
「気をつけてのう」

家を出て、坂を下り左に曲がってジグザグ道を下るはずだが今日はコースが違う。家を出るまでは一緒だが左に曲がらず右に曲がった。黙って後をついていくと馬小屋があった。立派とは言えないが屋根もある。馬が二頭いる、正真正銘の馬小屋。

「おーよしよし 今日は出かけるぞ」
ギルベルトは馬を撫で、馬小屋の後ろに回り馬車の荷台を引っ張ってきた。作業場にある荷台と違い、華奢な作りで大きさも半分くらいだ。
小屋の周りを見渡すと石が詰まれ柵の代わりになっていた。さすが石切り職人といったところか。二頭の馬を表に出し、荷台を繋げた。

「よし 行くか 乗れケイゴ しっかりつかまってろよ」
俺は、荷台の隅にしゃがみ振り落とされないようへばり付いた。馬車は広く整理された迂回するコースで作業場に向かう。途中、デコボコした場所はあったが振り落とされる事なく作業場についた。

作業場には、まだ誰もきてない。荷台から飛び降り柵を開けた。ギルベルトは作業場の隅に馬車を置き、馬の手綱を柵に括りつけた。
「どれ みんな来るまで お茶でも飲もう」
そう俺に言うと休憩所に入っていった。ギルベルトは棚に入った瓶を取り出した。中身は粉末で、それをスプーンに二杯すくってコップに入れる。何でもこの粉末のお茶は、マナハと『パーソン』の葉を混ぜたものらしい。

「水を汲んでくる」
そう言うと 棚の下にあった薄い鍋のような物を取り表に行く。裏には井戸があった。

カラカラカラ
井戸に吊るされているロープを引くと桶がついてた。その水を、持っていった鍋みたいな入れ物にあける。戻ってくると道具が揃えてたる棚に向かいゴソゴソ何かを探してる。
「あった」
セーブストーンを持ってきた。ギルベルトは休憩所の中にある釜に近ずいた。その釜は、真上に口が開いてる変な形をしていた。
「セーブストーン用に作ってみたんだ」
ギルベルトは用意しながら言った。

ガチャン
セーブストーンを釜の真上に開いてるところに落とした。手のひらを翳し魔法陣を出し称えた。
「リベイション ファイア」
上から覗くとセーブストーンが赤くなり辺りが熱くなる。その上にさっき水を汲んだ鍋を乗せた。ギルベルトは分厚い皮の手袋をはめると、沸騰しだした鍋の取っ手を摘まんでコップに注いだ。

(セーブストーンの効果は単純だが やりようによっちゃ色々出来そうだな)

「飲んでみろ」
俺はお茶を飲んでみた。味は紅茶のようだ、少し渋みがありほんのり甘い。甘い成分はマナハだろう、パーソンが渋みを出してるようだ。

「うまいよ」
「そうか 大抵 雑貨屋で買うとこの味だが マナハとパーソンを別々に売っている専門店もあるぞ 粉末を自分好みに調合する人も結構いるんだ」
そんな話をしていると職人が集まり出した。

「おはようー みんなも お茶飲め 飲んで仕事だ」
職人達は各自コップを持ちスプーンでお茶を入れ、湯を注いで飲み出した。
ルイスがギルベルトに話しかける。

「なんじゃ ギル 出かけるのか? 」
「ああ お袋に魚を頼まれたから 昼飯に戻るとき町に寄って行くよ」
「そうか 魚頼まれたのか フォッフォッフォッ」
日常会話。他愛もない話をしながらお茶を飲み干す。ギルベルトの人柄のせいか、ここは良い人間関係が出来上がってる、そんな感じがした。

「さあ仕事だ やっつけちまおうー ケイゴ ついてこい」
俺はギルベルトについて行き仕事を教わって一人で作業した。はじめは見ていたギルベルトも大丈夫と判断したのか別の場所で作業している。すると四頭の馬を連結させた荷馬車がきた。恐らく昨日、話してたトーマスなんだろう。トーマスは空の荷台を昨日あった場所で馬と切り離すと俺達が積んだ荷台と馬を連結させた。トーマスはチラッとこっちを見たがすぐギルベルトの方へ向かい受領書だろうか何か紙を渡してた。
ギルベルトがトーマスと歩きながらこっちに来た。
「うちで短い間だが手伝う事になった ケイゴだ よろしく頼む」
「ケイゴです よろしくお願いします」
「…よろしく」
トーマスは急ぐと言い、その場を離れ馬車に乗り込むと配達先の『トヨスティーク』へ向かった。初対面で偏見は良くないだろうが、今まで俺が接した『嫌なやつ』と同じ雰囲気を感じた。俺はトーマスを、ちょっとだけブッ飛ばしたくなった。

(顔を突き合わすのも一日一回だろうし気にしないでいよう。)

しばらく一人で作業を続けていると声がした。
「飯にするかー おーい みんな飯だ 飯にしよー」
「ケイゴ 町まで行こう 馬車に乗れ」
俺達は『カナル』の町に向かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

滅せよ! ジリ貧クエスト~悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、ハラペコ女神の料理番(金髪幼女)に!?~

スサノワ
ファンタジー
「ここわぁ、地獄かぁ――!?」  悪鬼羅刹と恐れられた僧兵のおれが、気がつきゃ金糸のような髪の小娘に!? 「えっ、ファンタジーかと思ったぁ? 残っ念っ、ハイ坊主ハラペコSFファンタジーでしたぁ――ウケケケッケッ♪」  やかましぃやぁ。  ※小説家になろうさんにも投稿しています。投稿時は初稿そのまま。順次整えます。よろしくお願いします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜

キノア9g
ファンタジー
※本作はフィクションです。 「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」 20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。 一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。 毎日19時更新予定。

転生女神さまは異世界に現代を持ち込みたいようです。 〜ポンコツ女神の現代布教活動〜

れおぽん
ファンタジー
いつも現代人を異世界に連れていく女神さまはついに現代の道具を直接異世界に投じて文明の発展を試みるが… 勘違いから生まれる異世界物語を毎日更新ですので隙間時間にどうぞ

陸上自衛隊 異世界作戦団

EPIC
ファンタジー
 その世界は、日本は。  とある新技術の研究中の暴走から、異世界に接続してしまった。  その異世界は魔法魔力が存在し、そして様々な異種族が住まい栄える幻想的な世界。しかし同時に動乱渦巻く不安定な世界であった。  日本はそれに嫌が応にも巻き込まれ、ついには予防防衛及び人道支援の観点から自衛隊の派遣を決断。  此度は、そのために編成された〝外域作戦団〟の。  そしてその内の一隊を押しつけられることとなった、自衛官兼研究者の。    その戦いを描く――  自衛隊もの、異世界ミリタリーもの……――の皮を被った、超常テクノロジーVS最強異世界魔法種族のトンデモ決戦。  ぶっ飛びまくりの話です。真面目な戦争戦闘話を期待してはいけない。  最初は自衛隊VS異世界軍隊でコンクエストをする想定だったけど、悪癖が多分に漏れた。  自衛隊名称ですが半分IF組織。  オグラ博士……これはもはや神話だ……!

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

処理中です...