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アインティークの章
第50話 二代目
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カーティスの店で俺とテレジア、カーティスの三人の間で一時の沈黙が続く。そもそも、カーティスはどっち寄りの人間なのだろう……質問攻めで多少はパニックに陥ったがテレジアが来てくれたお陰で冷静さを取り戻した。
「なあ カーティス お前はどうなんだよ? お前は政府関係者なのか?」
「質問したのは俺が先だ ケイゴ お前はどっちなんだ?」
「俺は政府関係者じゃない」
「テレジアちゃん あんたはどっちだ?」
「あたしも違うわ ハッキリ言って政府なんて大嫌いよ!」
プチッ
カーティスは、黙ったまま自身の髪の毛を一本抜いた。そのまま抜いた毛を炉に入れる。俺の位置からは詳しい状況が見れないので席を立ち、作業場に入り様子を見る事にした。
ジュワ
髪の毛は一瞬で蒸発すると同時に、燃えた髪の毛の場所から細い紫煙をあげた。それを見たテレジアがハッした表情になるとカーティスに話しかけた。
「……まさか噂レベルでしか気に止めてなかったけど思い出したわ…… もしかしてカーティスさんあなた『魔装武器』を鍛えられる鍛冶師だったのね?」
カーティスは無言のまま酒を飲む。
「テレジア なんだその『魔装武器』っていうのは?」
「あたしも人伝てで聞いた話なの 噂レベルの話だったからあまり気に止めてもいなかったんだけど…… 話では一部の軍関係者の使う武器は『魔装武器』と呼ばれ魔力が練り込まれ 強度や切れ味が格段と上がるらしいの それと魔力の消費 この場合マナでいいのかしら? とにかく消費が抑えられるらしいの」
「……」
「さあ 答えて カーティスさん」
「……半分くらいは正解だな 次の質問は俺だ あんた達の素性はなんだ?」
「素性って… 言ったろ? 旅してんだよ」
「何の為に?」
(うーん どう説明したらいいんだろう……)
すると、テレジアが即答した。
「ケイゴの記憶を取り戻す旅よ!」
「記憶?」
(おい…… それ言っちゃうのかよ?)
「はじめ聞いた時 あたしも驚いたけど…… あたしと出会った時ケイゴは魔法すら使えなかったのよ」
「……本当か!?」
「あたしが組合に連れて行って割り札を買って確かめたのよ はじめて見た時は驚いたわ」
「で、青札でカモフラージュしてる訳か?」
「当然でしょ! ノコノコ紫札なんて買いに行ったら一生飼い殺しにされるわ……冗談じゃないわよ」
「……だよな」
「あたしは冒険者になるのが夢でパートナーを探しながら旅をしてたわ 最近ケイゴと知り合って一緒にケイゴの記憶を取り戻す旅をしてるわ あたし達は冒険者になるのよ」
カーティスは、その場から離れるとテーブルに置いてある酒をコップに注ぎ足し喉を鳴らしながら半分くらい一気に飲み干す。
ゴキュゴキュゴキュッ
「プハア…… 二人とも座れよ テレジアちゃんも一杯やりなよ」
「……」
テレジアは黙っている。俺達は椅子に座り酒を飲んだ。
「今度は俺の番か……」
カーティスは自分の事を語り始めた。両親は居たが七歳の頃、母親は病死して父親も五年前に病死したと言う。死んだ父親は鍛冶屋だったらしい、自分は鍛冶屋の二代目だと言う。カーティスが十歳の頃、政府関係者が店に来て何か話をしていた記憶があると言う。
今思えば『魔装武器』の製作依頼だったのではと言った。父親は魔法レベル4で通常なら特殊機関に徴兵されるはずが『魔装武器』を作る事で徴兵を免責されていたと言う。現在、自分が置かれている立場も同じく、徴兵を免責されているのだとカーティスは言った。
カーティスは話を続けた。
結局、自分の命は政府に握られて言われた時に言われた武器を作るだけの存在だと……五年前父親が死んで、この仕事を引き継いだ時から自分の人生は決まり何処にも行けず、この店で死ぬのを待つだけだと…… そのせいか、全てが嫌になり店に来る仕事もしなくなってしまったという。酒の量も増えていき昼間から飲んだくれるようになったのだと。
正面の建物の監視が政府関係者だというのも話し出した。あいつらは二代目の監視者らしい。あいつらは毎日同じところから双眼鏡で見張るので見つけるのはすぐだったという。何時か逃亡するかもしれないという疑念から監視者を付けているのだろうとカーティスは言った。
酒を飲み始めてるテレジアが口を挟むように言い放った。
「やりたいようにやったらいいじゃない?」
「え!? やりたいように?」
「ええ 政府と取り引きしたの?」
「取り引きなのか? 徴兵の免責を受けているけど」
「……いい? それは魔法レベル4の人間で 現状この国で鍛治を打てる人間がいないって事なのよ?」
「何故そうなるんだ?」
「考えてよ? 徴兵に出して特殊任務に送り あなたが死んだら困るから政府は徴兵を免責して安全な町に住ませているのよ? あなたの代わりがいるなら戦場に戦力として送り込んだ合間に『魔装武器』を作らせれば効率的じゃない? そうしないのは あなたの代わりがいないって事よ」
「……考えもしなかった」
「…ただ確証は無いから強引に取り引きに持っていくのは危険ね」
「だったら あいつらに伝言頼むか?」
「あいつら?」
「ああ 政府の監視なんだろ? あいつら」
「伝言頼むって…… どうすんだケイゴ」
「簡単だよ カーティスは自由が欲しいんだよな?」
「少し違うが…… まあそんなもんだな」
「その『魔装武器』って毎日作るのか?」
「いや 最近は二ヶ月に一本くらいだ」
「……暇じゃないのか?」
「暇だよ! だから毎日酒飲んでるんじゃねえか!」
「月の何時から何時までは『魔装武器』を作る期間にして それ以外は自由にしろって もし駄目なら徴兵に行くって言ってみたらどうだ?」
「……そ それは言えないだろ!? 極端すぎるぞ!」
「……悪くない手ね」
「えっ!?」
「だろ? 本当に必要なら徴兵になんか行かせないから心配すんなよ」
「そうよ 現状を変えたいならね ここで飲んでても変わらないのよ?」
「俺に手伝える事があれば言えよ カーティス」
「……ああ ちょっと一人で考えてみるわ 色々ありがとう 二人とも」
カーティスは少しだけスッキリした顔になっていた。
「ところでカーティスさん あたし達の事は……」
「わかってるよ! この話は俺達三人だけの秘密だ」
「……ああ 『他言無用』だな」
「ケイゴ 打ってやるよ お前の武器」
「まじか!? いいのか?」
「ああ 髪の毛を少し置いていけ」
「また髪の毛か!?」
「どれくらい欲しいの?」
「七~八本もあれば足りるんだが」
「少し切っちゃえばいいじゃない」
「ちょっと!? 待て テレジア!」
ザクッ
俺はテレジアに髪の毛を一部切られた。
「はい これくらいでいいかしら?」
「……十分過ぎるよ テレジアちゃん…」
「フフ あたしのも作っといてね ナイフみたいのでいいわ」
そう言うとテレジアは自分の髪の毛先をカットしてテーブルに置いた。
「じゃあ カーティスさん頼んだわよ フフ」
「……ちゃっかりしてんだね テレジアちゃんは…」
「何日くらいで出来るんだ?」
「そうだな …三日は欲しいな」
「わかった またその頃来るよ あ いくらだ? 払っておくよ」
「原価だけでいいぞ どうせ金無いんだろうからな」
「じゃあ 二人分よ 取っといて」
テレジアは金貨三十枚テーブルに置いた。
「ああ マジックボアの代金か それじゃ遠慮無く貰っとくぜ」
「何かあったら連絡くれ」
俺はカーティスに泊まっている宿屋を教えてテレジアと店を出て宿に向かった。
「……ねえ さっき思い出したんだけど カインさん…」
「あっ! いけねえ すっかり忘れていたよ ハハハ」
「カインさん お腹空いて倒れてるかもね フフ」
「そういえば テレジア カーティスと話してた『紫札』って何の事だ?」
「…えっ!? そんな事言ったかしら た… たぶんカーティスさんが『紫札』って事なんじゃない? 聞き違えよ!?」
「ふーん そっか 聞き違えたか」
俺達は今日も蒸かし芋と惣菜を買い宿に帰った。明日こそ外食するかな……
「なあ カーティス お前はどうなんだよ? お前は政府関係者なのか?」
「質問したのは俺が先だ ケイゴ お前はどっちなんだ?」
「俺は政府関係者じゃない」
「テレジアちゃん あんたはどっちだ?」
「あたしも違うわ ハッキリ言って政府なんて大嫌いよ!」
プチッ
カーティスは、黙ったまま自身の髪の毛を一本抜いた。そのまま抜いた毛を炉に入れる。俺の位置からは詳しい状況が見れないので席を立ち、作業場に入り様子を見る事にした。
ジュワ
髪の毛は一瞬で蒸発すると同時に、燃えた髪の毛の場所から細い紫煙をあげた。それを見たテレジアがハッした表情になるとカーティスに話しかけた。
「……まさか噂レベルでしか気に止めてなかったけど思い出したわ…… もしかしてカーティスさんあなた『魔装武器』を鍛えられる鍛冶師だったのね?」
カーティスは無言のまま酒を飲む。
「テレジア なんだその『魔装武器』っていうのは?」
「あたしも人伝てで聞いた話なの 噂レベルの話だったからあまり気に止めてもいなかったんだけど…… 話では一部の軍関係者の使う武器は『魔装武器』と呼ばれ魔力が練り込まれ 強度や切れ味が格段と上がるらしいの それと魔力の消費 この場合マナでいいのかしら? とにかく消費が抑えられるらしいの」
「……」
「さあ 答えて カーティスさん」
「……半分くらいは正解だな 次の質問は俺だ あんた達の素性はなんだ?」
「素性って… 言ったろ? 旅してんだよ」
「何の為に?」
(うーん どう説明したらいいんだろう……)
すると、テレジアが即答した。
「ケイゴの記憶を取り戻す旅よ!」
「記憶?」
(おい…… それ言っちゃうのかよ?)
「はじめ聞いた時 あたしも驚いたけど…… あたしと出会った時ケイゴは魔法すら使えなかったのよ」
「……本当か!?」
「あたしが組合に連れて行って割り札を買って確かめたのよ はじめて見た時は驚いたわ」
「で、青札でカモフラージュしてる訳か?」
「当然でしょ! ノコノコ紫札なんて買いに行ったら一生飼い殺しにされるわ……冗談じゃないわよ」
「……だよな」
「あたしは冒険者になるのが夢でパートナーを探しながら旅をしてたわ 最近ケイゴと知り合って一緒にケイゴの記憶を取り戻す旅をしてるわ あたし達は冒険者になるのよ」
カーティスは、その場から離れるとテーブルに置いてある酒をコップに注ぎ足し喉を鳴らしながら半分くらい一気に飲み干す。
ゴキュゴキュゴキュッ
「プハア…… 二人とも座れよ テレジアちゃんも一杯やりなよ」
「……」
テレジアは黙っている。俺達は椅子に座り酒を飲んだ。
「今度は俺の番か……」
カーティスは自分の事を語り始めた。両親は居たが七歳の頃、母親は病死して父親も五年前に病死したと言う。死んだ父親は鍛冶屋だったらしい、自分は鍛冶屋の二代目だと言う。カーティスが十歳の頃、政府関係者が店に来て何か話をしていた記憶があると言う。
今思えば『魔装武器』の製作依頼だったのではと言った。父親は魔法レベル4で通常なら特殊機関に徴兵されるはずが『魔装武器』を作る事で徴兵を免責されていたと言う。現在、自分が置かれている立場も同じく、徴兵を免責されているのだとカーティスは言った。
カーティスは話を続けた。
結局、自分の命は政府に握られて言われた時に言われた武器を作るだけの存在だと……五年前父親が死んで、この仕事を引き継いだ時から自分の人生は決まり何処にも行けず、この店で死ぬのを待つだけだと…… そのせいか、全てが嫌になり店に来る仕事もしなくなってしまったという。酒の量も増えていき昼間から飲んだくれるようになったのだと。
正面の建物の監視が政府関係者だというのも話し出した。あいつらは二代目の監視者らしい。あいつらは毎日同じところから双眼鏡で見張るので見つけるのはすぐだったという。何時か逃亡するかもしれないという疑念から監視者を付けているのだろうとカーティスは言った。
酒を飲み始めてるテレジアが口を挟むように言い放った。
「やりたいようにやったらいいじゃない?」
「え!? やりたいように?」
「ええ 政府と取り引きしたの?」
「取り引きなのか? 徴兵の免責を受けているけど」
「……いい? それは魔法レベル4の人間で 現状この国で鍛治を打てる人間がいないって事なのよ?」
「何故そうなるんだ?」
「考えてよ? 徴兵に出して特殊任務に送り あなたが死んだら困るから政府は徴兵を免責して安全な町に住ませているのよ? あなたの代わりがいるなら戦場に戦力として送り込んだ合間に『魔装武器』を作らせれば効率的じゃない? そうしないのは あなたの代わりがいないって事よ」
「……考えもしなかった」
「…ただ確証は無いから強引に取り引きに持っていくのは危険ね」
「だったら あいつらに伝言頼むか?」
「あいつら?」
「ああ 政府の監視なんだろ? あいつら」
「伝言頼むって…… どうすんだケイゴ」
「簡単だよ カーティスは自由が欲しいんだよな?」
「少し違うが…… まあそんなもんだな」
「その『魔装武器』って毎日作るのか?」
「いや 最近は二ヶ月に一本くらいだ」
「……暇じゃないのか?」
「暇だよ! だから毎日酒飲んでるんじゃねえか!」
「月の何時から何時までは『魔装武器』を作る期間にして それ以外は自由にしろって もし駄目なら徴兵に行くって言ってみたらどうだ?」
「……そ それは言えないだろ!? 極端すぎるぞ!」
「……悪くない手ね」
「えっ!?」
「だろ? 本当に必要なら徴兵になんか行かせないから心配すんなよ」
「そうよ 現状を変えたいならね ここで飲んでても変わらないのよ?」
「俺に手伝える事があれば言えよ カーティス」
「……ああ ちょっと一人で考えてみるわ 色々ありがとう 二人とも」
カーティスは少しだけスッキリした顔になっていた。
「ところでカーティスさん あたし達の事は……」
「わかってるよ! この話は俺達三人だけの秘密だ」
「……ああ 『他言無用』だな」
「ケイゴ 打ってやるよ お前の武器」
「まじか!? いいのか?」
「ああ 髪の毛を少し置いていけ」
「また髪の毛か!?」
「どれくらい欲しいの?」
「七~八本もあれば足りるんだが」
「少し切っちゃえばいいじゃない」
「ちょっと!? 待て テレジア!」
ザクッ
俺はテレジアに髪の毛を一部切られた。
「はい これくらいでいいかしら?」
「……十分過ぎるよ テレジアちゃん…」
「フフ あたしのも作っといてね ナイフみたいのでいいわ」
そう言うとテレジアは自分の髪の毛先をカットしてテーブルに置いた。
「じゃあ カーティスさん頼んだわよ フフ」
「……ちゃっかりしてんだね テレジアちゃんは…」
「何日くらいで出来るんだ?」
「そうだな …三日は欲しいな」
「わかった またその頃来るよ あ いくらだ? 払っておくよ」
「原価だけでいいぞ どうせ金無いんだろうからな」
「じゃあ 二人分よ 取っといて」
テレジアは金貨三十枚テーブルに置いた。
「ああ マジックボアの代金か それじゃ遠慮無く貰っとくぜ」
「何かあったら連絡くれ」
俺はカーティスに泊まっている宿屋を教えてテレジアと店を出て宿に向かった。
「……ねえ さっき思い出したんだけど カインさん…」
「あっ! いけねえ すっかり忘れていたよ ハハハ」
「カインさん お腹空いて倒れてるかもね フフ」
「そういえば テレジア カーティスと話してた『紫札』って何の事だ?」
「…えっ!? そんな事言ったかしら た… たぶんカーティスさんが『紫札』って事なんじゃない? 聞き違えよ!?」
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