異世界契約 ― ROCKERS ―

一水けんせい

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アインティークの章

第60話 誰かのために

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―― 予定よりも薬草採集が捗った為、町に戻った俺達

ソフィアの調合指南とテレジア自身の薬草調合を、はじめるらしく邪魔だから部屋を出て行けと言われた俺とオットーはカインの部屋に行った。

コンコンッ
「カインさん 具合はどうだい?」
「ああ ケイゴくん ご覧の通りすぐに立てますよ」
「だいぶ良くなったね よかった」
「ええ あっ これなんですけど… 今までの宿代と治療費を」

カインは組合から調達したという調査費の中から謝礼をしたいと金を出した。

「いや 別に俺は何もしてないし ちょっと待ってな テレジア! ちょっと」

俺は部屋の外から隣の部屋で調合をはじめているテレジアに声をかけた。

「何? これから忙しくなるのに」
「いや カインさんが今までの宿代と治療費と言って謝礼をしたいって言うんだが 俺は何もしてないからテレジアが決めてくれ」
「いいのね?」
「ああ テレジアに任せるよ」

テレジアはカインの部屋に来て謝礼の件を話しだした。

「どうしたの? カインさん いきなり謝礼とか」
「いえ 助けて貰い宿も貸してもらっていたので お礼です」
「あたしはそんなつもりで助けた訳じゃないんだけど 今までの宿代だけでいいわ」
「いいんですか?」
「いいわよ そりゃ薬とか採集して調合する手間暇はかかるけど 遺跡の依頼も請け負ったんだし そっちの日当がもらえるだけで十分よ」
「わかりました ありがとうございます あとオットー君達にも お礼がしたいのですが?」
「だってさ オットー」
俺はオットーの肩をポンと叩いた。すると、オットーはカインに言った。

「いいえ 僕こそ何も出来ず助けを呼ぶだけでした…… お礼なんて貰えませんよ…… 僕等の事は全然気にしないで下さい カインさん」
「……そうですか 本当に此処の人達は欲がないというか わかりました…機会があれば何か違う形でお礼させて下さい」
「ええ そうしましょ それじゃ調合に戻るわ」

テレジアとソフィアは調合に隣の部屋へ戻った。

「まあ あまり気にしないでくれ カインさんには冒険者登録の保証人にもなってもらっているんだしな」
「わかりました」
「俺はちょっと出かけてくる 鍛冶屋のところに行ってくるよ」
「わかりました 僕もロバを洗いに行って来ます」

俺は、カインの部屋を出てテレジアにカーティスのところに行くと伝えて宿の階段を降りようとした時、テレジアは部屋から顔を出しジッと俺の顔を見ると黙って部屋に戻った。

(……なんだ今の…… 嘘チェック!?)

俺は、オットーに頼みカーティスの店の前までロバの荷台に乗せてもらい降ろして貰った。オットーは、そのまま外門の方に向かって行った。店の前で立っていると作業場から鉄を鍛える音が聞こえてくる

カンカンカン カーンカーン

俺は店の中に入り作業場の扉を開けた。

ガラガラガラ
「うおーい 居るか? って居るな」
「おう ケイゴ 少しそっちで座って待っていろ もう終わるところだ」
「おっ!? 何だ 出来るのか?」
「ああ」
「わかった 待っているわ」

俺は椅子に座り待つ事にした。時間にして五分くらいだろう、刀を鍛える音が止んだ。カーティスが全身、汗でびっしょりになって作業場から出てきた。

「待たせたな 終わったよ 後は鞘とか組んで完成だ」
「そっか ありがとう カーティス やっと自前の武器を持てるな」
「明日取りにきてくれ 仕上げとくよ」
「オッケー しかし凄い汗だな」
「まあな テレジアちゃんのも一緒に仕上がるから連れて来い」
「テレジアも?」
「ああ お前らに使い方を教える」
「使い方? もしかして『魔装武器』ってやつの使い方か?」
「そうだ ちょっとしたコツがある それを教えてやるよ」
「おおっ! わかった 明日テレジアも連れて来るよ」
「俺もこんな形した剣を作ったのは初めてだったが 切れ味は保障するぞもちろん強度もな!」

俺は明日来ると言ってカーティスの店を後にした。

(ついでだ… 組合に行ってみるか)

俺は以前『カナル冒険者組合』に行った時、冒険者以外立ち入り禁止の看板を見た事があった。そこには政府依頼や一般告知される事前情報が掲載されているらしい、気にはなっていたが組合の中を一般人でも行き来できるのだからあまりたいした情報はないんだと思っていた。

俺は『アインティーク冒険者組合』のドアを開け中に入った。『カナル冒険者組合』では天井からぶら下がった看板に書いてあったのだがここでは何処に看板があるのだろう、面倒臭いのでカウンターで聞く事にした。カウンターには俺とテレジアが冒険者登録した時のお姉さんがいた。

「こんにちは」
「こんにちは あら ケイゴさん 今日はどうされました?」
「冒険者以外立ち入り禁止の区間ってありました?」
「…? もしかして政府依頼がある区間の事でしょうか?」
「そう! それです」
「それでしたら そこを真っ直ぐ突き当たりを左に行った部屋になります」
「ありがとう」

俺は、政府依頼が掲載されている部屋に向かおうとした時カウンターで販売してある『マナハポーション』が目に止まった。

(そういやマナハポーションを作って買い取ってもらうにはどうすんだろ)

「ねえ お姉さん マナハポーションを作って卸そうと思うんだが組合で買い取ってくれるの?」
「はい ケイゴさんが持ち込むんですか?」
「いや 俺じゃないんだけど 話を少し聞きたいんだ」
「わかりました ではそちらにかけて下さい 説明いたします」

俺はカウンターの端の席に案内され椅子に腰掛けた、カウンターの正面にお姉さんが座り紙とペンを持ち説明が始まった。

「いいですか? この仕事は本来ポーターやサポーター一般人の方々が生活のために組合が生成されたマナハポーションを買い取る趣旨ではじまりました」
「へぇー そうだったのか」
「はい ですから冒険者の方には特別な事情がある場合以外は 極力取り引きは行わない事になっています」
「なるほど」

(……弱者に優しい世界かも)

「そういった理由もあり 冒険者による割高での買い取りは一切行いません『魔石』の交換と同じです 購入時のみ定価 銀貨七枚が銀貨五枚銅貨六枚で買えます 買い取りは一本銀貨四枚とさせてもらっています 本数は一日 一人三本までとなっています」

悪くないシステムだ、一般人やポーターがきちんと食べていけるだけの保障を政府機関の組合で行う。

「このポーション瓶は何処に行けば売っていますか?」
「雑貨屋か組合でも売っています お出ししますか?」
「ああ 空のポーション瓶を三十本もあればいいかな」
「わかりました 銀貨三枚になります」

俺はオットー達が使うと思い、空のポーション瓶を組合で買った。一本銅貨一枚なら自分達だけでやっていけるだろう。後はちゃんとした製品になるようテレジアに教われば食っていけはず。

「はい 領収書です それと参考までにこれを持っていって下さい」

お姉さんは、領収書とマナハポーションに関する買い取りや本数の制限を書いた紙を俺に手渡した。

「ありがとう 助かりました」
「また 何時でもいらして下さい」

お姉さんはニッコリ笑いながら頭を下げていた。俺は、お礼を言うと椅子から立ち上がり説明された部屋に向かった。

「突き当たって… 左だな あそこか」

部屋に扉は無く真正面に掲示板が見えた。中に入ると両脇にも掲示板が設置されていた。どうやら掲示板ごとに内容が違っている。

真正面には『政府からの依頼』と書かれた掲示板で依頼内容は主に、『警護』系の依頼だった。政府要人や公爵といった重要人物の警護任務だった。何か依頼内容に違和感を感じる物が多かった。

(軍が警備にあたらないのか?)

次に、左側の掲示板には『最新情報』と書かれていた。『新種 セーブストーン見つかる! 政府機関で検証中』と書かれていたがそれ以上の情報は書かれていなかった。他にも、『『メザーレイク』渡し舟の運航が決定!』とあった。確か、首都『オリオスグラン』の西側にある大きな湖があったが、どちらにしろ近日中に一般公開される情報だ。

最後に、右側の掲示板に行くと『冒険者連絡網』と書いてある。連絡網?何だろう、俺は内容を見たが理解できなかった。

『あそこで待つ デニス』『『サンルーク』三番目 ナタリー』等……

(もしかして暗号みたいなものなのか? 自分達だけが分かる話をやり取りしているのかもしれない……)

かと、思いきや『『トヨスティーク』に三週間ほど滞在予定 マルコ』と明らかに動向が分かる内容の物もあった。仲間との合流には良いのかもしれない。

(連絡網か… 仲間がいれば活用できるがテレジアと俺は何時も一緒だし必要ないかもな……)

俺は一通り掲示板を眺めて宿に戻る事にした。これといって『あるもの』に関する情報は得られなかったがマメに通う事にしよう。

カウンターを過ぎ組合のドアに向かうと、そこには先日揉めた『アインイーグル』のコートを着た男 義手のリンカーンが俺を見て立っていた。

「……ほう」

(……ふーん また揉め事か? 力の差はリーダーのシボレーを倒した事で判っている筈…… それでもリベンジするのか 根性あるじゃねえか!)

俺は少しだけ嬉しくなってニヤけていた。
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