異世界契約 ― ROCKERS ―

一水けんせい

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アインティークの章

第59話 薬草採集

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コンコン
「オットーいるか?」
「ケイゴさん!? 何処に行ってたんです!? みんな心配したんですよ」
「ああ すまんな留守にして ほら 土産だ 取っとけよ」
「……こ これは!? なんのお金ですか?」

俺とテレジアは部屋から出るとオットーとソフィアの泊まる部屋で今回の件を説明した。オットー達に感謝はされたものの、テレジアはまだ少し疑っている様子だった。泣きながら抱きついてきた、さっきとは打って変わりテレジアが俺に向かって言い放った。

「ケイゴ! 明日から自由行動は駄目よ しばらくは、あたし達の薬草採集に付き合ってもらうから いい?」
「ああ わかったよ 行くよ 付き合うよ 反省してんだから もう怒るなよ」

(しばらくの間はしょうがないか…… しかしテレジアもさっきはあんなに悄かったのに… まあ 皆がいる前でベタベタするタイプではないしな)

俺は、オットー達の部屋の中を見渡すと先日から取りに行ってる割に草木がほとんど部屋にない事に気づいた。

「なあ 採集は上手くいってないのか? 全然ないじゃないか」
「うん あまり奥には行かない様にしているわ まだ情報不足だし」
「そうか じゃあ俺も明日は付いて行くから少しだけ奥に行くか?」
「そうね! ケイゴが『魔獣』を処理してくれるなら 気にしないで採集に集中出来るわ そうしましょう」

俺達はカインに声をかけ飯を食いに出かけた。

―― 次の日の朝

「ケイゴ… そろそろ起きて ケイゴ」
「う… うん!? ああ おはよう…」
「おはよう」

俺はテレジアに起こされ採集に行く準備をし宿の前でロバを待機させて待っているオットー達と合流すると目的地の山へ向かった。

目的地は、町から南へ向い岩肌が見える崖の手前の森だった。

「テレジア どの辺で採集していたんだ?」
「もう少し先よ そこから先は『魔獣』も居そうだから行かなかったわ」
「オッケー そこで採集しててくれ 俺が見に行ってくる」
「うん わかったわ 何かあったらすぐ声をかけてね」
「ああ」

ロバが止まるとテレジア達は横に広がり化膿止めになる薬草を探し始めた。俺はそのまま森の奥へ進むが、特に変化がない。

更に進む事にした俺は、しばらく歩くと急に木々がなくなり開けた場所に出た。

(ここまで何もいないか よし一度戻って皆を呼んでこよう)

俺はロバを降りたところまで引き返しテレジア達を集め先に進む事にした。

「異常なしだ 皆で奥に進もう」
「わかった 皆行きましょう」

奥に歩く出すとすぐにテレジアが声をあげた。

「待って! こんなにたくさんあるじゃない オットー ソフィア摘みましょう!」

どうやら目的の、化膿止めの薬草が生えていた様だ。俺は摘んでいる皆を護衛するように周囲に気を配っていた。

「だいたい採りつくしたかな… 移動しましょう」
「オッケー」
「はい!」

奥へ進む道中、生えてる薬草を採りながら進む。採集の効率は少し奥へ進んだだけで昨日までの三倍はあるとテレジア達は言った。安全基準に余裕を持たせて行動する事は大事だが、何処までが安全なのかを見極める事も大事だと感じた。

「先行して来た場所まで来たが どうする?」
俺は開けた場所に着くとテレジアに聞いてみた。

「これだけ取れれば結構作れるの いいわ 戻りましょ」
「わかった テレジア先頭行ってくれ 俺は一番後ろから付いて行く」
「了解!」

テレジアはテクテク先頭を歩き元着た道を戻る。俺は時折、後ろを確認したり周りを見渡しながら付いて行った。

「あっ… ストップ」
「どうしたの?」
「俺は見つけてしまった…… 自然薯だ 食いてえ!」
「えっ? 自然薯? 何それ」
「…ああ なんか自然と名前が出てきたんだけど 芋だよ 長芋」

(しまった! 『記憶喪失』だったんだ俺は…)

「ああ 長芋ですか 採っていきましょうよ」
「手伝います」
「オットー達も好きか? 長芋」
「ええ おいしいですよね 僕等は油で揚げて食べたりしてました」
「そっかあ…… 色々な食い方が出来るんだよなあ ゴクリ」

(とろろ飯 とろろそば…… 美味いんだよなあ)

「……ケイゴ 何か思い出したの?」
小声でテレジアは俺に尋ねてきた。

「…いや 葉の形を覚えていたんだ もしかしたら何処かの村に住んでいたのかもしれないな……」
「ええ でも自然薯って呼び方 聞いた事ないのよねえ……」
「……」

(こっちでは 『長芋』として一括りにされているかもな)

「まあ 単発的に出てきた言葉だし これからまた何か思い出すかも」
「うん そうね! 無理せず行きましょう」

俺達は町へ帰るとテレジアが持っている擂鉢すりばちで自然薯をすり潰した。

ゴリゴリゴリ

「ちょっと!? 何をしてるのケイゴ? 調合に使う擂鉢よ それ」
「え? 何って 長芋をすり潰してるんだよ」
「そんな食べ方しないわよ? 薄く輪切りにして食べてるのよ?」
「駄目駄目! これはこうして すり潰して食べるのさ」
「……」

テレジア達は心配そうに俺を見ていた。俺はテレジアに油を用意してもらいすり潰した自然薯を揚げた。

ジュワー

「これが美味いんだよ 食ってみろ」

オットー達もすり潰した自然薯を食べた事が無かったみたいだ。揚げた自然薯を口に入れたとたん

「美味いです! こんなの初めてです!」
「美味しい!」
「ハハハ だろ 自然薯はこうやって食うのさ 輪切りにして揚げて食うなんてもったいない テレジアも食ってみろ」
「……! 美味しいわ!」
「だろ?」

何だろう?この『異世界』の食文化は簡略化されすぎてるような気がする。少しの手間暇をかければもっと美味い物を食えるのに……もったいない。

俺がこの『異世界』で『コロッケ』を広めるのは、まだ少し先の話だ。
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