異世界の孤児院でただ平和に暮らしたいだけだった。

一章【なんとか平和に暮らしたい】

【二話目 成長の確認】

【二話目  成長の確認】


「ルイ、成長が早いですね」

「魔力の強いエルフの子だもの。成長も早いわ」

「ねぇさま、ねえさま！ごはんまだでしゅか？」

「もうすぐよ、少し待ってね」


こんにちは、七町楓です。
正しくは’’元’’ですけど。
どうやら私は死んだ後、異世界のエルフの赤子に転生してしまったようです。

私の新しい名前はルイ・エレメル。
この世界でも親に捨てられ、孤児になった所を孤児院の院長であるサテン・フォードリオンに拾われたそうです。

ここに来て、もうすぐ三年が経とうとしています。
時が流れるのが早いのは、赤子という不自由な体ですることが無く、眠ってばかりいたせいでしょう。

そして、どうやらエルフという耳長の種族は魔力を多く持っているらしく、成長が早くてとても長生きだそうです。
まだ三歳ですが、言葉を自由に話せるようになってきました。
一人で歩けますが、孤児院の年上…兄や姉に、補助をしてもらっています。

と、ここ迄現状確認してはみたが、まだまだ謎な部分が多い。
だけど死ぬ間際の事を思い出すと生きていて良かったと思う。

生前…転生前に居た孤児院に比べるとここの孤児院は最高だ。
皆優しく、気兼ねせずに居られる。
この世界は物騒な部分はあるが、ここの孤児院には色んな種族が居て、いざとなれば守ってくれるし問題は無い。

転生前の未練といえば安寧が無かった事だろう。
孤児院では虐げられ、学校でも虐められて、会社ではパワハラにあって脱サラニート。

せめて生まれ変わったからには、この異世界の孤児院でただ平和に暮らしたい。それだけだ。

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「おい、ルイ！何やってんだよ」

この男は六歳のアイク・シモツキ。
赤髪で、二つの角が生えている。
鬼族で、族内で紛争が起こり、両親がこの孤児院に預けたらしい。
この施設は預かる事もしているそうだ。

「えほんをよみたいの」

「ふ～ん。悪いな、俺は本読んでやれねーわ」

そして少々頭が弱い。

「アイク、ルイを虐めてるんじゃ無いでしょうね」

この少女はエリシア・マッカーレン。
齢は十三。
院長、サテン姉様の見習いだ。
丘の上にあるこの孤児院。
その下にある街から態々通っている。
有名なマッカーレン家の次女らしい。
種族は人間族らしく、魔力は殆ど持っていない。

「いじめてねーよ！エリシアババァ！」

「な！？全然歳変わらないじゃない！」

エリシアは親しみやすく、アイクは五月蝿い悪餓鬼だが、二人共優しい性格をしている。

「何を言い合いしているの？エリシア、アイク」

そして我らが大聖母、院長のサテン・フォードリオン。
齢も種族も分からないが、とても優しい。とにかく優しい素敵な女性だ。
髪や肌が透き通るように白く、ルビーのような紅い瞳はとても綺麗だ。
所謂アルビノ、というものなのだろうか。

「サテン姉様！アイクがルイに絡んでたのでいじめてないか確認していただけですよ」

「いじめねぇよ！本を読んでやろうとしただけだ」

「もう…二人共、早く仲直りして昼食の支度をするわよ。ルイはアナに読んでもらうと良いわ」

サテン姉様が声を掛けると、エリシアとアイクは返事をしてキッチンの方へ向かった。

「あい！しゃてんねぇさま」

私も舌っ足らずな口調で返事をすると、頭をそっと撫でられた。

こんな毎日を過ごし、時の流れ早くて健やかに成長した。

＿＿＿＿現在の齢、九歳。