異世界の孤児院でただ平和に暮らしたいだけだった。

一章【なんとか平和に暮らしたい】

【四話目 相対的相談？】

【四話目  相対的相談？】


「エリシア！｣

赤茶色の髪を三つ編みにした少女が、黒いワンピースに白いエプロンをした、茶髪の少女に駆け寄る。

「アナ、どうしたの？そんなに慌てて…」

三つ編みの少女が息を切らしているのを心配するような顔をする茶髪の少女。

「ねぇ、エリシア。さっき街に行ったのだけど…変な噂を聞いたのよ」

「…噂って何？」

「貴方の立場の事よ。エリシア、このままじゃ家を追い出されるって本当？」

「うん…マッカーレン家はね、代々当主の姉妹は追い出されるの。昔、悪い事をして悪魔に呪われたの。妹である私があの家に残っていると災を誘い、いずれ死ぬって」

「酷いわ、そんなの。エリシアは何も悪いことしてないじゃない」

三つ編みの少女は涙を零し始める。茶髪の少女はそれにつられるようにして涙を浮かべた。

「うん…そうなんだけど…でも逆らえない！」

「エリシアが助かる方法はないの？」

「コヒー姉さんが居なくなれば必然的に私が当主になるけど…なるけど、私はそれも耐えられない」

「そうよね…エリシアは優しい子だもの。私、その悪魔の呪いが解呪出来ないか調べてみるわ！」

「ありがとう、アナ。でも、他の人には言わないで…特にサテン姉様には絶対」

「心配されたくないの？」

「それもあるけど…兎に角私も生き残れる方法がないか、探してみるね」

「…？ええ！」

茶髪の少女は何かを言いかけて口を瞑った。
三つ編みの少女は怪しみの目を向けていた。

これはアナがルイにエリシアの話をする2ヶ月前の話である。

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時系列は戻り＿＿＿＿

「うーん…何だかな…」

どうも、ルイです。
現在私は洗濯物を兄弟（と言っても血の繋がりはないが）と共に干しているところだ。
丘の上にある孤児院は風当たりと日当たりがよく、何より景色が良い。

「どうしたんだよ、ルイ」

今日はアイクとサナと一緒にサテン姉様のお手伝いだ。
因みにサナと言うのは私の一個上の女の子だ。
水色の髪がとても印象的で、静かな性格だ。

「いや、考え事…ほら、エリシア最近元気ないでしょ？」

アイクは考える素振りをしてから「いや、知らねぇ」と言った。

「…アイク、本当にわかってないの？…サナは分かるよ」

サナがゆっくりと話すと、洗濯物をどんどん干していく。

「サナは原因を聞いたの？」

「…ううん、聞いてないよ。聞かれたくないみたいだし」

「そうなの？」

「うん。アナにでも聞いたけど…」

「けど？なんだよ」

「エリシアの事、聞かないでって。そう言われた」

「…そうなんだ」

もしかしてアナは私にしかエリシアの事情を話してない…？
いや、九歳児にだけ話すなんて可笑しな話だ。
多分、サテン姉様も知らないだろうし。

「ルイは聞いたの？」

サナの桃色の瞳に見つめられる。
その瞳は深く、何を考えているのか分からない。

「ううん、聞いてない。早く元気になるといいね」

何だか嫌な予感がした。
心の奥底に眠っていた黒い蛇のようなものが渦巻く。

何か悪い事が起きそうな、そんな予感がした。