5 / 11
一章【なんとか平和に暮らしたい】
【五話目 嵐の前の賑やかし】
しおりを挟む
【五話目 嵐の前の賑やかし】
ここは迷いの森と呼ばれる、道の入り組んだ森である。
この森には悪魔が住まう場所とも呼ばれている。
サテン・フォードリオンの孤児院がある街の、南へずっと行ったところにある。
「マッカーレン…許さぬぞ、マッカーレン家め」
「もうすぐ当主継承の日だ」
「今年の生贄は一人か?」
「いいえ、今年は居ないわよ」
「どういう事だ?コヒル・マッカーレンが当主を継ぎ、妹のエリシア・マッカーレンが生贄だろう」
「知らないの?コヒルは亡くなったのよ、不治の病でね」
「マッカーレン家はウンディーネのヒーラーを雇っていたはずだが。あの忌まわしき精霊に治せぬ病など有るのか」
「…さぁ、そこら辺は分からないわね」
「ならば今年の生贄は無しか」
「半端者のエリシア・マッカーレンが当主とはな。堕ちたものよ、マッカーレン家め」
「そういう事だから、エリシアは生贄にはなりえないって事よ」
「……成程。取り敢えず今日の会合を終わろう」
この世には様々な種族が居るが、その中でも災厄の種族は悪魔である。
街ごとに何人かの悪魔が隠れて暮らし、悪事を働いている。
週に一度の会合で、取り締まる街の
状況報告などを行っている。
魔物を操り、邪神を奉る悪の権化である。
+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
「ルイ、一緒に街へ行かない?サテン姉様と買い物に行くの」
それは、最近元気の無いエリシアからの誘いだった。
丘の下にある街は少し物騒だ。
元いた世界も誘拐やら強盗やらと連日事件が絶えなかったが、危険度が違う。
何せこの世界には魔法と言う概念があるのだ。
私も早く魔法を使ってみたいものだけど、知識が無いから当分は無理そうだ。
魔法学院なるものがあるが、孤児院の出が入れるほど良心的なものでは無いだろう。
まぁ、兎に角私は平和であればそれでいいのだ。
エリシアが元の元気な少女に戻らないと、平和と言えないと思うが。
一応、精神年齢的には私の方がお姉さんだしね。
「三人で街に出るのは初めてね。そう言えば、ルイは街に来るのは初めてだったかしら?」
サテン姉様は相変わらず、と言った感じだ。
でも、サテン姉様がエリシアの事に気付いてないとはどうしても考えずらい。
それに、エリシアの父親は領主なのだから噂くらい立つものだろう。
「うん。サテン姉様は最近よく街に出かけてるよね」
「サテン姉様は忙しいのよ。なんて言ったって、聖女のような人だもの」
「ふふ…エリシア言い過ぎよ。ほら、冒険者が集うギルドってあるでしょう?」
ギルド。
それは冒険者があらゆる依頼をこなす為の場だ。
酒場も隣接していて年中盛り上がっているらしい。
まぁ、前の世界ではファンタジーにありがちなものだったが。
「それがどうかしたの?」
「冒険者達が孤児を発見した場合、連絡が行くようにギルドに取り合って貰っているのよ」
どうやらサテン姉様は何処までも優しい人らしい。
丘下の街は思った以上に賑わっていた。
孤児院では想像出来ないような華やかさだ。
前の世界でもこんな所へは行ったことが無かった。
行けなかった、の間違いかもしれないが。
「さてと。食料も買えましたし、帰りますか?」
「そうねぇ…服屋に寄りたいのだけど、いいかしら」
「服屋に何しに行くの?」
「ふふ、内緒よ」
サテン姉様が子供のように無邪気に笑う所を初めて見た。
何やら企んでいるように見える。
そうして私達三人はサテン姉様御用達の店へと向かった。
ここは迷いの森と呼ばれる、道の入り組んだ森である。
この森には悪魔が住まう場所とも呼ばれている。
サテン・フォードリオンの孤児院がある街の、南へずっと行ったところにある。
「マッカーレン…許さぬぞ、マッカーレン家め」
「もうすぐ当主継承の日だ」
「今年の生贄は一人か?」
「いいえ、今年は居ないわよ」
「どういう事だ?コヒル・マッカーレンが当主を継ぎ、妹のエリシア・マッカーレンが生贄だろう」
「知らないの?コヒルは亡くなったのよ、不治の病でね」
「マッカーレン家はウンディーネのヒーラーを雇っていたはずだが。あの忌まわしき精霊に治せぬ病など有るのか」
「…さぁ、そこら辺は分からないわね」
「ならば今年の生贄は無しか」
「半端者のエリシア・マッカーレンが当主とはな。堕ちたものよ、マッカーレン家め」
「そういう事だから、エリシアは生贄にはなりえないって事よ」
「……成程。取り敢えず今日の会合を終わろう」
この世には様々な種族が居るが、その中でも災厄の種族は悪魔である。
街ごとに何人かの悪魔が隠れて暮らし、悪事を働いている。
週に一度の会合で、取り締まる街の
状況報告などを行っている。
魔物を操り、邪神を奉る悪の権化である。
+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+
「ルイ、一緒に街へ行かない?サテン姉様と買い物に行くの」
それは、最近元気の無いエリシアからの誘いだった。
丘の下にある街は少し物騒だ。
元いた世界も誘拐やら強盗やらと連日事件が絶えなかったが、危険度が違う。
何せこの世界には魔法と言う概念があるのだ。
私も早く魔法を使ってみたいものだけど、知識が無いから当分は無理そうだ。
魔法学院なるものがあるが、孤児院の出が入れるほど良心的なものでは無いだろう。
まぁ、兎に角私は平和であればそれでいいのだ。
エリシアが元の元気な少女に戻らないと、平和と言えないと思うが。
一応、精神年齢的には私の方がお姉さんだしね。
「三人で街に出るのは初めてね。そう言えば、ルイは街に来るのは初めてだったかしら?」
サテン姉様は相変わらず、と言った感じだ。
でも、サテン姉様がエリシアの事に気付いてないとはどうしても考えずらい。
それに、エリシアの父親は領主なのだから噂くらい立つものだろう。
「うん。サテン姉様は最近よく街に出かけてるよね」
「サテン姉様は忙しいのよ。なんて言ったって、聖女のような人だもの」
「ふふ…エリシア言い過ぎよ。ほら、冒険者が集うギルドってあるでしょう?」
ギルド。
それは冒険者があらゆる依頼をこなす為の場だ。
酒場も隣接していて年中盛り上がっているらしい。
まぁ、前の世界ではファンタジーにありがちなものだったが。
「それがどうかしたの?」
「冒険者達が孤児を発見した場合、連絡が行くようにギルドに取り合って貰っているのよ」
どうやらサテン姉様は何処までも優しい人らしい。
丘下の街は思った以上に賑わっていた。
孤児院では想像出来ないような華やかさだ。
前の世界でもこんな所へは行ったことが無かった。
行けなかった、の間違いかもしれないが。
「さてと。食料も買えましたし、帰りますか?」
「そうねぇ…服屋に寄りたいのだけど、いいかしら」
「服屋に何しに行くの?」
「ふふ、内緒よ」
サテン姉様が子供のように無邪気に笑う所を初めて見た。
何やら企んでいるように見える。
そうして私達三人はサテン姉様御用達の店へと向かった。
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる