異世界の孤児院でただ平和に暮らしたいだけだった。

汐桜

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一章【なんとか平和に暮らしたい】

【六話目 贈り物】

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【六話目  贈り物】


「いらっしゃいませぇ!あらぁ、サテンちゃん今日も素敵な白髪ね!その底の見えない紅い瞳も素敵だわぁ……」

ニック・エグザイアー。
『不思議兎の迷い国』と言う凡百系統の服を揃える服屋だ。

「エリシアちゃんは今日もサラサラな髪ねぇ、羨ましいわぁ。若さにかまけず手入れの行き届いた肌が素敵!食べちゃいたいわ」

エグザイアーと言えば誰もが変人と答えるそうだ。
何故なら一度話出せば止めるまで止まらないらしい。
どうやらこの話は誠だった。

「あら?この子は誰かしら。もしかしなくてもエルフの娘!?この長細い耳に溢れる魔力!そして何よりも美しい薄翠色の髪に金の瞳…あらあら興奮しちゃうわァ!」

一方の私は、眼前で飛び回る’’大柄の男性’’に驚きを隠すのに必死である。

「ニック」

「何かしら?」

「一寸静かに」

「…ハイ」

サテン姉様が呼び掛けるだけでこうも静かになるとは…
流石である。

+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+

「この娘は九年前にうちに来たエルフのルイ・エレメルよ。可愛らしいでしょう?」

「ええ、とても。目に入れても痛くないわね」

店の奥にある客室に案内された私達はニックと向かい合って紅茶を嗜んでいた。

「それで、今日は何の用かしら?」

「今日はエリシアの為に素敵なお洋服を買いに来たのよ」

「…え?」

サテン姉様がそう言った時、エリシアは驚いた表情をした。
急に何故エリシアの為に服を買いに来たのか、私にも検討は着く。

「エリシアはいつも頑張っているもの。最近は邸宅の仕事が忙しいのでしょう?若い娘にはお洒落な服を着なくちゃね」

サテン姉様はいつにも増して優しい笑みを浮かべた。
娘を可愛がるような、そんな目だ。

エリシアは未だアナにしか事情を話していないだろうし、サテン姉様は自力で知ったのだろう。

時々、サテン姉様の情報網が怖くなる。
例えば孤児院の裏庭で林檎を盗み食いしたとしよう。
サテン姉様は表で洗濯物を干していたとしても必ず気付く。
まるで、孤児院中に目があるみたいに。

まぁ、ファンタジーな世界初心者な私には考えるのは時間の無駄かもしれないが。

「あ……ありがとうございます!サテン姉様!」

今、エリシアの顔が少し強ばった気がした。
…気のせいかな?

「それで、ニックに一から仕立てて貰いたいのだけど」

「あらぁ、腕がなるわぁ。エリシアちゃん、コッチへいらっしゃーい!」

そうしてエリシアとニックが違う部屋へ行き、服を仕立てに行った。
エリシアはお人形さんの様に可愛いから、出来上がる服が楽しみだ。
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