異世界の孤児院でただ平和に暮らしたいだけだった。

汐桜

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一章【なんとか平和に暮らしたい】

【七話目 Questionstarsky】

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【七話目  Questionstarsky】


ニックとエリシアが服を仕立てている間、私はサテン姉様と店にある服を見ることになった。

「ルイは何か欲しいものとか無かったかしら。貴方もエリシアと同じで我儘一つ言わないから、心配になるのよ?」

「うーん…服は孤児院にあるものでも充分平気だよ」

孤児院にある服はお世辞にも可愛いとは言い難い。
服に金を掛けると孤児を養いきれないからだ。
どうやら一部の民からサテン姉様は非難されているらしい。
おおらかで聖母のようなサテン姉様が何故非難されているのか、齢九歳の私にはまだ分からない。
そのせいか、募金などをしても中々金が集まらない。

「この話はまだ皆にはしていないのだけど…近々この地域で良くないことが起こると予言されているの」

「良くないことって…?」

「ルイは悪魔の存在は知ってるかしら」

悪魔。
どの絵本や昔話を読んでも大体出てくる。
前の世界での狼や鬼の様な存在だ。

「詳しくは知らないけど…」

サテン姉様は店内の服を見ながら静かな顔で話し始めた。
いつの間にか、何時ものサテン姉様らしい微笑みは無くなっていた。

「悪魔は人の不幸を源に生きる、諸悪の根源。この世に蔓延る魔物も全て悪魔の仕業よ」

魔物はそこらに生息している人に害をなす生き物。
何もしなければ襲わない、動物と何ら変わらぬ種も居るらしい。

「それで、その悪魔がどうしたの?」

「悪魔は各地域に複数居るもの。悪魔を目撃した聖騎士が何人かいるとか。悪魔が目撃されるって事は不吉な事がある前兆なのよ」

「予言も相まって、良くない事が起きそうって事ね」

サテン姉様は何処か遠くを見るようにして窓の外を見た。
本当に悪い事が起こるのかって位賑わっていた。

「…ふふ。心配しなくても大丈夫よ」

そう言って私の頭を優しく撫でてくれた。
それにしても何故サテン姉様は皆にはまだ話していない事を私に話したのだろう。

何だか、最近気になる事が多い。
九年間生きてきてここ迄考えさせられたことがあっただろうか。

「…このワンピース、サテン姉様に合いそう」

考えることに疲れたので、話を逸らすことにした。
前の世界でもこうして嫌な事から話を逸らすのが得意だった。

「あら、素敵な色ね」

澄んだ昼の空色だった。
それなのに夜空に輝く様な星が散りばめられていた。
ニックは変なだけでなく、センスもちゃんと持ち合わせているようだ。

「ルイ。聞きたいことがあるのだけど…良いかしら」

「うん。なぁに」

「前世って…あると思う?」

その時のサテン姉様の瞳は血の色をしていた。
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