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ずっと前から好きでした
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「ごめん、私他に好きな人いるから……。」
「……それってもしかして元彼のこと?」
「……うん。」
「もう結構前なんでしょ?ナオと別れたの。」
" あなたには関係ないでしょ "
そう言い返したい気持ちをグッとこらえると、私は黙って小さく頷いた。
「そっか。まぁ……ナオは男の俺から見てもカッコいいもんな。」
隣のクラスだという名前も知らないこの人に声を掛けられたのはちょうど帰ろうとして教室から出た時だった。話があるからと連れて来られたのは屋上につながる階段の踊り場。屋上は普段から鍵がかけられているため出入りすることはできないので、当然出入口である階段周辺も無人──いわゆる校内の告白スポットの一つだった。
「ごめんなさい、ほんとに。だから今は誰とも付き合う事は考えられない。」
「うん、まぁ……そうだよね。分かった。帰ろうとしてるとこ引き止めちゃってごめんな。」
その人は分かったと言いながらもまだ何か言いたそうな雰囲気で、その場から一歩も動こうとしなかった。
こちらとしてはこの気まずい状況から一刻も早く離脱したいのにどうしたものかとジリジリしていると、階下からこちらへ向かって来る足音が聞こえてきた。やがてペタペタとわざとらしく足音を響かせて現れたのは、長めの前髪が目にかかったいつものダルそうなアイツの姿だった。
「終わった感じ?」
「幸人……」
「お、サイじゃん。どうしてお前こんなとこに……。」
サイトは階段の手摺によりかかりながら無言で私を睨むと、隣のクラスの男の子にもう一度尋ねた。
「俺の方が先に聞いてんの。お前用件済んだのかよ?」
「あぁ。済んだ……かな。うん。」
体格のいいサイトから見下ろすように問い詰められ焦ったその人は、顔を赤くしながら私の方に意味有りげな目配せをした。
それを見たサイトも確認するかのようにもう一度私の方を睨む。
「じゃ、私もういいかな?帰る……ね。」
ようやく逃げることができそうなこのタイミングを逃す手はなかった。慌てて私はサイトの隣をすり抜けると階段を駆け下りた。少しだけ遅れてサイトが追いかけてくる足音も聞こえる。
「ちょっと、何で私そんな睨まれないといけないのよ?」
「別に睨んでねぇし。目つき悪いのはもともと。」
「じゃあまた視力落ちたんじゃないの?ちゃんと眼鏡かけなよ。」
「お前に言われたくねぇよ。」
サイトと私が教室のある階まで下りると、そこには私の予想通り、もう一人のアイツが待っていた。
サイトの親友、直哉──私の元彼。
直哉は一瞬嬉しそうな顔をして下りて来た私たちを迎えると、サイトとハイタッチを交わした。
「サイお疲れ。んじゃ、帰りますか。」
「マユ荷物とかいーの?大丈夫?」
「いーよ、このまま帰れる。」
「そ。」
サイトが先を歩き、その後ろを直哉と私が並んで歩き始める。
私達3人の関係は高校2年で同じクラスになった時から何も変わっていない。下校時間になるとクラスの違う直哉が幸人を迎えに来て二人が私を自然と待ってくれる。今日みたいに私がイレギュラーな行動を取るとそれを探しに来るのは前は直哉の仕事だった。でも先月私と直哉が別れてからは、自然とその役割はサイトに代わってしまって、それでもこの奇妙な関係だけは相変らず続いていた。
隣を歩く直哉が楽しそうに笑っているのを見ると、今でも私は混乱する。本当に私は直哉と別れたんだっけ?別れたのに何でこうやって並んで歩いてるんだろう?
直哉は私の事を嫌いになったわけじゃない気がしていた。私は今でもこんなに直哉の事を好きなのに、どうして別れないといけなかったのか今でも不思議でならない。
後何回こうやって3人で並んで帰れるんだろう……。そんな事を考えながらボーっと歩いていると、直哉の穏やかな声が聞こえた。
「さっきのあいつ、告られた?」
「……うん。」
サイトが振り返りながら直哉に向けて渋い顔をした。
「マユの事好きな奴って割と本気勢だからメンドイよな。」
「どういう事よ?それ。」
「ほら、教室の影からとかじっと見つめてる感じの真面目なタイプ?」
「それほぼストーカーじゃん。」
「いやまぁ実際そうなんだけどさ。ちょっとだけ付き合ってやっぱごめんって感じじゃないじゃん?重いわ。」
私は直哉の方を意識しながらサイトに言い返した。
「じゃ逆に聞くけどどういうかんじならちょっとだけ付き合ってやっぱごめんになるの?」
「んー。例えば……俺とマユみたいな?」
「バーカ、マユがサイと付き合う訳ねーよ。」
「だから例えばだって。俺一緒にいてそこそこ楽しい男だし、振られてもノーダメージっぽく見えるでしょ?」
「何アピールよ、それ。」
「で?マユは断ったんでしょ?」
サイトのことは無視して話を元に戻した直哉は、相変わらずの真っ直ぐな瞳で私に問いかけて来る。
「そうだけど……。直哉には関係ない。」
思わず目を逸らすと私は小さな声で抵抗を試みた。直哉は笑いながら確かにと呟いて前を向いた。並んで歩いているのに二人の間には微妙な距離が開いているのがどうしようもなく切なかった。
「関係ないなんて言い方酷いわ、マユ。私達の仲じゃないの!」
「サイトはどうせ野次馬根性丸出しで盗み聞きでもしてたんじゃないの?」
「ひでー。王子様がお迎えに行ってやったのに。」
「王子様はあんな風に睨みません!」
「はーい、王子様ノド乾きました。ナオ俺コーラ。」
「は?俺今日小銭しか持ってねーし。」
文句を言いながらも直哉はポケットに手を突っ込むとどうにか2枚の硬貨を探り出し、サイトに手渡した。
「……それってもしかして元彼のこと?」
「……うん。」
「もう結構前なんでしょ?ナオと別れたの。」
" あなたには関係ないでしょ "
そう言い返したい気持ちをグッとこらえると、私は黙って小さく頷いた。
「そっか。まぁ……ナオは男の俺から見てもカッコいいもんな。」
隣のクラスだという名前も知らないこの人に声を掛けられたのはちょうど帰ろうとして教室から出た時だった。話があるからと連れて来られたのは屋上につながる階段の踊り場。屋上は普段から鍵がかけられているため出入りすることはできないので、当然出入口である階段周辺も無人──いわゆる校内の告白スポットの一つだった。
「ごめんなさい、ほんとに。だから今は誰とも付き合う事は考えられない。」
「うん、まぁ……そうだよね。分かった。帰ろうとしてるとこ引き止めちゃってごめんな。」
その人は分かったと言いながらもまだ何か言いたそうな雰囲気で、その場から一歩も動こうとしなかった。
こちらとしてはこの気まずい状況から一刻も早く離脱したいのにどうしたものかとジリジリしていると、階下からこちらへ向かって来る足音が聞こえてきた。やがてペタペタとわざとらしく足音を響かせて現れたのは、長めの前髪が目にかかったいつものダルそうなアイツの姿だった。
「終わった感じ?」
「幸人……」
「お、サイじゃん。どうしてお前こんなとこに……。」
サイトは階段の手摺によりかかりながら無言で私を睨むと、隣のクラスの男の子にもう一度尋ねた。
「俺の方が先に聞いてんの。お前用件済んだのかよ?」
「あぁ。済んだ……かな。うん。」
体格のいいサイトから見下ろすように問い詰められ焦ったその人は、顔を赤くしながら私の方に意味有りげな目配せをした。
それを見たサイトも確認するかのようにもう一度私の方を睨む。
「じゃ、私もういいかな?帰る……ね。」
ようやく逃げることができそうなこのタイミングを逃す手はなかった。慌てて私はサイトの隣をすり抜けると階段を駆け下りた。少しだけ遅れてサイトが追いかけてくる足音も聞こえる。
「ちょっと、何で私そんな睨まれないといけないのよ?」
「別に睨んでねぇし。目つき悪いのはもともと。」
「じゃあまた視力落ちたんじゃないの?ちゃんと眼鏡かけなよ。」
「お前に言われたくねぇよ。」
サイトと私が教室のある階まで下りると、そこには私の予想通り、もう一人のアイツが待っていた。
サイトの親友、直哉──私の元彼。
直哉は一瞬嬉しそうな顔をして下りて来た私たちを迎えると、サイトとハイタッチを交わした。
「サイお疲れ。んじゃ、帰りますか。」
「マユ荷物とかいーの?大丈夫?」
「いーよ、このまま帰れる。」
「そ。」
サイトが先を歩き、その後ろを直哉と私が並んで歩き始める。
私達3人の関係は高校2年で同じクラスになった時から何も変わっていない。下校時間になるとクラスの違う直哉が幸人を迎えに来て二人が私を自然と待ってくれる。今日みたいに私がイレギュラーな行動を取るとそれを探しに来るのは前は直哉の仕事だった。でも先月私と直哉が別れてからは、自然とその役割はサイトに代わってしまって、それでもこの奇妙な関係だけは相変らず続いていた。
隣を歩く直哉が楽しそうに笑っているのを見ると、今でも私は混乱する。本当に私は直哉と別れたんだっけ?別れたのに何でこうやって並んで歩いてるんだろう?
直哉は私の事を嫌いになったわけじゃない気がしていた。私は今でもこんなに直哉の事を好きなのに、どうして別れないといけなかったのか今でも不思議でならない。
後何回こうやって3人で並んで帰れるんだろう……。そんな事を考えながらボーっと歩いていると、直哉の穏やかな声が聞こえた。
「さっきのあいつ、告られた?」
「……うん。」
サイトが振り返りながら直哉に向けて渋い顔をした。
「マユの事好きな奴って割と本気勢だからメンドイよな。」
「どういう事よ?それ。」
「ほら、教室の影からとかじっと見つめてる感じの真面目なタイプ?」
「それほぼストーカーじゃん。」
「いやまぁ実際そうなんだけどさ。ちょっとだけ付き合ってやっぱごめんって感じじゃないじゃん?重いわ。」
私は直哉の方を意識しながらサイトに言い返した。
「じゃ逆に聞くけどどういうかんじならちょっとだけ付き合ってやっぱごめんになるの?」
「んー。例えば……俺とマユみたいな?」
「バーカ、マユがサイと付き合う訳ねーよ。」
「だから例えばだって。俺一緒にいてそこそこ楽しい男だし、振られてもノーダメージっぽく見えるでしょ?」
「何アピールよ、それ。」
「で?マユは断ったんでしょ?」
サイトのことは無視して話を元に戻した直哉は、相変わらずの真っ直ぐな瞳で私に問いかけて来る。
「そうだけど……。直哉には関係ない。」
思わず目を逸らすと私は小さな声で抵抗を試みた。直哉は笑いながら確かにと呟いて前を向いた。並んで歩いているのに二人の間には微妙な距離が開いているのがどうしようもなく切なかった。
「関係ないなんて言い方酷いわ、マユ。私達の仲じゃないの!」
「サイトはどうせ野次馬根性丸出しで盗み聞きでもしてたんじゃないの?」
「ひでー。王子様がお迎えに行ってやったのに。」
「王子様はあんな風に睨みません!」
「はーい、王子様ノド乾きました。ナオ俺コーラ。」
「は?俺今日小銭しか持ってねーし。」
文句を言いながらも直哉はポケットに手を突っ込むとどうにか2枚の硬貨を探り出し、サイトに手渡した。
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